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CULTURE カルチャー

2025.12.13


怖くて不気味な田舎ホラー&ミステリー映画5選!《再配信》

ユーザーの反響が大きかった映画・海外ドラマ記事を再配信。こちらを参考に充実した休日を過ごしてみて!(記事初出時の配信日:2024年12月7日)

 

 



『ミッドサマー』
製作年/2019年 監督/アリ・アスター 出演/フローレンス・ピュー、ジャック・レナー、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー

胸のざわめきと不穏な陶酔が収まらない傑作!
もし天国があるとしたらこんな場所を言うのだろう。過去の悲劇から立ち直れないダニーは、恋人やその仲間たちに連れられて北欧のコミューンを訪れる。そこはきらびやかな陽光に照らされた緑の大地を子供らが駆け巡る楽園で、足を踏み入れるや白い民俗衣装に身を包んだ村人が笑顔で優しくもてなしてくれる。当地では今、90年に一度の大切な夏至の大祭がはじまろうとしていた。数々の違和感ある風習を受け入れつつ滞在を楽しむ彼らだったが、徐々に言い知れぬ不安と衝撃が身を侵しはじめるーーー。

『ヘレディタリー/継承』で観客を恐怖のどん底に陥れたアスター監督が放つ、民俗ホラーとでも呼ぶべき美しき悪夢絵巻。このジャンルの先駆的作品『ウィッカーマン』などの影響を感じつつも、繰り広げられる一つ一つの儀式や展開は完全なる唯一無二のアスター流。視覚的な恐ろしさもあるにはあるが、それ以上に精神にべったりと手の痕を残しつつ、目が眩むほど陶酔させる特殊な映像世界は不穏なれどクセになる。見方によっては、絶望の淵にあった主人公の心を埋め合わせ、深層心理の願望や感情を成就させる精神の旅とも解釈しうる、実に奥深い作品。
 

  

 


『アルカディア』
製作年/2017年 製作国/アメリカ 監督・出演/ジャスティン・ベンソン&アーロン・ムーアヘッド

低予算ながらジャンルを超えた不気味な一撃に唸る!
アルカディア、それは死に魅せられたカルト団体が共同で暮らすキャンプの名称だ。物語の主役はこの地で幼少時代を過ごし、青年期になって彼らを裏切るように脱退した兄弟。しかし、実社会で待ち受けていたのは日夜働いても楽にならない最底辺の暮らしだった。先の見えない辛さに耐えかね、弟は「もう一度、戻らないか?」と兄に提案する。歳を重ねた二人が当地で体験する驚きの世界とは……?

閉ざされたキャンプ内では、誰もが自分の才能を活かして豊かな暮らしを成り立たせている。表向きは何不自由ないユートピア。しかし人々の穏やか過ぎる笑顔と時折現れる上空からの俯瞰映像、周囲で巻き起こるシュールなまでの異変の数々が、観る者に「決して気を許すな」と絶えず注意喚起しているかのよう。ここでは一体何が起こっているのか。そして本作のジャンルはホラーなのか、サスペンスなのか、はたまたSFなのか。低予算でもアイディアと才能があれば面白いものが作れる。今やマーベルのドラマ監督として腕を振るう監督デュオの野心あふれる一作。
 

  

 


『白いリボン』
製作年/2009年 製作国/オーストリア、ドイツ、フランス、イタリア 監督/ミヒャエル・ハネケ 出演/ウルリッヒ・トゥックル、ブルクハルト・クラウスナー

鬼才が放つ、時代の閉塞感に満ちた寒村ドラマ!
「ハネケの映画に警戒せよ」とは全ての映画好きが胸に刻む鉄則だが、その警戒を軽く超え容易く胸の内側へ侵食するのがハネケの恐ろしさだ。題材、語り口、芸術性、演技……、あらゆる面で過去作を凌駕し、言いしれぬ不穏さをもたらす本作の舞台は、1913年頃のドイツの村。ある日、道を塞ぐように故意に張られていた針金によって医師が落馬し重傷を負う事件が発生し、それに続いて労働中の予期せぬ事故死、男爵の息子への暴力事件など、不可解な出来事が相次ぐ。果たして誰が?何のために?物語は住民たちの日常や関係性をクローズアップしながら、奥深い人間模様をじっくりと紡ぎ出す。

