【近江克仁】さらなる高みが見えたアメリカ選抜との対戦!
プロ選手としてIBMビッグブルーに所属し、日本人初のNFL選手を目指す近江克仁。自分なら前例のない、ある目標を達成できると強く確信した、TSL選抜チームとの一戦について語ってくれた。
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- アスリートの分岐点! vol.33
YOSHIHITO OMI
TURNING POINT
2020年3月1日
vs TSL選抜
(アメリカ選抜)
自身への揺るぎなき自信!
日本人初のNFL選手を目指すという目標を公言し、国内Xリーグでの闘志あふれるプレイや欧州リーグでの挑戦。そして、海外トレーニングを通してチャンスを掴み、道なき道を切り開こうとしている近江克仁。大手損保会社に勤務しながらXリーグのIBMビッグブルーでプレイしてきたが、安定した未来が約束されていたその損保会社を2020年に退職。退路を断った状態で目標に向かって突き進んでいる。
そんな近江がアメフト選手としての分岐点として語ってくれたのは、まさにその退路を断った年に日本代表としてアメリカのTSL選抜チームと対戦した国際試合。テキサス州フリスコ市でNFLやカナダのプロリーグCFL入りを狙う下部リーグの選手が集まったチームとの一戦で、近江は45人の代表チームを束ねる主将として戦うことになった。試合は16-36で惜しくも敗れる結果となったが、近江は自分自身のプレイに手応えを掴んだ。
「タッチダウンレシーブを決めたこともそうですが、日本代表チームの中で自分が一番活躍していました。アメリカ人相手にも全然、戦えるやん。ここからもっと成長したら、上のリーグに間違いなくいけるんじゃないか。そう思えるようになったきっかけの試合だったんです」
5年ぶりに結成された日本代表チームのキャプテンとして、近江は自らのプレイでチームを引っ張った。象徴的なのは、やはりタッチダウンレシーブを決めた場面。3-27で迎えた第3クォーター8分すぎのこと。QB(クォーターバック)の高木 翼からのパスを繋いで敵陣22ヤードへ攻め込んでからのプレイだった。
「こういった局面では、オフェンスの司令塔になるQBとのコミュニケーションが一番大事になります。意思疎通ができていればパスが通るし、できなければ通らない。このときのことは今でも鮮明に覚えていて、敵陣にタッチダウンするまではあと20ヤード。当初のプレイコールでは右側へ浅く切り込むショートパスという選択だったのですが、QBの高木と目が合ったときに浅く切り込む動きで終わるのではなく、そこから斜め45度に走るダブルムーブで一気にタッチダウンを狙おうというシグナルを送りました。どうしてもタッチダウンしたかったのと、相手ディフェンスのCB(コーナーバック)にはその試合の1対1で勝てていたので、現場判断でサインを出しました。5秒くらいの出来事だったと思います。普通、サインはコーチが出すことが多く、WR(ワイドレシーバー)から出すなんてことはほぼないんですけどね(笑)」
その結果、狙いどおりに1対1で相手ディフェンスをかわした近江はフリーとなり、エンドゾーン内で高木の浮かせたパスをキャッチ。これが日本代表チーム初のタッチダウンとなった。これ以外でも近江は、パスを受けてからのランで大きくゲインするなどの活躍を見せた。この試合でのプレイが評価されたこともあり、近江はカナダのプロリーグCFLの関心を引き、グローバルドラフト候補に選出された。
カナダ人以外の外国人選手を対象にしたドラフトで指名される可能性がある選手として同時に選ばれた6名の選手とカナダに渡ったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりCFLがコンバインの中止を発表。帰国を余儀なくされた。その後、近江は同じ年の6月に欧州におけるアメフトのプロリーグ、EFLのライプツィヒ・キングスに加入。さらなるチャンスを求めて突き進んだ。
「欧州に行った理由は、やっぱりNFLに地理的に近いというメリットがあるから。アメリカのスカウトマンやコーチは日本には来ないけれど、欧州には行くんです。あと、NFLがフィジカルを重視していることは知っていたので、身長190㎝くらいの選手が当たり前な欧州で180㎝の自分が活躍している映像を見せられたら目にとまりやすいからというのもあります。欧州でプレイしたことで、IPPプログラム(NFLが北米以外の海外の選手に技術を磨く機会を与える育成システム)のNFLコンバインに選ばれるところまではいきました」
現在もXリーグのIBMビッグブルーでプロ契約選手として戦いながら、NFL行きへのチャンスを狙っている。
「XFL(NFLの下部リーグ)のヘッドコーチに自分で直接連絡をして練習に参加させてもらったりして、コネクションを増やしています。コロナに翻弄されましたが、NFLという目標は自分が決めたこと。そこはマインドをポジティブに切り替えて、やりきるしかないです」
アメリカンフットボール選手
近江克仁
YOSHIHITO OMI
1995年、大阪府生まれ。2年時に大学日本一となった立命館大学卒業後、大手損保会社に入社し、IBMビッグブルーに所属。2020年に日本代表主将を務める。2021年欧州ELFのライプツィヒ・キングスと契約。現在はIBMビッグブルーでプロ契約選手として活動しNFLを目指す。
TAMURA'S NEW WORK
イオンモール豊川バスケコート
「自分の作品としては、過去最大級のサイズ。このコートから、将来のプロ選手が出てきてくれたら嬉しいですね。あえて選手の顔を描いていないのは、所属選手が変わっても、子供たちがバスケを楽しむ場所として、いつまでも使っていける場所であってほしいから」
バスケを愛する子供たちの未来のために
バスケットボールコートの壁面に描かれた、躍動するバスケ選手たち。これは、bリーグの三遠ネオフェニックスと田村のコラボプロジェクト。4月にオープンしたイオンモール豊川に新設された3×3バスケコートに描かれたものだ。
「ともに地域を盛り上げ、子供たちに楽しさを伝えられるプロジェクトのひとつとして、描かせていただきました。バスケには競技だけでなく、グラフィティのようなアートも含めたカルチャーがあって成り立つスポーツという側面もあります。また、日本では競技人口が最も多いスポーツのひとつでありながら、プレイできる場所が非常に少ないのが現状です。子供たちがバスケを気軽にプレイでき、カルチャーとしても体験できる可能性がある場所に描かせていただき、本当に光栄です。このコートが皮切りになって、もっともっと安心して気軽にバスケができる場所が増えてほしい。そこが変わると、明るい未来が待っている気がします」
アーティスト
田村 大
DAI TAMURA
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは10万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。海外で圧倒的な知名度を誇る。Instagram:@dai.tamura
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illustration : Dai Tamura text : Takumi Endo photo by AFLO