ウォッチメゾンの極域に到達した
〈リシャール・ミル〉が魅せる複雑機構と、極限まで削ぎ落とされたメカの鼓動
建築やデザインの世界には、研ぎ澄まされた美学を追求する“Less is more”という考え方がある。その一方で、より多いことで豊かさを表現する“More is More”の考え方もまたひとつの真理である。〈リシャール・ミル〉は、そのどちらも正解だととらえており、究極の理想形を追求し続けている。
RICHARDMILLE
RM41-01
トゥールビヨン サッカー
サッカーに特化した機能を備えるクロノグラフ機構を搭載。ケースサイドには4つのプッシュボタンがあるが、2時位置と4時位置がゴールカウンター、8時位置と10時位置がクロノグラフ用となる。世界限定30本。ケースサイズ49.65×43.23㎜、手巻き、ダークブルークオーツTPT®×カーボンTPT®ケース、ホワイトラバーストラップ、50m防水。1,450,000 CHF(リシャール・ミル/リシャールミルジャパン)
極限なるクロノグラフ
〈リシャール・ミル〉にとって、“過激”であることは悪いことではない。時計のF1を目指すと宣言した以上、目標地点をどこまでも高く掲げ、そこに向かってエンジニアリングを積み重ねる必要があるのは当然だ。とりわけ計時機構であるクロノグラフに対する情熱は深く、2002年の初登場から現在へと至るに、多彩な進化を遂げた。
その最新版が“RM41-01トゥールビヨン サッカー”、サッカー専用クロノグラフだ。しかも単に45分間を計測するというものではない。試合時間の計測はセンターにある二本の針が行う、ひとつは秒で、もうひとつは分だ。試合が進み、45分を過ぎると、針先の表示は“EXTRATIME”へと突入する。ハーフタイムに入ったらクロノグラフをいったん停止させ、後半がはじまると“00”へとフライバックさせて計測を再開。すると9時位置のマッチフェーズインジケーターが“1st HALF”から“2nd HALF”へと切り替わる。この表示は15分ハーフの延長戦にも対応しており、さらに11時と5時の位置には“機械式ゴールカウンター”が収まり、スコアを記録することもできる。これだけでも十分に過激だが、さらに時計として高精度を実現させるためにトゥールビヨンも加えており、最高峰のエンジニアリングを存分に味わえる。
〈リシャール・ミル〉のウォッチメイキングは、過激で退屈しない。しかし機能もデザインも、極めて綿密に計算されており、独自の美学を貫く。だから時計愛好家は魅了されてしまうのだ。
搭載するキャリバーRM41-01は、創業当時から関係の深い“オーデマ ピゲ ル・ロックル”との共同開発により誕生。かつては“ルノー・エ・パピ”として知られた超絶技巧派時計工房らしく、機能が超複雑であるだけなく、パーツの配置やブリッジのレイアウトにも、かなり気を使って設計している。パーツ点数は650もあるのだが、そのすべてが美しく仕上げられているのも驚異的。まさに“More is More”の理想を追求した時計といえるだろう。
トゥールビヨン サッカー
ケースサイドに収まるプッシュボタンにも、ケースと同じくレッドカーマインバサルトTPT®を貼り込んでいる。こういったディテールへのこだわりが、時計の完成度をさらに高めるのだ。世界限定30本。ケースサイズ49.65×43.23㎜、手巻き、レッドカーマインバサルトTPT®×カーボンTPT®ケース、ブラックラバーストラップ、50m防水。1,450,000CHF(リシャール・ミル/リシャールミルジャパン)
新素材の開発は続く
〈リシャール・ミル〉は素材でも理想を貫いている。創業当時からグレード5チタンを好んで採用してきたが、これは軽くて着用感に優れた時計を目指しているためだ。その情熱はさらに強まり、現在は極薄の繊維を何層にも重ねて母材を作るカーボンTPT®やクオーツTPT®など、極めて軽量かつ頑強な素材の開発を通じて、理想を追求している。
