本場フランスの味が堪能できる、まさに余裕のある大人の美食!
アルゼンチン出身のマウロ・コラグレコ氏が南仏マントンにオープンした〈ミラズール〉は、ミシュランガイドで三つ星を獲得し、“世界のベストレストラン50”で1位に輝く世界的なレストラン。レストランに隣接する自社農園ではビオディナミクスを実践しており、そこで育てられた食材をふんだんに用いた循環型ガストロノミーが高い評価を受けている。マウロ氏の謙虚で陽気な人柄も、ゲストを魅きつける原動力だ。
そのマウロ氏が2023年、日本に初めてオープンしたのが〈スィークル バイ マウロ・コラグレコ(CYCLE by Mauro Colagreco)〉。エグゼクティブシェフを務める宮本悠平氏は、〈ミラズール〉でスーシェフの重責を担ったマウロ氏の右腕。東京のホテルやフランス料理店で働いたのち、2016年にフランスへわたり、2019年に〈ミラズール〉へジョイン。ミシュランガイドでサービスアワードを受賞した安井理恵さんが総支配人を務めており、サービスチームにも精鋭が揃う。
ランチは3コース、ディナーは2コースが用意されており、日本料理のように季節によってメニューは少しずつ変わっていく。それはランチとディナーのどちらでも体験可能。今ならフランス語で“共生”を意味するコース“サンビオーズ(Symbiose)”(2万6400円)がおすすめ。タパス、料理5皿、デザート1皿、小菓子といった構成で、宮本氏のクリエーションを堪能できる。
[サンビオーズ]
Symbiose

根、葉、花、果。下写真右上から時計まわりに、菊の花のピクルスのタルト、海藻
“根、葉、花、果”は、4品で種のライフサイクルを表現した定番のタパス。“根”はポワロー葱を用いたタルトで、スモークしたニシンがポワロー葱の甘味を引き立てる。“葉”はタコが載せられた海藻のクラッカー。“花”は菊花のピクルスのタルトで、黄色と赤のコントラストが美しい。“果”は栗のフィナンシェで、“豊穣な収穫”を感じさせるような豊かな香り。
金木犀 / みかん / 帆立
仕上げにあざやかな色合いの“みかんのソース”をかけてもらえるのが、“金木犀 / みかん / 帆立”。帆立貝のフレッシュな滋味に、金木犀の郷愁感溢れる香りが思いのほか合う。イタリアの“リナ・メナルディ”の炻器が渋い風合いを醸しているのもまた美味しさを後押しする。
下仁田ネギ / 蕎麦 / 牡蠣
“下仁田ネギ / 蕎麦 / 牡蠣”は、甘い下仁田ネギとミネラルが豊富な牡蠣を取り合わせた意欲作。下仁田ネギの土の香りが、クリーミーな牡蠣の味わいとマッチ。上には、香りとテクスチャのアクセントになる蕎麦の実、エディブルフラワーとオキザリスの葉を添えて。
季節のキノコ / 落花生 / 仔豚
旬の恵みをふんだんに閉じ込めたのが、“季節のキノコ / 落花生 / 仔豚”。以前ゲストに提供したところ、好評だったので再登場となった人気の一皿。日によって仕入れが異なる茸を用いた一品で、この日はムキタケ、ヒラタケ、マイタケなど6種類の茸。千葉県の落花生“おおまさり”もよい甘味。上には黒トリュフとナスタチウムがあり、下には濃厚な卵黄と、香り高いヴァン・ジョーヌのソース。カリカリに仕上げた仔豚の脂が、塩味と旨味で味わいに骨格を与えている。
カリフラワー / バイ貝 / アンコウ
“カリフラワー / バイ貝 / アンコウ”は、アンコウとカリフラワーの取り合わせ。丁寧に火入れしたアンコウは、身が締まり、旨味が凝縮されていて乙な味わい。スライスしたフレッシュなカリフラワーとカリフラワークリームのほのかな甘味がいい。レモンピールがのせられ、アリッサムの花が可憐。
マルメロ / 薔薇 / 恵鴨
メインディッシュは、宮本氏が惚れこんだ“恵鴨(めぐみがも)”を主役にした“マルメロ / 薔薇 / 恵鴨”。愛知県で生産されているブランドの合鴨肉で、最小限のストレスで育てられているから、繊細で上品な食味になっている。恵鴨を薪焼きで丸ごと焼いてテーブルまで見せにきてくれる演出がいい。胸肉と腿肉をしっとりと仕上げ、食べ比べを楽しめる。西洋カリンとも呼ばれる“マルメロ”のあっさりとした甘味も鴨との相性抜群。
ヘーゼルナッツ / コーヒー / レモン
“ヘーゼルナッツ / コーヒー / レモン”は、ヘーゼルナッツのプラリネ、キャラメルアイス、マスカルポーネ

上:シックで豪華なワインセラー 下:料理がグッと引き立てられるペアリングのワイン
宮本氏の創造的な料理にぴたりと寄り添うワインペアリング(2万6400円)も体験したい。“アンリオ シャンパーニュ ブリュット・スーヴェラン”は、最初に提供されるシャンパーニュ。淡いレモンゴールドの色調で、ヘーゼルナッツの香り。厚みとエレガンスを両立しているから、4品のタパスのどれにもよく合う。
ゲヴュルツトラミネールを用いたイタリアの白ワインが“ケッレライ・カンティーナ・アンドリアン モヴァド ゲヴュルツトラミネール 2024”。冷涼感のある酸が全体を引き締めていて、牡蠣にもぴったり。
鴨との相性が抜群なのは、“シャトー・ベルフォン・ベルシエ サン=テミリオン・グラン・クリュ・クラッセ 2016”。メルロ主体の赤ワインで、豊かな果実味にきめ細やかなタンニンがある。
ジュラ地方の甘口ワイン、“ドメーヌ・ド・ラ・ボルド マックヴァン・デュ・ジュラ”は丸みのある甘味で余韻も長い。ヘーゼルナッツとの相性も完璧。もしもアルコールを控えているなら、ノンアルコールドリンクペアリング(1万3200円)が用意されているので、そちらをどうぞ。

温かみのあるウッディな店内は、リラックスして食事を楽しめる雰囲気。昼間は大きな窓から差し込む光で明るく爽やかに。個室もあり
ダイニングは優しい木目調の造りで、曲線的なデザインが心を和ませる。オープンキッチンになっていて、宮本氏をはじめとした料理人たちの華麗な手捌きも鑑賞できるのが嬉しい。個室も1部屋設けられているので、利用シーンは広がる。
ミシュランガイドで一つ星として掲載され続けている〈スィークル バイ マウロ・コラグレコ〉。宮本氏が紡ぐ、サステナビリティや自然を志向した、ほかにはない美食を堪能できるので、それも納得だ。
⚫︎スィークル バイ マウロ・コラグレコ(CYCLE by Mauro Colagreco)
住所:東京都千代田区大手町1-2-1 Otemachi One1F
営業時間:平日 17:00~23:00(20:00LO)/土曜・日祝日 11:30~15:00(13:00LO)、18:00~23:00(20:00LO)
定休日:月曜
TEL:03-6551-2885
URL:https://cyclerestaurant.com/
※サービス料別
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1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。













































































