『マトリックス』
世紀を跨いで世界を熱狂させたトリロジーから18年、ついに『マトリックス』が戻ってくる! 待望のシリーズ最新作『マトリックス レザレクションズ』は、現時点では謎に包まれていて、どんな話になるのか、はっきりとはわかっていない。いずれにしても、複雑さが面白いエッセンスでもあるので見直しておくにこしたことはない。というわけで、『マトリックス』シリーズをおさらい。本稿では、1999年に公開されるや一大センセーションを呼び起こした第1作『マトリックス』について振り返る。
主人公トーマス・アンダーソンはコンピューター・プログラマーで、インターネットの世界ではネオという名を使い、ハッカーとして暗躍。日常に満足しつつ煮え切らないものも抱えた、どこにでもいる若者だ。そんな彼が、奇妙な事件に巻きこまれたことで、モーフィアスやトリティらの黒づくめの戦士たちと出会い、世界の真実を知ってしまう。
現実だと思っていた1999年の世界は、実はバーチャルリアリティに過ぎない――真の現実は21世紀末で、人類がコンピューターに支配されており、多くの人間は睡眠状態で培養され、マトリックスと呼ばれる、このバーチャルの夢を見せられていたのだ!
注目すべきは、まずこの設定。なんとなく暮らしていけているし、なんとなく楽しいが、何かが足りない……主人公ネオが置かれている状況は、そんな現代の観客の心にフィットした。真実を知りたい、何が起きているのかを知りたい、そして自分が何者かを知りたい。
青いカプセルを呑めば、今までと同じ穏健な生活を送ることができ、赤いカプセルを選べば真実を知ることになる。かくしてネオはモーフィアスが差し出したこのカプセルから、赤を選び、21世紀末の“現実”に飛ぶのだ。
その現実の世界は闇に包まれており、コンピューターの目を逃れた人々はザイオンと呼ばれるコミュニティで息をひそめている。モーフィアスやトリニティはここでゲリラ軍を組織し、マトリックスに飛んでは、このシステムを守るエージェント・スミスらと死闘を演じていた。預言者から人類の救世主となる人物の存在を聞いたトリティは、ネオこそがそうであると信じている。マトリックスに飛び戦いに加わったネオは、やがて救世主として覚醒していく……。
映画はここからアクションの色合いをどんどん強めてクライマックスへと向かっていくが、そのビジュアルは、まさに強烈。マトリックス世界では、それが仮想現実であるという現実に気づきさえすれば、どんな動きも可能だ。銃弾を避けることさえも。
そんな高速アクションの表現は、とにかく斬新だった。カンフーやワイヤーワークなどの香港映画の技術をベースにしつつ、その映像をデジタル技術で加工。登場人物を静止状態で見せて周囲を複数のカメラで高速撮影し、猛スピードを表現した、いわゆるブレットタイムと呼ばれる技法は、その後の映画はもちろんドラマやCMにも導入された。
ブラック・コスチュームをまとった主演のキアヌ・リーヴスのクールな魅力はもちろん、コンピューターから哲学、アニメ、コミックまで幅広く取り込まれた引用も熱狂的なファンを生み、世界興収は4億6千万ドルを記録。日本では80億円の興行収入を上げ、1999年の年間3位の成績を収めた。
監督を務めたアンディ&ラリーのウォシャウスキー兄弟(現在はともに生適合手術を受けてラナ&リリーのウォシャウスキー姉妹に)は一躍、注目のヒットメーカーに。『マトリッククス レザレクションズ』で描かれるドラマは、この1作めの続編になるとのこと。すでに公開されている予告編ではウサギのタトゥーを追うネオの奔走や、若きモーフィアスとの道場での手合わせなど、1作めと連動する場面は少なくない。そういう意味でも、この1作めの復習はマストと言えるだろう。
『マトリックス』
製作年/1999年 製作総指揮・監督・脚本/アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー 出演/キアヌ・リーヴス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィービング
『マトリックス リローデッド』
2003年製作の第2作は第1作から4年を経ての続編。前作に熱狂したファンの期待がパンパンに高まっていた時期に公開されただけあり、日本でも世界でもシリーズ最高の興行収入を記録した。
ドラマを改めてたどってみよう。前作で人類の救世主として覚醒したネオは、コンピューターに人間が支配された現実の世界で、ザイオンと呼ばれる人間のコミュニティの一戦士となっている。前作で愛を芽生えさせたトリニティとの関係も順調のようだ。そのザイオンが、コンピューター軍の猛攻により危機が迫る。ネオはマトリックスの世界に飛び、それを阻止すべく駆け回るが、行く手にはさらなる試練が待ち受けていた。
マトリックスにはネオの運命を左右する多くのキャラクターがいる。メロビンジアンとパーセフォニーの夫婦は、この世界の特権階級に属しており、前者はこの世界で権力を拡大しようとする享楽主義者。ネオにしてみれば、“敵”というべき存在だ。後者は、そんな夫にウンザリしており、気まぐれな性格ゆえに、夫への当てつけのようにネオに協力する。
