シカゴ ×『イルマーレ』
海外旅行の楽しみのひとつは、歴史を感じさせる建築物を眺めること。地震大国の日本と違って、アメリカの大都市はクラシックなビルディングが数多く残っており、最新の高層建築と美しく混在していたりする。そんな魅力を強く感じさせてくれる都市といえばシカゴだ。『スピード』('94)以来となるキアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロックの共演作『イルマーレ』は、主人公2人のドラマチックな運命をシカゴの建築物が絶妙に彩っている。
『イルマーレ』(2006年/アメリカ映画)
シカゴ(イリノイ州/アメリカ)
● 原題:The Lake House
● 監督:アレハンドロ・アグレスティ
● 出演:キアヌ・リーヴス、サンドラ・ブロック、クリストファー・プラマー、エボン・モス = バクラック
Story
湖岸の一軒家に住んでいた医師のケイトが、シカゴ中心部へ引っ越すことを決意。郵便物の転送をお願いしようと、郵便受けに次の住人宛ての手紙を残したケイトに、ある日返事が届く。それは2年前からの手紙で、送り主は建築家のアレックスだった。時間を超えて2人のやりとりが続くうち、ケイトはアレックスの運命を知ることに。
シカゴは建築の街
アレックスの職業が建築家。しかも父親や弟も同じ職業という設定のため、劇中にはシカゴの様々な建築物が印象的に登場する。アレックスから届いた地図と、建築家ならではの解説に従ってケイトが散策するシーンを見れば、シカゴが建築の街だといわれている理由がよくわかるはず。
登場人物右:医者
ケイト(サンドラ・ブロック)
2006年、湖岸に立つガラス張りの一軒家に暮らす医師。シカゴの病院に勤務することになって転居。次の住人に宛てた手紙に返事が届き、その相手アレックスと時空を超えてやりとりする。
左:建築家
アレックス(キアヌ・リーヴス)
2004年、家族の思い出が詰まった湖の家を買い取る建築家。郵便受けにケイトが残した手紙を発見。不思議に思いつつ返事を書くうちに、ケイトが2年後から手紙を送っていることを知る。
アメリカといえば、大都市には100年以上も前から高層ビルが立ち並ぶようになった国。そんな摩天楼の発祥の地は、やはりニューヨーク? いや、シカゴなのである。1871年に起こったシカゴ大火災によって多くの建物が焼け落ち、その空き地に摩天楼の建設ラッシュがはじまったからだ。当時から現在まで、訪れる人を建築で楽しませるのがシカゴという街の特徴になっている。
そんな魅力を実感できる映画が『イルマーレ』。同名の韓国映画をハリウッドでリメイクした作品で、主演はサンドラ・ブロックとキアヌ・リーヴス。郵便受けに入れた手紙が、2年という時空を超えて届くという、切なさもたっぷりのラブストーリーだが、原題は『The Lake House』。キーポイントとなる、その湖岸の家からしてガラス張りの独創的デザインで、思わず生活してみたい衝動にかられてしまう。建築物に魅せられる作品だと、よくわかるのだ。
そして主人公2人が待ち合わせるデイリープラザのピカソの彫刻など、個性的なアートが点在するのもシカゴの特徴。21世紀に入ってから“新しいシカゴの顔”と呼ばれるミレニアムパークでは、巨大な豆のような形をした銀色のステンレスのアートが有名になったし、シカゴ連邦政府センターの横にある赤い鉄の彫刻“フラミンゴ”など、映画にもたびたび登場する巨大アートが摩天楼にとけこんでいる。さながら街全体が美術館のようなので、歩き続けていると建築やアートが常に好奇心をかき立ててくる。それがシカゴなのだ。
『イルマーレ』は、そんなシカゴを“愛でる”作品なので、現地を訪れたことがある人は旅の思い出があざやかに蘇るはず。そしてシカゴへ行ったことがない人が観たら、いつか必ず自分の目でこの街の魅力を確かめ、漂う空気を全身で感じたくなることだろう。
Place 01(大学)
ルーズヴェルト大学アレックスの父親が建築学の教授をしているのがこの大学。父の教え子である弟が大学から出てくるのを、アレックスが待っている。1945年創立で、シカゴの中心部にあるルーズヴェルト大学は、学士・修士を合わせて125以上の課程を設け、日本からの留学生も多い。弟が通る玄関ホールの奥に見える階段は、『アンタッチャブル』の撮影にも使われた。
●Roosevelt University
住所:430 S Michigan Ave, Chicago, IL 60605
Place 02(レストラン)
パークグリル市民や観光客の憩いの場である、ミレニアムパークに隣接する人気レストラン。映画の中では、ケイトとアレックスが2年後に待ち合わせした架空のレストラン“イルマーレ”として登場する。実際はカジュアル系で、ランチにぶらりと立ち寄るにも最適。バーガーやピザなどいかにも“アメリカン”なメニュー中心で、1人前の量も多い。
●Park Grill
住所:11 N Michigan Ave, Chicago, IL 60602
パークグリルのテラス席のすぐ横に位置するのが、シカゴの冬の人気スポットであるミレニアムパークのアイスリンク。摩天楼を眺めながらアイススケートを楽しめる。映画ではみんな意外なほど軽装で滑っているので、観光客にもオススメ。
Place 03(バー)
Miller’s Pubシカゴのランドマークで“シカゴループ”と呼ばれる高架鉄道。そのシカゴループ沿いにある1935年創業の老舗パブで、ドラフトビールだけでも20種類を提供。バーベキューリブなど肉料理が絶品だ。地元のビジネスマンなどで連日大賑わいなので、シカゴらしさを感じるのに最高の店。マリリン・モンローや歴代シカゴ市長も飲みに来たことがある。ケイトが同僚医師と待ち合わせ、ここのカウンターで飲むが、映画では店名が“The Cove Bar”と変えられている。
●Miller’s Pub
住所:134 Wabash Ave, Chicago, IL 60603
Place 04(プラザ)
デイリープラザケイトが母とランチを食べ、さらにアレックスと直接会うことにしたのがこの広場。シカゴ市庁舎前にあり、ピカソが市に寄贈した野外彫刻で有名だ。特定のタイトルがなく、“ザ・ピカソ”“シカゴ・ピカソ”などと親しまれる彫刻は、映画の中でも確認可能。2人のように多くの人が待ち合わせで利用するこのプラザと彫刻は『ブルース・ブラザース』のラストで主人公たちが車で突っこんできた場所で、ハリソン・フォード主演の『逃亡者』にも映し出されている。
●Daley Plaza
住所:50 W Washington St, Chicago, IL 60602
雑誌『Safari』3月号 P172~173掲載
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