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2026.05.03 NEW


パリ五輪で理想の柔道を体現した90㎏級日本代表【村尾三四郎】、折れない心で掴んだ“強さ”が世界で戦う力に!

個人戦と男女混合団体戦で銀メダルを獲得したパリ五輪を経て、ロス五輪に照準を合わせた戦いに挑んでいる柔道家、村尾三四郎。満身創痍の状態で自身の柔道を見つめ直し、磨きをかけた“エルサレムでの死闘”について語ってくれた。

柔道家 村尾三四郎
2000年、アメリカ・NY州生まれ。2019年グランドスラム・デュッセルドルフでの準優勝などで早くから頭角を現し、2021年グランドスラム・カザンでワールドツアー初優勝。2024年パリ五輪90㎏級、男女混合団体で銀メダルを獲得。JESエレベーター所属。

初の五輪出場となったパリ五輪の柔道男子90㎏級決勝で、宿敵ラシャ・ベカウリとの対戦で見せた勇姿が鮮烈な印象を残した村尾三四郎。結果は惜しくも銀メダルに終わったが、判定に不満を漏らさず、試合が終われば機敏に礼をし、相手を称えるその姿は、柔道家・村尾の精神性の高さを強く印象づけた。そんな彼のキャリアを振り返るうえで分岐点となった試合。それは2022年12月にイスラエルで開催された“ワールドマスターズ・エルサレム”だという。

「当時、僕は階級の中でまだ2番手という立場で、東京五輪では実現できなかった五輪出場を目指していました。しかし、この年の世界選手権に出場できなかったこともあり、五輪代表になるための実績を積む機会が限られていた。柔道の場合、五輪の前年度の世界選手権で結果を出せば早期の内定に繋がります。その世界選手権代表に選ばれるためには、このイスラエルで開催されたワールドマスターズで結果を残すことが絶対条件。パリ五輪を見据えるならば、ここが踏ん張りどころとなる大会でした」

しかし、最大の試練は大会直前に訪れた。12月初旬のグランドスラム東京2022で、膝を負傷してしまったのだ。

「大会までわずか3週間しかありませんでした。通常であれば出場を回避するような状態でしたが、五輪に出るためにはこの大会はとにかく重要だと自分に言い聞かせました。しかし、従来のような完璧な練習はできないまま現地に入ることに。正直なところ、どうやって勝てばいいかわからないほど、気持ちはマイナス思考に陥っていました」

満身創痍で挑んだイスラエルの地。調整が十分にできていないことに対する不安が渦巻く中、「万全ではない状態でなにができるのか。どうすれば勝機を見出せるのか」を自分に問いかけ続けたという。

「できる技術が10あるうち、あのときの自分に出せたのはせいぜい2、3割でした。だからこそ、闇雲に攻めるのではなく、ポイントを絞って戦う必要がありました。要所をしっかり締め、絶対に隙を作らないことを徹底した。極限状態の中でも冷静さを保ち、いかにして勝ち切るかを考え抜きました。今思えば、あのとき培った“丁寧な柔道”が、今の自分を支える財産になっています」

死力を尽くした結果、村尾は見事に優勝を飾った。この勝利で得た自信と実績が2023年の世界選手権でのメダル獲得への呼び水となり、その後のパリ五輪代表内定に繋がった。しかし、世界の壁は厚い。特に近年は、実力者として認められた村尾の得意とする組手を封じる対策が彼を苦しめてきた。そこを目指してたどりついたパリ五輪の決勝でも、その技術的な攻防が勝敗を分けた。

「決勝で対戦したベカウリ選手との試合は、どちらが自分の得意なフィールドで戦えるかという我慢比べ。パリのときは最後、僕が勝ち急いでしまったがゆえに相手の土俵に乗ってしまいました。自分の持ち味を前面に出して勝ち切るには、相手に合わせるのではなく技術の底上げと新しい引き出しが必要。五輪まではスパンが短く新しい技術を取り入れる余裕がありませんでしたが、今はそのプラスアルファを磨く時間を大切にしています」

そんな村尾には座右の銘にしている言葉がある。“ビー・リアル”。本物になれという意味合いの言葉だという。

「この言葉が座右の銘になったきっかけは、子供の頃に見たマイク・タイソンの入場シーンでした。ただ試合に勝つ、強いというだけでは終わらない、生き様を感じさせるような選手になりたい。そう思わせてくれたのがタイソンでした。圧倒的な結果はもちろんですが、その過程にある葛藤や不安さえも言葉や柔道で表現し、見た人の心になにかを残せる存在。それが僕の目指す“本物”の姿です」 

  


 アーティスト 田村 大
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは16万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。Instagram:@dai.tamura

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イラスト=田村 大 構成&文=遠藤 匠
illustration : Dai Tamura composition&text : Takumi Endo
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