映画を観る際に、出演するスターの名前で興味をそそられることは多いが、監督の名前がポイントになるケースは少ないかもしれない。しかしアクション映画ファンが、この監督名を聞けばテンションが上がるはず。それは、マイケル・ベイ! 最新監督作『アンビュランス』は、ベイ映画への期待を高める人にうってつけの豪快が仕上がりだ。
タイトルのアンビュランスとは、救急車のこと。銀行強盗事件の現場に駆けつけた救急車が、犯人に撃たれた警官を救おうとする。しかし犯人のコンビが救急車を乗っ取る。救急救命士2人と、重症の警官、犯人たちを乗せた救急車がロサンゼルスの街を疾走するが……。LA警察やFBIによる壮大なスケールの追跡、一刻を争うほど生死の境をさまよう警官の運命、さらに犯人側のボスの、相手の一歩先を見極めた天才的&超冷酷な挑発など、あらゆる要素が、まさに一瞬も息をつかせぬ勢いで展開。“映画を観ている”という感覚を忘れさせ、“犯罪現場に立ち会ってしまった”という臨場感とスリルを最後の最後まで届ける。そんなスペクタクル感満点の一作だ。
アクション映画を革新してきたマイケル・ベイ監督は、今回も驚異の映像を完成させた。冒頭の銀行強盗のシーンから、カメラはあらゆる角度と方向に動き回り、特にローアングルを重視したことで、われわれ観客にその場に放りこまれた錯覚をもたらす。短いカットがハイテンポで、一見、ランダムに繋ぎ合わせられたようで、そこで何が起こっているかが伝わる編集テクニックも見事。そして救急車の追跡劇では、空撮から監視カメラ、サーモ映像まで多角的なビジュアルを駆使する。中盤には、冷静に考えても“ありえない”レベルの衝撃的ピンチが用意されたりもするが、映画の豪快さに乗せられて納得してしまう。『ザ・ロック』『バッドボーイズ』といったマイケル・ベイ監督作への自虐的なセルフオマージュが笑えたり、犯人の一人が家族のために犯行におよんだ悲壮な決意も絡まったりと、エンタメ要素が過不足なく盛りこまれている。
『アンビュランス』3月25日(金)公開
製作・監督/マイケル・ベイ 脚本/クリス・フェダク 出演/ジェイク・ギレンホール、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世、エイザ・ゴンザレス 配給/東宝東和
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