過去のハネケ作品と同様、私たちの「なぜ?」が満たされることはない。しかし、これが第一次大戦前夜のドイツの農村の空気感を描いていること、さらには村人の誰もが各々の小さな世界内で他者に規則や規範を押し付け、あるいは自らも押しつけられながら、がんじがらめの息苦しさに身を囚われていることは確かだ。罪の戒めのため子供の腕に巻かれたリボンが畏れを感じるほど白く、不気味に映える。カンヌ映画祭最高賞受賞作。
 

  

 


『ウィッチ』
製作年/2015年 製作国/アメリカ、カナダ 監督/ロバート・エガーズ 出演/アニャ・テイラー=ジョイ、ラルフ・アイネソン、ケイト・ディッキー

怪しげな森に棲む邪悪な者の正体とは!?
世界史の教科書でもおなじみ、ピリグリム・ファーザーズと呼ばれるイギリス出身の敬虔な清教徒たちによるアメリカ入植から約十年後。信仰上の意見の相違からコミュニティを離れることを決めた一家は、馬車に揺られた先で豊かな深い森を見つける。これこそ神が我々に与えてくれた土地。そう確信し暮らしはじめたものの、ようやく実った作物は蝕まれ、生まれたばかりの赤ん坊は忽然と姿を消し、苦難と絶望に襲われた家族内では長女のトマシンが魔女なのではないかとする疑惑すら持ち上がり…。

全くの絵空事かと思いきや、エガース監督は長期にわたり17世紀当時の文献や裁判記録などに目を通し、現代からは考えられない当時の感覚に則って、さらにはセリフ(言語)にも時代性を凝縮させながら、人間の常識を超えた”異なるもの”が隣り合わせの状況を作り出す。集団から距離を置いた上に、家族内でも個々が孤立し、分断されていく様は痛烈極まりない。と同時に、本作は若きトマシンがあらゆる伝統、信仰、軽蔑、憎悪を断ち切る姿を意味深に描く。今年『フュリオサ』でも大活躍を果たしたアニャ・テイラー=ジョイの記念すべき初主演作。
 

  

 


『理想郷』
製作年/2022年 製作国/スペイン、フランス 監督/ロドリゴ・ソロゴイェン 出演/ドゥニ・メノーシェ、マリナ・フォイス

息苦しさの果てに待つ重厚なラストに魂がふるえる!
スペインのガリシアにある寂れた農村を舞台に、住民同士のこじれが徐々に激しさを増すサスペンス。まず圧倒されるのは、幕を開けた時点ですでに住民らの間に沁み渡っている、なんとも言えない重苦しい空気感だ。原因を作っているのはフランスから移住してきた夫婦と、その隣に農場を持つ古株の兄弟。夫婦は豊かな自然を活かした野菜栽培を根付かせようと理想に燃え、片やずっとこの地で苦しい暮らしを余儀なくされてきた兄弟は風力発電計画がもたらす補助金を欲している。両者が思い描く理想は根源的な部分で食い違い、そこに外国人への差別意識も加わって、事態は手に負えないレベルへ深刻化していき……。

物語の7割ほどを”精神の消耗戦”が占める本作だが、長回し撮影による感情剥き出しのセリフの応酬や、豊かな自然をバックにした生活描写のリアルさなど、観る者をグイグイ引き込んでいく語り口の力がある。その上、終盤では女性たちの生き様にフォーカス。この予想を超えた凄み溢れる重厚な展開にただただ言葉を失う。スペイン版アカデミー賞(ゴヤ賞)で作品賞をはじめ主要部門に輝くほか、世界各地の映画祭で軒並み絶賛評を獲得している。

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文=牛津厚信 text:Atsunobu Ushizu
Photo by AFLO
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