●今月のビジネスセレブ
ハーマンインターナショナル 代表取締役社長
トム・メッツガー[Tom Metzger]Profile
1960年、アメリカ・デトロイト生まれ。1985年 ハーマンベッカー・オートモーティブシステムズ(現ハーマンインターナショナル)入社、オートモーティブ部門にてアジア地域を担当。2009年、車載通信機器ソフトウェア企業のGMに就任。2013年ハーマンインターナショナルに復帰し、翌年バイスプレジデントに就任。2017年6月より現職。
パネライ
ルミノール サブマーシブル チタニオ
●愛用歴/約7年
●購入場所/デトロイトの時計店
●使用頻度/週に3~4回
現在、中古市場でも出回ることは稀な幻のモデル。イタリアの粋とスイスの技術力が高次元で融合した、唯一無二の存在感を放つ。
「この時計の全部を気に入っていますが、一つだけポイントを挙げなければいけないとするなら、ケースとブレスレットの、チタンという素材でしょうか。軽くてタフという実用性だけでなく、チタンならではの色みが洒脱で非常に個性的です」
TAG HEUER[タグ・ホイヤー]
モナコ(右)
1969年、世界初の角形防水ケースとして誕生したクロノグラフの名品・モナコ。これは1998年に世界限定5000本のみ発売された、オリジナルの復刻版。12時位置のロゴも「HEUER」で、クラシック復刻モデルの中でも希少性が高い、ファン垂涎のモデルだ。シックなブラックダイヤルが、SSの角形ケースのシャープな表情を増幅させ、スーツにも合うエレガンスを秘める。
PANERAI[パネライ]
ルミノール サブマーシブル(中)
イタリア海軍が特殊潜水任務に携行した本格ダイバーズウォッチを出自とする〈パネライ〉の旗艦コレクションのひとつ。このチタンケースのモデルは世界限定600本で、しかもこれはシリアルナンバー「001」というとんでもないレアピース! 現行モデルのほとんどがバーインデックスを採用している12時・6時位置がアラビア数字というのもファンの心をくすぐる。
IWC[アイ・ダブリュー・シー]
マーク15 スピットファイア(左)
〈IWC〉のパイロット ウォッチコレクションを代表するスピットファイア。その名のとおり、イギリスのレジェンダリーな戦闘機がルーツの、絶妙なミリタリーテイストが男心をくすぐる。様々なモデルを擁するコレクションの中でも、三針+カレンダーのシンプルなこのオートマティックモデルは、シルバーダイヤルに立体的なインデックスがさりげない高級感を演出する。
これら3本のほかにも、複数本の〈タグ・ホイヤー〉と〈IWC〉を所有するトム。自他ともに認める機械式時計好きだが、彼と時計との物語は幼い頃に観に行った映画からはじまった。
「あれは私が8歳のときだったと思います。生まれてはじめて映画館に行って観たのが『グラン・プリ』という、F1グランプリを舞台にしたカーアクション映画だったのですが、登場人物が、当時の〈ホイヤー〉の時計をつけていて、子供心に“かっこいいなあ”と憧れました」
長じて、ハーマンベッカー・オートモーティブシステムズ(現ハーマンインターナショナル)に入社したトム。同社は90年代半ばからインターナショナルのカーレースのスポンサーとなり、彼もレーストラックによく足を運ぶように。
「そこで、レーサーをはじめ関係者の多くが素敵な機械式時計をしているのを見るにつれ、子供の頃に抱いていた憧れが蘇りました。また、オフィシャルタイムキーパーだった〈タグ・ホイヤー〉の方々に出会って、そこからどんどんハマっていった、という感じです」
モナコの限定モデルを皮切りに、カレラなどの〈タグ・ホイヤー〉を購入。その後は、大の〈IWC〉ファンだったという当時の上司に影響され、このマーク15 スピットファイアなどの〈IWC〉をコレクションに加えた。
「だけど、気がつくとまわりには、同じように上司に影響を受けた同僚たちの多くが〈IWC〉をしていて(笑)」
人とは違うなにかが欲しいと思ったときに出合ったのが、現在でも最も気に入っているという〈パネライ〉のルミノール サブマーシブルだった。
「これは世界限定600本のモデルの、しかもシリアルナンバー001なんです」
〈タグ・ホイヤー〉のモナコといい、トムはリミテッドモデルに弱い?