“RM41-01トゥールビヨン サッカー”では2種類の素材を採用。ひとつはクオーツ繊維を用いたダークブルークオーツTPT®で、こちらは既存素材のカラーバリエーションとなる。さらに新素材として、レッドカーマインバサルトTPT®を採用した。バサルトという素材は耳慣れないが、これは溶岩が冷えて固まった玄武岩のこと。この天然石をもう一度溶解して加工すると非常に強固な素材になる。また繊維状に加工して、断熱材などにも使用されるという。
〈リシャール・ミル〉では協力関係にあるNTPT社と研究開発を進め、バサルトTPT®という新素材の開発に成功した。実は2014年からカーボンTPT®素材を採用しているが、時計の性能や表現力を広げるために、新素材の開発に余念がない。
メカニズムやデザインだけでなく、素材の個性も〈リシャール・ミル〉の魅力のひとつといえる。素材が生み出す独創的なテクスチャーも、彼らの情熱の表れであり、過激に進化する最先端技術が、端的に表れる場所でもあるのだ。
マニュアル
極軽量なスケルトンムーブメントを使用することで、軽くて着用感に優れるシンプルウォッチが完成。研ぎ澄まされた美しい時計を日常使いするのも、究極の贅沢だ。ケースサイズ47.33×37.95㎜、手巻き、50m防水。上:グレークオーツTPT®×Tiケース、グレーラバーストラップ。155,000CHF 右:カーボンTPT®×Tiケース、ブラックラバーストラップ。155,000CHF 左:ホワイトクオーツTPT®×Tiケース、ホワイトラバーストラップ。155,000CHF(すべてリシャール・ミル/リシャールミルジャパン)
美しきシンプリシティ
〈リシャール・ミル〉は、日常的に使える時計の開発にも力を注ぐ。時計として求められる部分だけに特化した“RM55-01マニュアル”は、時計のひとつの究極形といえるだろう。
センターセコンドの三針モデルで、ムーブメントは手巻き式。カレンダーもファンクションセレクターもついていない。まさに時刻を知るという機能だけを研ぎ澄ませた時計だが、スケルトンデザインのキャリバーRMUL4が、普通の時計ではないことを暗に示す。ブリッジには航空宇宙産業由来の素材で軽量なグレード5チタンを採用。ムーブメント全体の重さはなんと5g未満。この繊細かつ強固なブリッジにパーツを組み込むが、歯車などへの負担を軽減させるためにダブルバレル機構を取り入れ、パワーリザーブは約55時間を確保。地板も同様にグレード5チタン製でマイクロブラスト、サンディング、ブラックPVDコーティングなど細部にわたる仕上げを施している。
ケースバリエーションは3種で、定番のカーボンTPT®、夏の陽射しに映えるホワイトクオーツTPT®、そしてピンクのインデックスが特徴的なグレークオーツTPT®。ムーブメントが固定されるミドルケースは、3種ともグレード5チタン製となる。
〈リシャール・ミル〉は創業から現在に至るまで、日常的に使えるという時計の本質を追求してきた。機能をそぎ落とすことでたどりついた“RM 55 -01マニュアル”は、まさにその究極形のひとつ。エンジニアリングが生み出した美しきシンプリシティがここにある。
キャリバーRMUL4の地板は、ミドルケースに直結する構造になっており、耐衝撃性能にも優れる。地板とブリッジはグレード5チタン製で、地板にはマイクロブラストやサンディング、ブラックPVDコーティング、ブリッジにはサテン仕上げとTitalyt®処理をそれぞれ施すことで立体感と高級感を付与。精度や耐衝撃性を高めながら、シンプルな構造を実現するため、可変慣性フリースプラングテンプを採用。テンプには小さな調整用ウェイトが4つあるので、しっかり精度を追い込める。
●リシャールミルジャパン
TEL:03-5511-1555
※『Urban Safari Prestige Watch vol.4』46〜51ページ掲載
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Photograph : Ryuta Arakaki (CASK) text : Tetsuo Shinoda


































