前作に続いて登場する“敵”エージェント・スミスは、ここではさらに手ごわくなる。元々はマトリックスの秩序を守るウイルス駆除的なプログラムだった彼は、この世界に嫌気がさしてシステムから離脱し、前作で敗れたネオへの復讐心によって動いている。自分の意識を他人にコピーして、自分と同じ存在を増殖させることもできる。ネオが100人ものスミスとバトルする場面は、本作のアクションのひとつの見どころだ。
一方で、物語の鍵を握る重要な“味方”らしきキャラもいる。前作に続いての登場となる預言者オラクルはネオに助言をあたえる。それ以上に重要なのは、マトリックスの設計者であるアーキテクト。後半でネオは、このプログラムと顔を合わせ、現実とマトリックスというふたつの世界が存在する理由を知ることになるのだ。
アクションに関しては、前作以上の見せ場といえるのがハイウェイでの壮絶なチェイス。バイクで敵をかわして疾走するトリニティ、車上で敵と格闘するモーフィアス。ザイオンから駆け付け、好サポートを見せる女戦士ナイオビ。各々の動きをつぶさに見据えながら猛スピードで展開するカーアクションに目を奪われる。
ちなみに、本作に登場するナイオビやメロビンジアンは、新作『マトリックス レザレクションズ』にも登場する模様。同作は第1作の新たな続編となるわけだが、だからと言って、『マトリックス リローデッド』を無視できない理由が、ここにある。
『マトリックス リローデッド』
製作年/2003年 製作総指揮・監督・脚本/アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー 出演/キアヌ・リーヴス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィービング
『マトリックス レボリューションズ』
前作『マトリックス リローデッド』と同時に製作され、前作の約半年後の2003年11月に世界一斉公開された『マトリックス レボリューションズ』。『~リローデッド』の結末が“続く”的であったこともあり、本作もファンが劇場に詰めかけて大ヒットを記録。前作に続いてコンピューターシステムや哲学の要素を押し出したストーリー展開は少々難解で、議論を呼んだが、見応えのある物語であることは間違いない。
改めて本作の物語をたどってみよう。人類がコンピューター支配に抵抗している世界。人類の救世主となることを運命づけられたネオは危機を脱したことで未来を知る能力を手に入れる。しかし、人類のコミュニティ、ザイオンはコンピューターの猛攻により破滅の危機に陥っていた。一方、マトリックスの世界はエージェント・スミスがコンピューター・ウィルスのように増殖して機能不全に陥り、サイバー・ワールドに危機をもたらしている。ネオはコンピューター界の統括者デウス・エクス・マキナと話をつけ、コンピューターと人間の共存社会の実現と引き換えに、強大な力を得たエージェント・スミスに戦いを挑む。
ドラマを理解するうえで重要なポイントは、前作と同様に預言者オラクルやマトリックスの設計者アーキテクト、そしてデウス・エクス・マキナといった、この世界の仕組みを知る者たちの発言だ。とりわけ“アノマリー”という単語は重要で、これは例外的な存在を意味する。秩序が保たれているコンピューターの世界にも、それは出現し、システムを左右する存在となる。ここではネオやエージェント・スミスがそれにあたる。クライマックスは、いわばアノマリー同士の激突。これがマトリックスの、さらには現実世界の命運を賭けた戦いとなる。
アクションの見せ場は、まさにこのクライマックスだろう。雨が降りしきる闇に覆われたマトリックス世界で、無数のエージェント・スミスのコピーに見守られながら、ネオとスミスは超人的な身体能力を駆使して一対一の対決を演じる。重力も引力も関係ない。地面を駆け、高く宙を舞う縦横無尽のスペクタクルは、シリーズの基本色である深緑のダークな色合いも相まって鮮烈な印象を残す。
正直なところ、『マトリックス リローデッド』と本作は観念的になり過ぎて、エンタテインメントとテーマ性のバランスがとれていた第1作とは、違うテイストになった感もある。そのために賛否は分かれたが、VFX超大作を入り口にして、設定や哲学を深めていった点が面白みでもある。そういう意味では、野心的なトリロジーだったのだ。
注目の『マトリックス レザレクション』には、本作に登場したキャラクターも登場するとのこと。この3部作と同じようなポジションに置かれるのかどうかは、現段階ではわかっていない。が、この3部作を見て臨めば、理解が深まるのは間違いないだろう。
『マトリックス レボリューションズ』
製作年/2003年 製作総指揮・監督・脚本/アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー 出演/キアヌ・リーヴス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィービング
『マトリックス レザレクションズ』のオリジナルスウェットを発売!
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『マトリックス レザレクションズ』オリジナルスウェットシャツ9900円(ダブルピー ウエストポイント/Safari Loinge)
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photo by AFLO