
カリフォルニアワインと聞いて、濃厚な果実味を持つカベルネ・ソーヴィニヨンや、リッチで華やかなシャルドネを思い浮かべる人はいまだに多いだろう。それだけ1976年に行われたブラインドテイスティング”パリスの審判”で1位に輝いた銘柄の影響は強いのかも。もちろん、それらもカリフォルニアワインの魅力。けれど、いま現地で生まれているワインは、それだけではない。
土地や品種の個性をより自由に表現し、伝統にとらわれないスタイルを追求する造り手も増えている。そんなカリフォルニアワインの“いま”を、料理とともに体感する一夜が、9月11日(金)に〈ル・プリスティン東京〉で開催された。
テーマは『カリフォルニア ワイン ニューウェーブ ディナー』。

写真左より山本麻衣花、三竹桃果、池田大輝
この夜、ゲストを迎えたのは、マンダリン オリエンタル 東京の池田大輝、同じくマンダリン オリエンタル 東京の山本麻衣花、そして会場となる〈ル・プリスティン東京〉の三竹桃果。いずれも、カリフォルニアワイン・ソムリエアンバサダーとして活動する、いま注目の若手ソムリエ。
いま飲みたいのは、“カリフォルニアらしさ”のその先
カリフォルニアワイン協会は、2025年に北アジア地域における初代『カリフォルニアワイン・ソムリエアンバサダー』を選出。日本からも池田、山本、三竹とともに、コンラッド東京の森本美雪の4名らが選ばれている。彼らの役割は、カリフォルニアワインの魅力を伝えることだけではない。ワインの背景にある土地、人、文化まで含め、その多様性を次の世代へ伝えていくことにある。
今回のディナーでは、池田、山本、三竹の3人がこの夏に実際にカリフォルニアのワイン産地を訪問。現地で出会った生産者やワイン、その土地ならではの空気感を持ち帰り、次世代のカリフォルニアを象徴する7本をセレクトした。
スタートを飾ったのは、アペリティーヴォのセイボリーケーキに合わせて〈ロデレール エステート〉の“レルミタージュ ブリュット 2019”。続いてグリーンミネストローネには〈ケンダル ジャクソン〉のソーヴィニヨン・ブランと〈ザ ヴァイス〉の“セビリア”オレンジ・オブ・アルバリーニョの2種類をペアリング。どちらも違う個性のワインながら、違った味わいを絶妙に引き出す。さらにスズキのお料理には、〈カトレア〉のソノマ・コースト シャルドネ。
そして赤では、〈ターリー〉のローダイ キルシェンマン ヴィンヤード ジンファンデルにシグネチャーメニューであるシーフードオリキエッテを、〈ロバート モンダヴィ ワイナリー〉のザ・エステーツ カベルネ・ソーヴィニヨン オークヴィルと60周年を記念したカベルネ・ソーヴィニヨンをメインの国産あか牛に。

カリフォルニアワインとひと括りにするには、あまりにも表情が豊か。品種や産地だけでなく、造り手の哲学によっても味わいが変わる。その振れ幅こそが、いまのカリフォルニアワインの面白さなのだろう。
料理との出会いで、ワインの個性がさらに際立つ
舞台となった〈ル・プリスティン東京〉は、ホテル虎ノ門ヒルズに位置するレストラン。ミシュランスターシェフ、セルジオ・ハーマンが監修する料理と、洗練された空間が魅力だ。
この夜は、そんな料理とカリフォルニアワインを組み合わせることで、ワインのテイスティングだけではなく、ひとつのディナーとしてその魅力を体験できる構成に。
ワインを単独で味わうだけなら、その香りや酸、果実味、余韻といった要素に意識が向く。けれど料理と合わせることで、同じ1本でも表情が変わる。食材の旨味を引き立てたり、料理の余韻を伸ばしたり、ときには意外な組み合わせによって新しい味わいを発見できたりする。
カリフォルニアワイン協会がこれまで行ってきたペアリングディナーでも、料理とワインの調和だけでなく、それぞれのワインが持つストーリーや生産者の背景まで紹介することで、その魅力を立体的に伝えてきた。
今回もまた、3人のソムリエが現地で得た経験を交えながらワインを紹介。グラスの中だけではわからない、その土地の空気まで感じさせるような時間となった。
“知る”より先に、“楽しむ”という選択
ワインというと、どうしても『知識が必要』と思いがち。
産地はどこか、品種は何か、ヴィンテージはいつか。もちろん、知識が増えればワインはもっと面白くなる。ただ、大人のディナーにおいては、まず目の前の一杯を素直に楽しむことも大切だろう。
今回のニューウェーブディナーが興味深いのは、そんなワインとの距離を自然に縮めてくれるところ。
オレンジワインを思わせる1本から、伝統的なカベルネ・ソーヴィニヨンまで。スタイルの異なるワインを料理とともに味わえば、「カリフォルニアワイン=濃厚」というイメージも、いい意味で裏切られる。
そして、その違いをナビゲートするのが、現地を知る若手ソムリエたちだ。
ワインを“教えてもらう”というより、彼らが現地で感じたことを聞きながら一緒に楽しむ。そんなカジュアルなスタンスだからこそ、ワインに詳しくない人にとっても、その魅力に自然と入り込める。
ワインの面白さは、1本のボトルの中だけにあるわけではない。
その土地の気候や土壌、そこで暮らす人々、造り手の哲学。そして、そのワインを誰と、どんな料理と味わうのか。いくつもの要素が重なったとき、グラスの中にひとつの“旅”が生まれる。
今回の『カリフォルニア ワイン ニューウェーブ ディナー』は、まさにそんな体験を楽しむための一夜だった。
カリフォルニアを訪れたことがある人なら、旅先で出会った風景を思い出しながら。まだ訪れたことがない人なら、グラスを傾けながら次の旅に思いを馳せる。
そんなふうに、ワインをきっかけにカリフォルニアという土地そのものに興味を持てるのも、大人のためのワインディナーならではの醍醐味だろう。
自由で、エネルギッシュで、ちょっと新しい。いまのカリフォルニアワインは、どうやら昔のイメージだけでは語れない。
次にグラスを選ぶときは、そんな“ニューウェーブ”の一本を選んでみるのも悪くないだろう。


























































