●今月のビジネスセレブ
ロクシタンジャポン、メルヴィータジャポンCEO
二コラ・ガイガー[Nicolas Geiger]
Profile
2004年、イギリスのオックスフォード大学を卒業後、教師、セールスディレクターなどを経て、インシアードでMBAを取得。2011年、ロクシタンブラジルに入社し、ゼネラルマネージャーを6年間務めた。2015年、ロクシタンジャポンの副社長に就任。2017年、5月より現職に就く。ロクシタングループのオーナー、レイノルド・ガイガー氏の次男だ。
アイ・ダブリュー・シー
ポルトギーゼ・クロノグラフ
●愛用歴/約10年
●購入場所/妻からのプレゼント
●使用頻度/週に2~3回
真円のケースに縦の2つ目インダイヤルが比類ないエレガンスを構築するクロノグラフの名品。視認性の高さも大きな魅力だ。
「この文字盤の美しいブルー、そしてやはりクロノグラフです。クロノグラフは複雑機構の中でも親しみやすい機構ですが、見た目にもデザインとして個性を演出してくれるし、マスキュランなエレガンスを表現する重要なディテールだと思います」
IWC[アイ・ダブリュー・シー]
ポルトギーゼ・クロノグラフ
ポルトガルの時計商人からの「航海に耐えうる、マリンクロノメーター級の精度を約束する腕時計を」という依頼に応え、1939年に誕生した〈IWC〉のフラッグシップコレクション・ポルトギーゼ。シンプルなモデルからハイコンプリケーションまで、多くのバリエーションを擁する一大コレクションの中でも、最も高い支持率を得続けているのが、このポルトギーゼ・クロノグラフだ。
主にナチュラルコスメをグローバルに展開するグループ、〈ロクシタン〉CEOの次男であり、現在は〈ロクシタン〉と〈メルヴィータ〉の2つのブランドの日本社長を務めているのが、今回紹介するニコラ・ガイガー。彼が愛用するのは、スイスのなかでもドイツ寄り、ライン川の上流に位置するシャフハウゼンに本社を構える〈IWC〉。その名作と呼ばれるポルトギーゼだ。
「これは10年前に結婚する際の記念として、妻が贈ってくれたものです」
時計好きなら、〈IWC〉というブランドを選んだニコラの妻の、卓越したセンスに一目置くだろう。
「妻と出会ったのはロンドンに住んでいた頃でしたが、実は彼女は当時、イギリスの〈IWC〉のマーケティングマネージャーをしていたんです。彼女はラグジュアリーウォッチブランドの世界で長いキャリアを積んでいたので、時計に関して詳しく、同時に時計をとても愛していました。このポルトギーゼというモデルは、“さあ、これから冒険がはじまるぞ!”という物語を秘めた時計。結婚というのは、ひとつの大きなアドベンチャー。私たちも人生という大海原への冒険がはじまる! ということで、彼女はこの時計を選んでくれたのだと思います」
ニコラが後に彼の妻となる女性と出会ったのは2006年。当時〈IWC〉は2002年にCEOに就任したカリスマ経営者、ジョージ・カーンの手腕によって、それまでの保守的だったブランドの改革に成功。ラグジュアリーブランドへの転換を果たし、特にヨーロッパでは高い人気を得はじめた頃だ。
「この時計をプレゼントしてくれるなんて、全く予期していなかったこと。なので本当に驚きました」
〈IWC〉のなかでも、ポルトギーゼ・クロノグラフ。しかもこの濃い美しいブルーの文字盤というセレクトは、もちろんニコラのリクエストではなく、彼女が考えた、自分の夫となる彼に最も似合う時計ということだったのだろう。
そしてニコラは、〈IWC〉の“ポルトギーゼ・クロノグラフ”という腕時計に、ひと目で恋に落ちた。
「なんて素晴らしい時計なんだろう! と感激しました。そしてこの時計は私にとってかけ替えのない、唯一無二の存在になると確信しました。これは私たちの出会いを、そのときの気持ちやときめきを一生忘れさせないでくれる特別な時計になるだろうと。確信したんです」
かつて〈IWC〉を率いたジョージ・カーンは、〈IWC〉のリブランディングに成功を果たした際、あるインタビューで、「ラグジュアリー製品が求められるのは必要不可欠だからではなく、夢を生み出すから」と語っていたが、このポルトギーゼ・クロノグラフはニコラにとって、まさにそれを体現する宝物となった。
「私たちはロンドンで出会い、結ばれ、そこからジュネーブ、サンパウロ、そして東京へと冒険を続けてきました。その間にサンパウロでふたりの娘、東京でもまた娘をひとり授かりました」
もちろんその航海やアドベンチャーの間には、大きな嵐に遭ったことも多々あっただろう。しかしどんな嵐も乗り越え、家族で絆を築いてきた。
「この時計は、夫婦ふたりで紡ぐ冒険物語のアイコンです。また、私自身も家族も、そして〈ロクシタン〉というブランドとしても、船が大好きで、〈ロクシタン〉は無寄港で世界一周航海するレースのスポンサーでもあります。そんなことからも、航海時計というルーツを持っている〈IWC〉のポルトギーゼには、思いが深くなるのかもしれませんね」
また、ニコラにとってはこれが、はじめて手にした本格機械式時計でもある。
「実は18歳のときに、〈エルメス〉の時計をプレゼントされました。現在では〈エルメス〉も機械式時計に力を入れているようですが、当時私がプレゼントで頂いたのはクォーツ。言ってみればファッションアイテムですよね。なのでこの機械式のポルトギーゼが、本当の意味での最初の時計になります」
このポルトギーゼだけで充分満ち足りているから、特にすぐに他の時計を所望しているわけではないというニコラだが、強いて言うなら次に欲しいと思う時計に〈ロレックス〉を挙げた。
「信頼できるブランドですから。しかし私が欲しいのはʼ40〜ʼ50年代のヴィンテージなんです。現在の商品より、当時のもののほうに惹かれるんです」
結婚10周年となる今年、ニコラは妻に〈カルティエ〉の時計を贈った。そしてなんと現在は秋に控えた第四子の誕生を心待ちにしているという。
「想像していたより、ビッグ・ファミリー、大航海になりました(笑)」
日本市場で成長続ける南仏発の人気ブランド
南仏プロヴァンス産の植物原料やエッセンシャルオイルをベースに、植物療法やアロマテラピーの考え方を取り入れたコスメティックブランド、〈ロクシタン〉。そのロクシタングループの傘下で、2011年にスタートしたのが、フランスNo. 1オーガニックコスメブランド〈メルヴィータ〉だ。人と自然の共生から未来を考えるコンセプトにしていて、サスティナブルを重視した活動を尊重している。両ブランドとも、フランス、日本だけでなく、世界的に高い人気を誇っていて成長を続けている。
雑誌『Safari』11月号 P234~235掲載
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photo : Tomoo Syoju text : Kayo Okamura