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CULTURE カルチャー

2025.05.31


Vol.30 桑田真澄/最後の力を振り絞った挑戦【MLBの挑戦者たち〜メジャーリーグに挑んだ全日本人選手の足跡】

 

 

桑田真澄(くわた ますみ)/日米通算173勝142敗1992奪三振(1986〜2007年)

PL学園高校時代に清原和博との“KKコンビ”で話題を集め、甲子園通算20勝(戦後最多)を記録した桑田真澄。高校最後の夏の甲子園では、決勝(宇部商戦)で清原が2打席連続の本塁打を放ち、「甲子園は清原のためにあるのか!」という伝説的な実況が生まれた。試合は劇的なサヨナラ勝ち。完投した桑田が自身2度目の優勝投手となった。野球部引退後の桑田は、スポーツ推薦ではなく受験での早稲田大学進学を希望し、夜遅くまで勉強に励んでいたという。しかし読売ジャイアンツがドラフト1位で強行指名すると、そのまま入団。「裏取引があったのでは?」との憶測も流れたが、本人も球団も一切否定している。

読売ジャイアンツでは2年目から頭角を現し、15勝6敗、防御率2.17(最優秀防御率)という驚異的な成績を残して沢村賞の栄誉に輝いた。その後は先発の柱として長く活躍。在籍した21年間で173勝を積み上げている。2006年に巨人の退団が決まると、オフにはメジャーリーグへの挑戦を表明。すでに38歳となっており、ここ数年の成績は目立って下降していた。しかも桑田は1995年に右肘側副靱帯断裂の大怪我を負い、靱帯を移植するトミー・ジョン手術を受けている。諸々の条件を考えると、誰もが驚く決断といえた。
 
  

 

2007年3月、フロリダのマッケニーフィールドで行われたスプリングトレーニングで、ボストン・レッドソックスの松坂大輔と岡島秀樹と談笑

ピッツバーグ・パイレーツとマイナー契約を結んだ桑田は、翌’07年のスプリング・キャンプに招待選手として参加。必死にロースター入りを目指したが、開幕目前のオープン戦で球審と激しくぶつかり、右足首を捻挫する怪我を負ってしまう。普通ならそのまま解雇されてもおかしくない状況だったが、チームは桑田にリハビリと再起の猶予を与えた。
 

  

 

メジャーデビュー戦では3番手でマウンドに登場。2回を投げ1安打2四球2失点で、当時ヤンキースに所属していた松井秀喜とも対決。結果は四球だった

6月2日にようやく3Aで公式戦初登板を果たすと、そのままメジャーに昇格。6月10日のニューヨーク・ヤンキース戦でメジャー初登板を果たしている。39歳70日でのメジャーデビューは当時として日本人最高齢。メジャー全体でも歴代3位の記録だった(後に高橋建が40歳でデビューしており、ともに抜かれている)。以降も中継ぎでの登板が続いたが、明確な結果を残せないまま8月に戦力外通告を受けた。知らせを受けた桑田は、報道陣に向け「何も悔いはない」と清々しく語っている。

翌2008年1月、再びパイレーツとマイナー契約を結ぶ。オープン戦では好投したものの、若手を優先するチーム事情もあって構想から外れると、3月に自身のブログで現役引退を表明した。パイレーツの若手からは非常に慕われていたそうで、桑田に教えを請う選手たちの姿をよく見かけたという。

引退後の桑田は早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に入学し、なんと首席で修了している。修士論文では“『野球道』の再定義による日本野球界のさらなる発展策に関する研究”というものを発表し、最優秀論文賞を受賞した。現在、古巣・巨人の二軍監督を務めているのはご存知のとおりだ。彼の穏やかな性格と優しい語り口、そして論理的な思考は、まさに現代的な指導者向きといえるだろう。アメリカで過ごした最後の1年も、きっと大きな糧になっているはずだ。

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文=野中邦彦  text : Kunihiko Nonaka
photo by AFLO
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