2026.09.21 NEW
17時10分は何を意味する?〈星のや奈良監獄〉で時を愉しむ『ガストロノミー・クロニクル』を満喫【Safari Travel】
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遠くまで行くのではなく、“時”を超えるような旅も豊かな気持ちにさせてくれるもの。明治時代の建物を活用した〈星のや奈良監獄〉では、食や体験を通して心を文明開化した当時へと導いてくれる。
17時10分と示された一皿からはじまるディナーコースでは、日本に西洋料理が伝わった明治時代から未来へと続く年代記仕立てのコースを満喫。その時間は何を意味するのか、旧監獄のストーリーを想像させる謎を読み解いてみよう。
明治時代から未来へ。感性が刺激される、遊び心満載のディナー

月明かりの中、くつろげる中庭
〈星のや奈良監獄〉は、2026年6月に開業したラグジュアリーホテル。重要文化財の旧監獄を保存・再生しており、当時そのままの赤レンガの建築美と〈星のや〉ならではの特別な贅沢を味わえる。客室だけではなく、ダイニングや中庭も宿泊者限定。利用者だけが、その空間に足を踏み入れることができる。

photo:Miyu Kohama
ダイニングラウンジでアペリティフ
夕食は日本におけるフランス料理の移り変わりを表現したディナーコース『ガストロノミー・クロニクル(2万2000円)』を提供。『黎明期』『成熟期』『現代』『未来』をテーマにした全4皿だが、その前にダイニングラウンジでのアペリティフを楽しめるのが粋なポイント。ダイニングラウンジは旧監獄の倉庫だった場所で、新たに設けた大きな窓の先には美しい中庭が広がっている。
イチゴ×シャンパンのカクテルとともに。ノンアルコールも選べる
食前酒と一緒に提供されたのは、古代のチーズ『蘇(そ)』をふりかけた『キッシュ・ロレーヌ』と、サーモンの『ブランダード』。蘇は飛鳥時代から平安時代に日本で作られていた伝統的な乳製品で、古都・奈良の歴史の深さも感じられる。

当時の印象を色濃く残した、真っ白なダイニング
月明りをモチーフしたライトアップが美しい中庭を通り、ダイニングへ。未決拘禁者を収容していたかつての拘置監は、プライベートな半個室のファインダイニングへと大変貌を遂げている。
一皿で前菜からデザートまで楽しめる、『始まりのパナシェ』
『黎明期』をテーマにした1皿目は『始まりのパナシェ』。パナシェとはフランス語で“盛り合わせ”の意味を持ち、フランス料理が広まりはじめた明治時代のコースを一皿で表現している。前菜『魚介のアスピック』からはじまり、時計回りにスープ『コーンポタージュ』、魚料理『サーモンマリネ』、肉料理『鶏肉のクロケット』、デザート『フォアグラのホワイトチョコレートがけ』といった具合だ。
よく見るとプレートには時計の文字盤が描かれており、示す時間は『17時10分』。この1皿目がだされた時間ではなく、「何か意味がありそう」と直感的に思ったが、残念ながら謎を解くことはできなかった。少し考えた後、スタッフに尋ねてみると、受刑者の食事の時間を表しているそうだ。一皿にたくさんの遊び心ある仕掛けが詰まっており、考えを巡らせながら食事をするのも楽しい。
フレンチの王道『舌平目のブレゼ ソース・アルベール』
『成熟期』をテーマにした2皿目は『舌平目のブレゼ ソース・アルベール』。日本のクラシックフレンチを象徴する魚料理で、淡白な舌平目を引き立たせる濃厚なソースがとても美味しい。ソース・アルベールはエシャロットやマッシュルームをベースに白身魚のダシや少量のフォン・ド・ヴォーを合わせ、バターで仕上げたもの。パンにソースをつけて楽しむと、どこか懐かしさも感じさせるような味わいだ。
赤レンガを崩すと……
『現代』をテーマにした3皿目は『赤レンガと植木鉢』。メニュー名からは想像もできないクリエイティブな料理だが、まず登場したのは旧奈良監獄をイメージさせる赤レンガと、植木鉢のように野菜が盛り付けられた付け合わせだ。
赤レンガの中には、奈良漬の酒粕をマリネした牛フィレ肉が
実は赤レンガは塩・赤ワイン・奈良漬の酒粕でできていて、スタッフが崩すと柿の葉に包まれた牛フィレ肉がお目見え。ユニークな見た目に加え、牛フィレ肉を塩で包んで焼くことでじんわりと火が通り、柔らかくなる効果があるという。トリュフがあしらわれた牛フィレ肉はまろやかな舌触りも極上。楽しいパフォーマンスとともにその味わいを噛み締めた。
『赤レンガと植木鉢』と30年物の赤ワインのマリアージュを楽しめた
趣向を凝らした料理と一緒に、『ワインペアリング(8000円)』も楽しみたい。『赤レンガと植木鉢』のペアリングとして提供されたのは、『シャトー・クロ・ド・サルプ 1996』と『レミ・ジャニアール シャンボール・ミュージニー 2023』の2種。長期熟成の旨味と、爽やかな果実味のそれぞれを比較しながら牛フィレ肉とともに味わえる。
サステナブルな未来のフレンチを表現した『カカオの環』
『未来』をテーマにした最後のデザートは『カカオの環』。本来捨てられるはずのカカオハスク(種皮)をはじめ、カカオを余すことなく使ったカカオケーキだ。アップサイクルされたワイングラスを使った器に盛り付けられており、未来へのメッセージが込められている。
お酒を片手に、蓄音機の音色に酔いしれる。宿泊者限定のラウンジ体験

