●今月のビジネスセレブ
レリクシール CEO
アントニー・ドゥヴィッレ[Anthony Deville]
Profile
フランスのシャンパーニュ・アルデンヌ地方のランスで、ブドウの栽培とシャンパーニュの醸造に携わる名家に生まれる。その後来日し、様々なレストランを経て、シャンパンへの情熱と過去の経験を生かすべく、ペルノ・リカール・ジャパンに入社。シャンパンメンタリングディレクターとして活躍する。2015年、自らの会社を立ち上げ現在に至る。
カルティエ
パンテール ドゥ カルティエ MM
●愛用歴/約14年
●購入場所/フランス・カンヌ
●購入時の金額/約€ 21,600
ローマ数字インデックスとレイルウェイミニッツトラックの組み合わせが、永遠に褪せることのないエレガンスを体現する。
「とにかくエレガント! 大きさもほどよく、薄く、ブレスレットもとてもしなやか。ゴールドなのである程度の重さはあるのですが、まるで時計をつけていることを忘れさせてくれるような、極上の装着感です」
CARTIER[カルティエ]
パンテール ドゥ カルティエ MM
1980年代に登場したパンテール ドゥ カルティエ ウォッチ。フランス語で“豹”を意味するその名前のとおり、シンプルでいながら官能的なフォルムが人々を魅了し、メゾンを代表するアイコンのひとつに。’80年代の華やかなムードとともに鮮烈な印象を残した名品が、2017年、現在のコレクションとして蘇った。彼が愛用しているのは、一度廃番となった先代モデル。
2015年に設立したシャンパン、ワインのコンサルタント会社〈レリクシール〉のCEOを務めるドゥヴィッレ。現在、シャンパン1社、ワイン3社のトータル4社のメゾンと直接契約を交わし、イベント企画をメインに、マーケティングやセールスなども行っている。
「私はフランスのシャンパーニュ・アルデンヌ地方のランスで、祖父の代からシャンパーニュ用ブドウの栽培とシャンパーニュの醸造に携わる家に生まれました。幼い頃から、いつか日本で暮らすことが夢で、その夢を叶えるためにサービスの道を志したんです。そしてイギリスやイタリアで経験を積んだ後、1997年にはじめての来日を果たしました」
そんなドゥヴィッレが手にしたはじめての腕時計は、〈カルティエ〉の名作モデル、サントスだったという。
「私の選択肢には、やはり〈カルティエ〉しかありませんでした」
なんとも生粋のフランス人であるドゥヴィッレらしいチョイスだ。
「フランスでは、時計もバッグも靴も、ラグジュアリーなものはふさわしい年齢になるまで手にすることはありません。なので日本に来て、若い人たちがブランド物を身につけているのを見て驚きました(笑)。私もイギリスやイタリアでそれなりにキャリアを積んで、そろそろ〈カルティエ〉の時計が似合う年齢になったかなと思ったのがそのタイミングで、来日して間もない頃に手に入れたということもあり、とても思い入れがあります」
そして2本めとなったのが、このイエローゴールドのパンテールだ。
「本当にこのパンテールが好きです。これは2006年に結婚する際、妻にはミニを、私にはMMと、サイズ違いで交換しました。ちょうどこのモデルが一度廃番になる前だったんですよ。私は薄くてエレガントな腕時計が好きで、〈カルティエ〉も好きだから全く異存はなかったのですが、最終的にこのパンテールに決めたのは妻です(笑)。でも、私たち夫婦は趣味がとても似ているのでなにも問題はありませんでした」
ドゥヴィッレのビジネスも時計道も、まさに公私ともにパートナーの存在が大きな影響を及ぼしている。
「〈パテック フィリップ〉〈ロレックス〉――確かに世界にはラグジュアリーな時計はいろいろありますが、実は私はそれらには全く興味がなくて」
インタビューを見守るパートナーも、微笑みながら深くうなずく。
「最初のサントスと同様、〈カルティエ〉しかないと考えていました」
それは理屈ではなく、もっと本能的な、ドゥヴィッレ夫妻の感性を震わせるなにかを潜ませているのが、唯一〈カルティエ〉というメゾンだから、だろう。
「そもそも私は時計自体が好きというわけではないんですよね。ムーブメントやメカにも興味がなく、ましてやトゥールビヨンといった複雑機構にも全く気持ちが動きません(笑)。多くの男性にとってもそうかと思いますが、私にとって時計というのは道具であり、唯一身につけられるジュエリーなんですね。イベントなどを手掛けるという仕事柄、常に正確な時刻を知ることは必要。そして、私はどうもブレスレットなどをジャラジャラつけるのは好きになれないので(笑)。時計だけが唯一のアクセサリーであり、ファッションの一部なんです」
普段使いはサントス、特別なシーンではパンテールと、2本の〈カルティエ〉を使い分けているドゥヴィッレ。
「やはり普段使いにするには、ゴールドの時計は少し華美すぎるかなと思うので。でも、特別なシーンだからといってこれみよがしなつけ方はせず、あくまでもさりげなく。この美しいゴールドの輝きは、誰かに誇示するためのものではなく。自分のためのものですから」
インタビュー当日のコーディネートは、深紅のジャケットにネイビーのパンツとチーフを合わせたトリコロールに、ゴールドのパンテールを効かせて。
「本当は夏らしくホワイトのコーディネートを考えていましたが、今日は奇しくもフランスの革命記念日なので、妻のアドバイスでこの着こなしにしました(笑)。秋冬は黒のスーツや黒のシャツが好きなのですが、そういうコーディネートにもこの時計はなかなかよろしいです」
自動巻きや手巻きの機械式ムーブメントに比べて、比較的手入れがラクそうなイメージがあるクォーツ式の時計だが、ドゥヴィッレはバッテリー交換だけでなく、きちんと定期的にオーバーホールを行い、大事に手入れをしながら、この腕時計とともに人生を歩んでいる。
「本当に、サントスとパンテールで満ち足りているので、自分の人生で、ほかの時計は必要ないと思っています(笑)」
飲食業界で注目を集めるイベントコンサル会社2015年、アントニー・ドゥヴィッレと公私ともにパートナーであるドゥヴィッレ麻由良によって創業。主にレストランやホテル向けに、新規顧客の開拓や、提携メーカーの商品PR、販売促進を目的としたイベントをトータルプロデュースするなどのコンサル業務や、サービススタッフトレーニングなどの研修業務を展開している。特に情熱を注ぐ、シャンパンやワインをテーマにしたイベントやセミナーには定評があり、ラグジュアリーな飲食業界内で高い信頼を集めている。
雑誌『Safari』10月号 P188~189掲載
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photo : Tomoo Syoju text : Kayo Okamura