眼精疲労は仕事はもちろん、日常生活においてスマホやパソコンの操作が増えた現代の大人に多い悩み。睡眠障害の原因や、重度の眼精疲労は集中力が落ちることで、パフォーマンスの低下も引き起こされる。
とはいえ、スマホやパソコンを使わずに仕事や生活をすることは現実的ではない。そこで、大切な目を守って日々を気持ちよく送るために、眼精疲労の仕組みと原因、対策法をご紹介。
【眼精疲労とは】
眼精疲労とは、眼を使う仕事を続けることにより、眼痛・眼のかすみ・まぶしさ・充血などの目の症状や、頭痛・肩こり・吐き気などの症状が出て、休息や睡眠をとっても十分に回復しない状態のことを指す。
つまり慢性的に起こる症状であるため、回復する際もすぐに症状が改善していくわけではなく、原因と思われるポイントを1つずつ改善し、徐々に回復傾向に向かっていく形となる。
まずは、目が疲れて眼精疲労にいたるまでの一連の流れとメカニズムを解説していこう。これを読めば、実際に行う対策に関しても、どのようにポジティブな影響に繋がるのかを理解できるので、よりモチベーションを保って実施しやすくなるだろう。
【目の疲れ・眼精疲労のメカニズム(なぜ起こるのか?)】
眼精疲労は、目の毛様体筋に過度な負担がかかることでピントが合わせにくくなった状態。眼球の周りと、眼球内部の筋肉に負担がかかりすぎているといえるだろう。
また、神経は、脳・脊髄などの中枢神経と、カラダ全体に広がる末梢神経に分けられるが、視神経は末梢神経に分類される。
外部から末梢神経に入る情報のうち、実に80%をも占めているのが目から入る情報であることからも、目には末梢神経が集中していることがわかる。
目の酷使とは別の疾患を抱えていて、眼精疲労を起こし易くなっている場合も考えられるので、原因別の対策に関しては、後述する。
【眼精疲労の症状】
眼精疲労の主な症状についてここで見ていきたいと思う。人によっては全部あてはまるほどの辛い状態の方もいるのではないだろうか。
目が重いなどの疲れ
眼精疲労を抱えているワーカーのほとんどが訴えるのがこの目が重いという症状である。
先ほど取り上げた毛様体筋の緊張が高まった状態が続いて、毛様体筋を制御している自律神経の機能が乱れると「目が重い」という感覚として現れる。
以下の4つの症状も同時に起こりやすいので、チェックしていただきたい。
まぶたがピクピクする
まぶたがピクピクと痙攣している状態のことを『眼瞼(がんけん)ミオキニア』と呼ぶ。まぶたにある眼輪筋という筋肉が意思によらずに、攣った(つった)ように収縮している状態である。
通常は片側のみに起こり、睡眠不足、肉体的精神的疲労、ストレスなどによって起きるものと考えられている。数分から数時間で自然に解消することが多く、休息したり、睡眠を取ったりすることにより改善する。
肩こりや首こりも併発
眼精疲労を感じている方の多くは肩こりを抱えていると言われている。眼精疲労は、放っておくと、肩こりの他にも、頭痛、吐き気等深刻な症状に発展する場合もある。一見するとあまり関係ないようにも思えるが、実は眼精疲労の症状だということも少なくない。
頭痛
眼精疲労が頭痛の原因となることがある。眼の不調が肩こりや慢性疲労につながり、その心身のストレスから片頭痛や緊張型頭痛になると考えられている。
吐き気
眼精疲労が進行すると、めまいや吐き気などの症状を引き起こす場合がある。これは、目を酷使することによって全身の筋肉まで緊張してしまう為である。ひどい場合には、嘔吐が出現する場合もある。
【眼精疲労の原因】
白内障
白内障は、水晶体が濁る病気で、そのために視力の低下を伴ったり、まぶしさを感じたりして眼精疲労の原因となることがある。また、白内障は手術で治せるものの、術後に少し見え方が変わったりしてそれによって眼精疲労を引き起こすこともある。
緑内障
緑内障は、視野が狭まって視機能が低下するため、眼精疲労を引き起こすことがある。また、眼圧の上昇に伴って眼精疲労が起こることもある。緑内障の初期や中期の段階において、軽い視野障害がある場合、見えにくい状態で無理に対象物を見る状態が長時間続いたりすることによって強い眼精疲労を訴えるケースがある。
眼瞼下垂(がんけんかすい)
眼瞼下垂とは、上まぶたが下がった状態のことで、正面から見たときに上のまぶたが瞳孔にかかる位まで下がっていれば、眼瞼下垂と診断される。
まぶたが開きにくくなるため、無意識にまぶたを開こうとして力が入ったり、上目遣いになったりして負担がかかり、眼精疲労を引き起こすことがある。
ドライアイ
近年ドライアイは急速に増えている。スマートフォンなどのモニターに使われている“ブルーライト”は、目に見える光の中で最も強く、長時間使用するとドライアイなどの眼の疾患を招きやすい。
近視や乱視などの屈折異常