「それは確かにあるかもしれませんが、とにかくこの〈パネライ〉は、チタンという素材に惹かれました」
とはいえ、これは実は、トムより時計が好きという彼の実兄から譲り受けたものだそう。
「私たち兄弟が懇意にしている、故郷・デトロイトのヴィンテージウォッチブティックで、先に兄が購入して、それを無理言って買わせてもらったんです。当時は弟にほだされて売ってくれたけれど後悔しているみたいで(笑)。折に触れ“返せ”と言われますが、もちろん返すつもりはありませんね」
デトロイトに、そんなレアピースを扱うヴィンテージウォッチブティックがあるというのは少々意外な気もするが、そこはアメリカの自動車産業の中心地。
「大きい自動車会社のそれなりの役職に就いている人たちが多く暮らしています。彼らはお金があるから(笑)、こういう時計を買っては、また次! というふうに繰り返しているので、いい状態のユーズドがよく入ってくるんですよ」
トムが所有している時計コレクションの多くはそのブティックで出合ったものだそうだが、毎朝、それらの中から、その日どの時計をつけるか選ぶのはとても幸せな時間だと微笑む。
「〈タグ・ホイヤー〉〈IWC〉〈パネライ〉、それぞれ身につけるとき、感じるものは全然違う。〈タグ・ホイヤー〉ならレース場へと気持ちを誘ってくれるし、〈IWC〉だったら飛行機を操縦するパイロットのような高揚感だったり。そういうところが、いわゆるラグジュアリーブランドの機械式時計に惹かれる理由のひとつだと思います」
そういった意味でも、トムがこの〈パネライ〉を最も愛し、その理由が「チタン」という素材だと力説することも腑に落ちた。
「そう、このチタンケース。軽くて丈夫で傷つかない、チタンという素材が本当に好きみたいで(笑)、この時計に合わせて、新しくチタンのリングも作りました。もちろんゴールドの結婚指輪はあるのですが(笑)。考えてみますと、弊社が取り扱っている〈JBL〉のスピーカー、なかでも高級ラインの部品としてチタンがよく使われているんですね。スピーカーというのは、常に振動しているものなのですが、それでも摩耗せず品質を保ち続けるタフな金属、それがチタン。そんなふうに自分の中で、価値があるものは繋がっているんだと思います」
人生の中でこんなに長く、深く付き合えるアイテムって、そうは出合えない――慈しむように〈パネライ 〉に視線を落とすトム・メッツガー。
「慌ただしく過ぎていく時間の中、これらの時計が刻む“時間”というものに思いを馳せることも重要で、私は世界がどんなふうに変わっていったとしても、機械式時計を愛し続けていくと思います」
〈JBL〉ワイヤレスイヤフォンが人気!世界中の自動車メーカー、消費者、企業に向けたコネクテッド・カーシステム、音響映像製品、エンタープライズ自動化ソリューション、およびコネクテッド・サービスの設計、製造を行うハーマン社。世界最大級のオーディオブランド〈JBL〉も手掛け、日本におけるワイヤレススピーカー販売台数No.1に3年連続で輝く。2020年11月に発表した、ハイブリッド式のノイズキャンセリング機能を備える、完全ワイヤレスイヤフォン・CLUB PRO+TWSが大きな話題を呼んでいる。
雑誌『Safari』3月号 P166~168掲載
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photo : Tomoo Syoju(BOIL) text : Kayo Okamura