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2019.05.13


〈赤坂 華悦樓〉の“フカヒレ姿煮込み”

人気レストランのシェフが、密かに通う店、お気に入りのメニューを教える新連載。第3回は代々木八幡〈クリスチアノ〉の佐藤幸二シェフ。予約至難のポルトガル料理や著名人も御用達のエッグタルト専門店など数々の人気店を仕掛けるスーパーシェフ、イチオシの一品とは。

毛鹿鮫尾びれの姿煮込み(6000円)
堂々たる厚みは上質さの証。心地よい食感と多層的な旨みが重なる。ディナー1万円のコースより(オーダーは2名から、写真は2名分)

ネギ油をしっかり熱して香りを立て、2種類のだしや醤油を加え、煮詰めて徐々に味を纏わせていく。調理はすべて服部シェフが行う


オススメしてくれたのはこの人!
〈クリスチアノ〉佐藤 幸二シェフ


ポルトガル料理をメジャーにした立役者

ポルトガル料理には欠かせない干し塩鱈をはじめ、発酵調味料や加工肉も自家製。現地に幾度も足を運んで覚えた味で、日本のポルトガル料理をアップデイトしてきた。自らも日々厨房に立ちながら、ポルトガル魚介料理店や惣菜店など、計5店舗を経営する敏腕。
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-51-10 プリティパインビル1階 
営業時間:18:00~24:00(23:00L.O)

休日:不定休
TEL: 03-5790-0909




佐藤シェフ
素材のよさ、味つけのセンスすべてに感動!

旗艦店となるポルトガル料理店〈クリスチアノ〉の人気は、オープンから8年たっても一向に衰えず、次々と世に送り出すのは、前例のないユニークな店ばかり。トップシェフとして第一線で活躍しながら、飲食業界の仕掛け人としても常に注目を集める。そんな佐藤シェフが、最近最も感動したと話すのが〈赤坂 華悦樓〉のフカヒレ料理。

「扱い次第で臭みが出やすい、やっかいな食材だと思うのですが、服部シェフが作る姿煮の味の清らかさは驚きの域。フカヒレそのものも特別なものであるのが伝わってきます。山椒が効いた冷菜も、食べたことがない味わい。技術の高さとセンスに脱帽です!」

誰もが喜ぶご馳走の代表ながら、これまで心から美味しいと思うフカヒレ料理には出合ってこなかったとか。食べ手としても相当の経験を持つ佐藤シェフをもってしても、大満足。「常時通う店」リストに即、追加されたとのことだ。


服部シェフ
フカヒレの奥深さに、魅了され続ける

開口一番、「姿“煮込み”と、ありますが、煮込む前に味の8~9割が決まる。大切なのは素材選び、そして下処理です」と、服部シェフ。フカヒレは、独立前からつき合いのある気仙沼の業者から吉切鮫、毛鹿鮫のものを厳選して仕入れるが、目に適うものが届かなければ「使えない」と、なることも。

「そのぶん、こちらも勉強が必要。種による性質の違いやゼラチン質の含有量まで、文献も当たって徹底的に。もう職業病という感じですが、どんどんフカヒレオタク化している気がします」と、笑う。

調理法自体は極めてシンプルだが、決め手となるのは2種のだし。とりわけ、6時間以上かけて取る濃厚な白湯が要。

「白湯のコクのある深い旨みと、フカヒレ自体から出るだしが絶妙に合わさり、上品で深い旨みが生まれるんです」

姿煮のほかにも、上湯のジュレを絡めた冷菜や、白湯ベースの煮込みそばなど、丁寧な仕事が光る逸品揃い!



Check1 丁寧な下処理

柔らかく蒸したフカヒレは、繊維1本1本の間の余分な脂肪分を丁寧に取り除く。1枚のフカヒレの中でも、部位の厚みに応じて蒸し時間を変えるなど、細かな仕事が味を作る


Check2 だしが決め手

フカヒレの姿煮込みの味を決めるのは、だしの旨さ。なかでもコラーゲンたっぷりの白湯が重要で、6時間、強火で火を入れ続けて抽出。味わいに凝縮感と、深いコクが生まれる


赤坂 華悦樓[あかさか かえつろう]

ピシッと張られたクロスに、テーブルセットもきちんと。高級感あり

フカヒレと鮑の冷菜

フカヒレと蟹肉入り土鍋そば(料理はともに夜1万円のコースより。オーダーは2名から) 

服部シェフ。静かなる情熱家

 
フカヒレ料理の名店〈筑紫樓 丸の内〉で9年働き、そのうち6年は料理長を務めた服部憲作シェフ。満を持して開いた自身の店は、中華の激戦区・赤坂に。主役はやはり得意のフカヒレで勝負することにした。上海料理の代表格にして、中華の世界でも比類なきご馳走である。良質な素材を手に入れることも、適切な下処理を施すのも、経験値がモノをいう世界。鮑を使ったフカヒレの冷菜からフカヒレスープ、姿煮込みなど全8品1万円のコースは、フカヒレを食べ慣れた客こそ、満足度と価格のギャップに舌を巻く内容だ。


 
Information

赤坂 華悦樓[あかさか かえつろう]
住所:東京都港区赤坂3-21-10 赤坂靑明会館 3階C号 
営業時間:11:30~14:30、18:00~22:00

休日:日曜、祝日
TEL:03-6435-5347

雑誌『Safari』6月号 P254・255掲載

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写真=大谷次郎 文=佐々木ケイ
photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki
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