夏がシーズンの野生の王国へ!【11選】
野生の動物たちにとって、夏は“命”の季節。太陽のエネルギーが地球へ、そして野生生物たちへ伝播し、眩しい夏に背中を押されたかのごとく、繁殖、出産、捕食、大移動など、命がけの行為に及ぶ。そんな夏に活発期を迎える世界の野生動物たちを見ていこう。
野生動物たちの大移動!
野生生物の生態を語るうえで欠かせないのが“大移動”。ケニアのマサイマラ国立保護区では毎年7〜9月頃、約200万頭ともいわれる数のヌーやシマウマがタンザニアのセレンゲティ国立公園方面からやってくる。実はこの時期、セレンゲティの草原地帯は乾期に入るため、野生生物たちは豊かな水と食料となる草原を求めてマサイマラへと北上。そして11月頃、セレンゲティは再び雨期を迎え緑に覆われるため、動物たちはマサイマラから南へと戻っていくのだ。
大移動を行うのは、陸の生き物だけではない。クジラは冬の間、暖かい海で出産や子育てをすることで知られ、数千㎞に及ぶ命の航海へと旅立つ。またフラミンゴのような渡り鳥たちも、冬が近づくとエサを確保するために南へ向かい、夏には日照時間の長い北へと向かう。夏は水温上昇や日照によって生命を育む一方で、地形や気象条件では乾期を引き起こし、野生動物を死へと追いやる。つまり、夏を求めて移動するものもいれば、夏から逃げるように移動するものもいる。いずれにしても夏、そして太陽のパワーには感嘆せざるを得ない。
ふとここで考える。実は私たち人間が夏にバカンスを取るのも、似たようなものなのかも!? ときに太陽の待つビーチへ、ときに避暑を目的に山岳リゾートへ。太陽とつきあいながら快適に生きる術を、私たちも本能的に実践しているようだ。
アメリカ
アラスカ州南部に位置するアレキサンダー諸島は、大小1000以上の島々からなり、海峡を形成。野生生物のメッカとして知られ、シャチ、アザラシ、オットセイなどが暮らす。7月はザトウクジラ(写真)が集まり、群れをなして獲物を捕食する様子を鑑賞するクルーズが人気。
ペルー
アマゾンのジャングル奥深くに位置する国立公園。現在日本で見られる鳥は約630種ほどだが、それを大きく上まわる約800から1000種が生息。土に含まれる塩分を求めて集まるコンゴウインコ(写真)などと出会え、多くの野鳥愛好家にとって憧れの存在だ。7、8月はマヌー川で水飲みする野生動物も観察できる。
エクアドル
形成されてから一度も大陸と陸続きになったことがない海洋島ガラパゴス。天敵となる大型哺乳類が存在しないため、固有の動植物の宝庫となっている。イグアナ(写真)やゾウガメ、ガラパゴスペンギン(写真)、アカメカモメなどが見どころ。6~11月頃が乾期で、水中の視界もよく、海洋生物の観察に最適。
メキシコ
ダイビングの父、ジャック=イヴ・クストーが“世界の水族館”と呼んだバハ・カリフォルニアの海。5~7月頃になると、マンタよりやや小さいイトマキエイ属のモブラ(写真)が数千匹の群れを成して出現。ちなみに2~4月頃にはシロナガスクジラやコククジラといった大物も姿を現す。
ケニア
野生の王国ケニアで随一の種類数と個体数を誇る国立保護区。ビッグ5(ライオン、ヒョウ、ゾウ、サイ、バッファロー)に加えて、チーターやキリンといった人気動物が勢揃いする。タンザニアのセレンゲティ国立公園と隣接しており、毎年7月頃になるとマラ川をわたってくるヌー(写真)やシマウマの大移動を目撃できる。
メキシコ
メキシコ本土とバハ・カリフォルニア半島に挟まれた細長い湾。ユネスコの世界自然遺産に2005年登録された。カリフォルニアアシカ(写真)の繁殖地でもあり、毎年5~8月頃になると海岸の岩場などでオス1匹がメス10数匹を率い、ハーレムを形成する姿が観察できる。
ケニア
“ケニアグレート・リフト・バレーの湖群の生態系”として世界遺産に登録された湖のひとつ。渡り鳥や大型の哺乳類など、豊かな生態系で知られ、世界のフラミンゴの個体数のうち75%がこの湖群に生息するといわれたことも。近年その数は減ってきているが、それでも7、8月頃にはナクル湖や、その北のボゴリア湖で大群が見られる。
日本
日本では北海道のみに生息しているエゾナキウサギ(写真)。体長は約10~20㎝ほどで、短い耳と丸くて小さい姿が特徴。冬眠せずに冬も岩穴で過ごすため、その間に食べる食料を8月末~9月頃に収穫して保存。植物を口にくわえ、せっせと巣穴へ戻る姿がかわいらしい。
2億年前のジュラ紀からほとんど姿を変えず、“生きた化石”ともいわれるカブトガニ(写真)。国内の繁殖地は山口県などの瀬戸内の数カ所から九州北部に限られており、干潟汚染などで個体数は減少している。毎年6~8月に産卵期を迎え、満潮時に波打ち際でつがいを作る。
旧首都ベリーズシティの沖合、サンゴ礁でできた小島“キー”のひとつ。1996年にマナティ(写真)の保護を目的とした野生生物保護区に指定され、水域内にボートでは入れるが、一緒に泳いだり触れたりは禁止。保護区周辺でも目撃され、3月から夏にかけて遭遇率が高くなる。
屋久島最大の砂浜、永田浜は世界有数のウミガメの産卵地として知られる。5~7月にかけて全長1mほどのアカウミガメ(写真)が一晩で20頭以上も上陸する姿は感動的。夜中に産んだ卵は2カ月ほどで孵化し、7~9月は子ガメが海へと帰っていく姿も見られる。
雑誌『Safari』9月号 P121〜126掲載
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