
『ひまわり』
製作年/1970年 監督/ヴィットリオ・デ・シーカ 出演/ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ、リュドミラ・サベーリエワ
あの光景、あのメロディに号泣必至の名作
一面に広がるひまわり畑。そこにヘンリー・マンシーニの奏でる抒情的なテーマ曲が流れるだけで胸が締め付けられ、たまらない気持ちになる名作中の名作。時は第二次大戦中、ジョバンナ(ソフィア・ローレン)とアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)はナポリの海辺で恋に落ち、結婚する。しかし、精神に異常をきたしたそぶりで徴兵を逃れようとしたのがバレて、夫は極寒のソ連戦線へ送られることに。やがて終戦を迎えて兵士が続々と帰還を遂げる中、妻は日々、夫の帰りを待ち続けるが……。
序盤の陽気さと愛に満ちた雰囲気から一変し、中盤は身も心も凍りつくような死と隣り合わせの戦場の地獄が描かれ、その後、せっかく一命を取り留めながら共に生きることが叶わない夫婦の運命に涙が止まらなくなる。おびただしい数の兵士たちが眠るひまわり畑の撮影地が現在のウクライナにあたるのも心に刻んでおきたい事実。本作は今なお私たちに、戦争が引き裂くものの大きさを訴え続けている。

『父の祈りを』
製作年/1993年 監督/ジム・シェリダン 出演/ダニエル・デイ=ルイス、エマ・トンプソン、ピート・ポスルスウェイト
人間としての尊厳を力強く謳いあげた名作
1974年、10月5日。英国ギルフォードのパブで爆弾が炸裂し、ジェリー・コンロン(ダニエル・デイ=ルイス)ら4人の若者に容疑がかかり逮捕される。それだけでなく、病気を患うジェリーの父をはじめ親族もまた協力者として厳しい取り調べを受けることに。これがのちに重大な冤罪事件として語り継がれる「ギルフォード・フォー事件」のはじまりであり、有罪判決を受けたジェリーは父と共に長きにわたる収監生活を余儀なくされるが……。
現代最高の俳優の一人に数えらえるデイ=ルイスは、撮影に向けて体重を削ぎ落としたり、独房で生活するなどの自らをギリギリまで追い込む役作りでこの役を体現。非暴力を貫き、常に主人公の支えであり続けた父を演じるピート・ポスルスウェイトの実直な存在感も素晴らしく、いわば二人の両輪あってこそこの不屈の物語は力強く前進していったと言えるだろう。アカデミー賞では無冠ながら7部門での候補入りを果たした。

『ジョンQ -最後の決断-』
製作年/2002年 監督/ニック・カサヴェテス 出演/デンゼル・ワシントン、ロバート・デュヴァル、ジェームズ・ウッズ
デンゼル・ワシントンの渾身の叫びに心震える
ある日、最愛の息子が倒れ、精密検査の末に心臓病との診断が下される。命を救うためには移植手術が不可欠。しかし思いがけない医療保険の適応条件が行手を阻む。制度をめぐるあまりの理不尽さに激怒した父ジョンは、息子の手術を求め、人質を取って病院内に立てこもり……。
アメリカにおける格差の象徴とも言われる医療保険問題を真っ向から扱い、観客に向けて「あるべき正義とは?」「医療とは?」といったテーマを突きつける社会派ヒューマンサスペンス。渾身の叫びを上げるデンゼル・ワシントンの存在感はやはり圧巻で、立てこもり事件が進行するにつれ思いがけなくジョンへの賛同者が増えていく展開も胸を揺さぶる。実はカサヴェテス監督の愛娘も心臓に病を抱え、似たような保険適応の問題に苛まれ続けた過去があるとか。オリジナル脚本を目にしたカサヴェテスが、大いなる共感を胸に本作の映像化を切望したのも納得。フィクションではあるが、社会の空気を巧みに捉えた、リアルで切実な感情に満ちた一作だ。

『アンナ・カレーニナ』
製作年/2012年 監督/ジョー・ライト 出演/キーラ・ナイトレイ、ジュード・ロウ、アーロン・テイラー=ジョンソン
ロシア文学の最高峰を驚きの手法で映画化!
ラヴストーリーという言葉だけでは足りない。トルストイが著したこの歴史的名作は、あらゆるものを捨ててただひたすら愛に生きようとする女性の物語だ。時は19世紀末。帝政ロシアの要職を務めるカレーニンを夫に持つアンナ・カレーニナは、若き将校ヴロンスキーとめぐりあい、激しい恋へ落ちる。仮に夫や息子を捨てて飛び出せば、社交界から爪弾きにされるのは確実。しかしもう止められない。アンナの激情は機関車のごとく走りはじめ……。
「ロシア文学なんて敷居が高いのでは?」とお思いのあなたも心配無用。本作には『プライドと偏見』『つぐない』のジョー・ライト監督ならではの現代的感覚と、劇場の舞台空間を巧みに駆使した仕掛け絵本にも似たギミックがいっぱい。目が眩むほどスピーディーに展開する映像世界に身を預けるだけで楽しく、ふと気づくとアンナをはじめ、登場人物の心情にのめりこむ自分に気づくはず。まさに「読む名作」ならぬ「感じる名作」。この悲劇を改めて味わうきっかけを与えてくれる一作だ。

『海辺の家』
製作年/2001年 監督/アーウィン・ウィンクラー 出演/ケヴィン・クライン、クリスティン・スコット・トーマス、ヘイデン・クリステンセン
親子の絆が建て直されていく感動ドラマ
一度はバラバラになった家族が再び心の絆を取り戻そうとする感動のヒューマンドラマ。建築事務所で模型作りを担うジョージは、妻との離婚後、海辺に建つ古い家に立った一人で住み続けている。しかし急な解雇を告げられたその日、彼は手の施しようのない末期癌であると判明。残された余命はあと4カ月しかない。彼は夏休みの間、息子サムを呼び寄せ、朽ち果てた海辺の家を共に建て直そうとするのだが……。
やがてこの世界から去り行くさだめのジョージは、生きた証として何を遺せるだろう。彼の周りに一人また一人と人が集い、目的に向けて力を結集させていく過程が実に感動的。原題”Life as a House ”が指し示す通り、刻々と再建されていく家は、すなわち人生の中で互いの信頼と絆が回復されていく投影でもある。名優たちがひしめく中、ピアスだらけで複雑な心理状態を抱えたサム役をクリステンセンが見事に体現。『スター・ウォーズ エピソード2』(2002年)でブレイクする直前の精悍な演技で魅了してくれる。
photo by AFLO







































