photo:Miyu Kohama
メインラウンジの『茜のティーサロン(無料)』
明治時代へと思いを馳せる仕掛けは、ラウンジでも。メインラウンジでは、明治の頃より美しい陶磁器を作るノリタケのクラシカルなデザインのティーセットでお茶を味わう『茜のティーサロン』を楽しめる(15:00~16:30限定)。紅茶は明治の時代に日本にもたらされ、日本でも生産が始まった。この日提供されたのは、奈良県・月ヶ瀬産の和紅茶。渋みの少ないまろやかな和紅茶は、新鮮さとともに心地よさをもたらしてくれる。

ダイニングラウンジの『響きのソワレ』
ダイニングラウンジで21:00~22:30に開催される『響きのソワレ』では、蓄音機のクラシカルな音色に癒やされながら、カクテルやモクテルを楽しめる。蓄音機が発明されたのは明治時代。電気を一切使わず、ハンドルを回すことで流れる音色は、ノスタルジックな気分に誘ってくれる。明治時代に録音されたレコードもあり、当時の演奏を令和に聴けることも、特別感のある体験だ。

photo:Miyu Kohama
メインラウンジの『香りの宵支度』(1万2100円)
実は『香水』が日本にもたらされたのも明治期。それまで日本では粉末のお香などで香りを楽しむ文化はあったものの、西洋的な液体の香水が本格的に広まりはじめたのは明治時代なのだ。21時30分~メインラウンジで開催される『香りの宵支度』では、12種類の香りを組み合わせて自分だけのオリジナル香水を作ることができる。西洋から伝わったベルガモットや奈良らしい吉野杉などをかいでいると、自然と心まで解きほぐされていく。
メインを少しずつ味わう贅沢。明治の流行りを詰め込んだ『文明開化の朝食』

ノスタルジックな気分に浸れる『文明開化の朝食』(6380円)
滞在の締めくくりは、明治期へとタイムスリップできる『朝食』。『文明開化の朝食』では、スコッチエッグ、カニクリームコロッケ、エビフライをメインに、100年以上前の洋食文化を味わえる。スコッチエッグにつけるのは、『洋式醤油』として当時トレンドとなったウスターソース。カニクリームコロッケは薄い衣でサクッと揚げられており、ラグジュアリーホテルならではの上質な味わいに自然と笑顔になる。

photo:Miyu Kohama
とろける牛肉がたまらないビーフシチュー
熱々の『ビーフシチュー』も、明治時代に広まった料理。メインをちょっとずつ味わえるのが贅沢で、パンではなくごはん・味噌汁とともに楽しむことにも明治らしさを感じる。明治時代に建てられた旧奈良監獄の建物内で味わうからこそ、より一層その美味しさを満喫できるようだ。
歴史とともに、遊び心あふれるユニークな食体験を楽しめる〈星のや奈良監獄〉。食べるだけではない、その背景にあるストーリーまでたっぷりと味わうことができる。過去から未来へと続くディナーコースや蓄音機の音色に癒やされながら、時を超えるような旅を体験してみては。
取材・文/小浜みゆ text:Miyu Kohama































































