熱狂のバスケW杯で成長を遂げた長崎ヴェルカの【川真田紘也】! がむしゃらに掴んだ 自分の役割が飛躍の糧に!
FIBAワールドカップ2023では、貴重なインサイドの控えとして、日本代表のパリ五輪出場権獲得に貢献した川真田紘也。稀代のムードメイカーでもある日本屈指のビッグマンが、“自分が生きる道”を見つけた一戦を語る。
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- アスリートの分岐点! vol.50
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KOYA KAWAMATA
TURNING POINT
2023年7月22・23日
バスケットボール
男子日本代表
国際強化試合 2023 in 韓国
国籍選手に当たり負けしないフィジカルとハッスルプレイを誇るビッグマンとしてトム・ホーバス体制下の日本代表で頭角を現し、多くのファンの心を摑む選手となった川真田紘也。欧州チームから歴史的勝利をあげて日本を熱狂に包んだFIBAワールドカップ2023でもタフな合宿を乗り越えて最終メンバーに残り、さらなる成長のきっかけを摑んだ。
そんな川真田が分岐点として語ってくれた試合は、日本代表として2023年7月に出場した韓国戦。同年8月のワールドカップに向け、韓国に遠征して実施した国際強化試合だ。試合自体は2日間にわたって行われ、第1戦は韓国のハードディフェンスに苦しみ、序盤に許したリードを覆せずに69-76で敗戦。しかし翌日の第2戦では、85-80で接戦を制して第1戦の雪辱を果たした。
「僕の中では、この試合での結果があったからこそワールドカップのメンバーに残れたし、国内でも川真田紘也という存在が知れわたったのかなって思っています。それ以前も代表候補にはなっていましたが選考で落ちることが多かったので、代表のコートで自分がどうプレイをすればいいのか今ひとつわかっていなかった。そこからようやく代表として自分が生きる道が見えたというか、ひとつの正解を見つけられたのがこの試合。そこでやっと自分の立ち位置がわかりましたし、それまで泥臭くやって積み重ねてきたことが、やっと実を結んだのかなと感じました」
2連戦の中でも川真田の存在が際立ったのが、第2戦。スタッツとしては6得点、7リバウンド、2ブロック、1スティールという内容だが、身体を張ったインサイドでの攻防やスクリーンプレイといった数値に残らない部分で勝利に貢献した。圧巻だったのは、第2クォーター終了間際の活躍。12点差に広げたリードを3点差まで迫られた局面で、原 修太の3Pシュートに続く形で、川真田がパスカットからのスラムダンクを豪快に叩き込んで見せた。この得点でハーフタイムを48-40で迎え、勝負の第4クォーターでは韓国が堅いゾーン・ディフェンスを敷いたこともあって日本の3Pシュートでの得点が止まってしまったが、比江島慎や吉井裕鷹が渾身のプレイで追加点を奪ってからの川真田のリバウンド争いでリードを保ち、勝利を得た。
「自分から生み出したプレイではなく、まわりの人からこうしたほうがいいといわれたプレイをしていると、やっぱり自分で見つけたものではないのでどうしてもがっちりハマった感じがしない。そういう感覚がずっとあった中で、この試合ではなぜか急に自分はこうすればいいんだって思うプレイが出てくるようになった。自分の中で歯車ががっちりハマったというか、どう戦えばいいのかがクリアになったし、自分のプレイを理解できたことによって心にも余裕が生まれた。ダンクを決められたのも、そんな余裕からまわりがよく見えるようになった部分が大きかったのかもしれません。加えて、そこからBリーグでも自分がやるべきプレイを見つけられた感覚があったので、その部分でも非常に大きな出来事でした」
代表活動で自分のプレイに確信を得た川真田は、2023-24シーズンの滋賀レイクスのB2優勝とB1昇格に貢献。契約満了を経て、今シーズンは新天地・長崎ヴェルカで新たな戦いに挑む。
「正直、移籍に関しては結構悩みました。滋賀で3年間お世話になって、代表経験も積ませてもらったことで成長できた部分が大きいので、滋賀に残る選択肢もありました。ただ、一方で、自分をさらに成長させたい思いも強く、3年いたからこそ違う環境でバスケットボールに触れたい気持ちもあり、新しいヘッドコーチのもとで戦う長崎ヴェルカで、挑戦という気持ちを込めて戦う道を選びました。Bリーグの日本人ビッグマンって正直、結構キツいポジションだと思うんです。試合では、当たり前のように対戦相手の外国籍の選手とやり合うことになりますので。ただ僕としてはそうした中でも、日本人ビッグマンもパワーや気持ちの部分ではもっとできるんだということを、後の世代にも伝えられる存在になりたい。僕自身は、最年長ビッグマンの竹内公輔さんと譲次さんの竹内兄弟などが築いてきた道を追いかけながら走っているイメージなのですが、その道を次の世代に繋いでいきたい。そのためには今持っている武器をレベルアップさせなければならないし、なによりも僕自身がもっとバスケットボールを楽しむ姿を見てもらうことが大切なんだと思っています」
©アフロ
バスケットボール選手
川真田紘也
KOYA KAWAMATA
1998年、徳島県生まれ。天理大学から佐賀バルーナーズを経て、2021-22シーズンに滋賀レイクスに移籍。同シーズンに日本代表に選出され、FIBAワールドカップ2023での勝利とパリオリンピック出場権獲得に貢献。2024-25シーズンは、新天地・長崎ヴェルカで戦う。
TAMURA’S NEW WORK
森永製菓インゼリー
世界で活躍するアスリートの栄養管理やトレーニングまでをサポートしている“森永製菓インゼリー”とのコラボ企画。本作では、男子3000m障害の三浦龍司、男子テニスシングルスの錦織圭 、バドミントン混合ダブルスの渡辺勇大、東野有紗ペア、女子やり投げの北口榛花、男子110mハードルの村竹ラシッドを描いた。
世界と戦うヒーローを描いた作品
女子やり投げで悲願の金メダルを獲得した北口榛花を筆頭に、パリオリンピックで熱い戦いを繰り広げたオリンピアンたちを描いた作品。これは、9月17日付の朝日新聞に掲載された“森永製菓インゼリー”の広告ビジュアルだ。
「“森永製菓インゼリー”とは、“前に進む人たちを応援したい”という共通の思いがきっかけで2021年にコラボレーションが実現し、今年で4年めを迎えました。僕にとって世界で戦うアスリートは、ヒーローのような存在。ここに登場していない選手も含め、すべての選手が英雄だと思って描かせていただいています。4年の月日が流れる中で、描くアスリートも変わり、主役が移り変わる競技もあります。そうした中で、表舞台に立ち続けることの尊さを感じると同時に、僕自身もアーティストとして活動できることが当たり前ではないということに気づき、もっと頑張ろうと奮い立たせていただいているプロジェクトでもあります」
アーティスト
田村 大
DAI TAMURA
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは10万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。Instagram:@dai.tamura
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雑誌『Safari』12月号 P230〜232掲載
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illustration : Dai Tamura composition&text : Takumi Endo
photo by AFLO