近視や乱視などの屈折異常が原因で起こる。遠視や老眼などの場合も同様で、いずれも像にピントがあっていないため、無意識に調節して見ようとした結果眼に過度な負荷がかかって疲労が発生する。近視の場合は、使用している眼鏡の度数が強すぎるために、近くを見ていると疲労を自覚することがある。
糖尿病などの疾患
糖尿病の合併症のひとつとして、目の網膜に起きる糖尿病網膜症という障害がある。
高血糖の状態が長く持続することで目の網膜に広がっている毛細血管がダメージを受け、視機能に影響がでる。当然ではあるが、見えにくい状態で過ごすことになり、眼精疲労にもつながる。
【眼精疲労の治し方や対策】
白内障などの治療
白内障の治療は、病状の進行段階によって異なり、症状が軽度であれば、点眼治療や内服薬による治療が行われる。薬剤の使用は症状の進行を抑えることが目的であり、進行が進んでいる場合には濁った水晶体を人工レンズに差し替える手術を受けることが必要となる。
いずれにしても適切な治療を受けることによって日常生活における目の過負荷を避けることができる。
点眼などの薬物療法
緑内障の場合には、点眼治療が最も重要な治療法となる。
エアコンや空調の風を避ける
エアコンの風が直接目に当たると、目が乾燥してドライアイを引き起こし、眼精疲労の原因となる。室内の乾燥もできるだけ避け、湿度が50~60%はキープするようにしたいものだ。
メガネなどの度数を調整する
近視や乱視などの屈折異常に対して適切な“矯正”ができておらず、度数の合わない眼鏡やコンタクトを使用していたり、遠視や老眼があるにも関わらず矯正をせずに普段の生活を送っている場合など、眼精疲労を引き起こしやすい。
よくあるのが、近視で度数の強い眼鏡やコンタクトを使用している場合だ。デスクワークの際には度数の弱い眼鏡を使用するのが推奨される。
ブルーライトカットの眼鏡を使用
ブルーライトとは、可視光の中でも最も波長が短く高いエネルギーを持っている光であり、デスクワーク中には、これらを浴びて作業することになる。発生源から適切な距離を取ることで浴びるブルーライトの量を減らすことができるため、パソコンであればモニターから40~50㎝、スマートフォンなら30㎝は離れるようにしたい。
また、当然であるが、仕事以外での長時間のパソコンやスマートフォンの使用は避けるのが賢命である。
疲れ目に良いとされるビタミンを摂取
眼精疲労によいとされるビタミンは、主にビタミンB群とビタミンEである。ビタミンB群は目の粘膜や末梢神経を正常に保つ役割がある。一方ビタミンEは抗酸化作用によって神経を保護して血行を促すことで筋肉の疲労回復を促進する。食事によってこれらを充足できていない時には、市販のビタミン剤等を用いて補うのもいいだろう。
目の周りの筋肉をほぐす
特にほぐすべき筋肉は、『眼輪筋(がんりんきん)』と『皺眉筋(しゅうびきん)』の2つで、どちらもまぶたの開閉をサポートする筋肉である。『見る』ということをしている時にはどちらも常に緊張状態にあるといえる。実際のストレッチ方法は、次の項で説明していく。
【オフィスでもできる眼精疲労を和らげるストレッチ】
眼輪筋のストレッチ
1.目を閉じて、両手の人差し指と中指を使って眼輪筋の下側半分をゆっくりなぞるように伸ばす
2.同様に眼輪筋の上側半分を親指を使ってゆっくりなぞるように伸ばす
皺眉筋のストレッチ
目を閉じて、人差し指と親指で眉間をつまむようにして小さな円を描くようにまわす
眼球ストレッチ
1.右手を頭に添えて右側に倒し、両目を強く閉じる
2.頭はそのままの位置で保ちながら、目を開けると同時に上を見る
3.再度目を強く閉じ、次は目を開けて左横
4.その後は閉じる、下、閉じる、右横というように目を開けるたびに視線の方向を変えていく
5.3周ほど繰り返した後、左側も同様に行う。
【まとめ】
ここまで、眼精疲労について述べてきた。たかが眼の疲れだとか、デスクワーカーには避けられないものだという風に考えてしまうのではなく、1つ1つ原因と考えられることを潰していくことで、眼と身体の健康を保てるようにできるだろう。
【著者:吉田怜司】
品川区を拠点に活動するパーソナルトレーナー。トレーナー歴10年。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士前期課程修了。修士(スポーツ健康科学)。資格/NSCA CSCS( 認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
●こちらの記事もオススメ!
Vol.1 自宅でできる猫背矯正ストレッチ方法!
Vol.2 簡単にできる腰痛ストレッチの方法!
Vol.3 オフィスワーカー必見!肩こり予防のためのストレッチ