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2026.08.16 NEW


男子400m日本記録保持者として陸上界を牽引する【中島佑気ジョセフ】! 初の世界大会で見えた勝つためのビジョン!

東京世界陸上競技選手権大会の男子400mで日本人歴代最高の活躍を見せてから約1年。ロサンゼルス五輪の表彰台を見据えた挑戦を続けるトップランナーが、世界と戦う覚悟を得たレースについて語ってくれた。

陸上競技選手 中島佑気ジョセフ
2002年、東京都生まれ。2022年オレゴン世界陸上の4×400mリレーで当時のアジア新記録を樹立(2分59秒51)。2023年のブダペスト世界陸上の400mで準決勝進出を果たす。夏目漱石やドストエフスキーを愛する読者家でもある。富士通陸上競技部所属。

昨年9月に開催された世界陸上の男子400m決勝で日本人歴代最高の6位入賞を果たし、国立競技場を沸かせた中島佑気ジョセフ。名実ともに日本を代表するスプリンターとなった彼が分岐点として挙げたのは、2022年のオレゴン世界陸上競技選手権大会だ。当時東洋大学の3年生だった中島は、男子マイルリレー(4×400mリレー)の最年少アンカーという大役を任された。

「海外で試合をすること自体がはじめての経験でした。3走の先輩であるウォルシュ ジュリアン選手が素晴らしい走りで順位を4位まで押し上げて僕にバトンを託してくれた。僕の走りで順位を上げることができなかったことは悔やまれますが、日本チームはアジア新記録と日本新記録(2分59秒51)を樹立し、過去最高タイの4位入賞を果たすことができた。メダルを獲れなかった悔しさはありましたが、世界大会の決勝の雰囲気を感じ、世界のトップ選手と肩を並べて走れたという経験は本当に大きかった。こういう舞台で戦う強さを身につければ、世界で勝つことができるという成長曲線が見えた瞬間でした。同時に当時まだまだ発展途上だった僕にとっては日本、そして世界のトップ選手になるための課題が明確になった大会でもありました」

世界との距離を縮めるために中島は、即座に行動を起こした。2023年2月から3月にかけて陸上王国アメリカの名門・南カリフォルニア大学で日本陸連の派遣による合宿に参加し、世界トップレベルの環境で強化に取り組むことに。さらに同年11月にも渡米し、5カ月間にわたって同大学でトレーニングを積んだ。

「アメリカで得た最大の収穫をひとことでいうと、やはりメンタル面の強さです。最も重要な場面で一番いい走りができる勝負強さというのでしょうか。そういった部分での成長を感じられたのは、非常に大きなことでした。同時に学んだのは、大舞台で戦うためには綿密な計画が重要であるということ。陸上という競技は一瞬で勝負が決まり、走り出したら修正が利かない世界。だからこそ事前に緻密なレース計画を立て、頭の中で完璧なシミュレーションを行うことが重要になる。その能力の高さが、パフォーマンスや勝敗を大きく左右することになります」

そんなアメリカでの武者修行で得たものが実を結んだのは、冒頭でも触れた2025年の東京世界陸上競技選手権大会。パリ五輪では思うような結果を出せず、その後は怪我にも苦しんだが、積み重ねてきたものがようやく形になった大会だったという。そして大きな飛躍を遂げた今、新しい挑戦と向き合っている。

「現在のテーマは、様々なレーススタイルを試すこと。昨年の世界陸上で成功した後半に勝負するスタイルから一度脱却して、前半型のスタイルも試していきたい。いろんなレースパターンを経験して、どんな状況でも強く、一貫性のあるパフォーマンスができるようになること。それが世界と戦ううえで大きな武器になると考えています。レースプランの引き出しが増えれば、その分、安定して強さを発揮できる。競合相手が誰であってもブレずに自分の走りを展開できるようになること。まずそこを目指したい」

多くのことを試す過程で、もちろんエラーも出てくる。そのエラーから得られるフィードバックを生かしながら、安定感のあるパフォーマンスを得ること。それが現在取り組んでいる課題だという。

「今年は、そうした取り組みの試金石になる年。まずは去年出した44秒台のタイムを安定して出せるようにしたい。そしてコンディションがハマったところで43秒台を出したい。将来的には、43秒5以上を目標にできればと思っています」

現在、直近のターゲットは、9月にブダペストで開催される世界アルティメット選手権と日本で開催されるアジア大会だ。

「世界のトップ選手が集まるので、そこで結果を出し、去年より順位を上げたい。アジア大会ではマイルリレーと個人種目の400mでの二冠も目標です。そして、その先にあるロサンゼルス五輪での金メダルから逆算すれば、来年の北京世界陸上でメダルを獲得しておきたいと思います」

アスリートとして常に高いパフォーマンスを出し続けることが重要だと自負する中島だが、こんな理想も語ってくれた。

「世界と戦う舞台では多くの方が注目してくださるので、アスリートも社会的な影響力を自覚する必要があると思うようになりました。そんな自覚を持ったうえで、スポーツの楽しさを伝えたり、注目してくださる人になにかいい影響を与えられる存在になっていきたいと思います」 

  

 アーティスト 田村 大
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは16万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。Instagram:@dai.tamura 

 

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※『Safari』9月号174〜176ページ掲載

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イラスト=田村 大 構成&文=遠藤 匠
illustration : Dai Tamura composition&text : Takumi Endo
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