Safari Online

SEARCH

GOURMET グルメ

2024.09.03

Gastronomic City Taipei*
この料理を食べるために台北に飛ぶ価値のあるレストラン。

台北の〈ロジー(logy)〉は日本人シェフの田原諒悟が2018年にオープンさせた。“アジアンコンテンポラリー”という新たな料理ジャンルを創造し、いまやアジアを代表する人気店となった。その代表作を中心にリポートする。

“台湾茶碗蒸し”。左下の茶碗蒸しは、牛ベースのコンソメに少しの醤油を加えて作ったフラン。その上にノコギリガザミ(亜熱帯域のカニ)とクコの実のサラダを乗せ、仕上げに台湾当帰のアイスクリームを添え、熱々の干しイカのコンソメスープを注いで仕上げる

私が死ぬ直前になって、今まで食べた中で記憶に残る料理を挙げよと、もし問われたら間違いなくそのひとつに数えることだろう。台北のレストラン〈ロジー〉のスペシャリテ“台湾茶碗蒸し”である。

私がこの料理をはじめて食したのは、〈ロジー〉が台北にオープンした2018年11月の少し後だと思う。そのときの五感の衝撃は今でも脳裏に強烈に焼きついている。見た目は文字どおり、手のひらサイズの器に入った茶碗蒸しであり、フランの部分の食感も茶碗蒸しの口溶け感であるが、器の中に構成された素材を混ぜて食べると、今まで経験したことのない風味が爆発する。

この料理のキモは、温かなフランの上に、食す直前に添えられる緑色のアイスクリームにある。これは、台湾当帰(トウキ)というセリ科のハーブにある。当帰は中国では古くから漢方に使われる薬用植物で、その根はヒトの延髄中枢を刺激し血液循環を高める作用がある。そして、素晴らしい香味があるのだ。その香味に近い根セロリと合わせたアイスクリームの上から、熱々の干しイカのコンソメを注いで、口腔内で温・冷のコントラストを楽しむという、大人の憎い趣向である。楽しいだけでなく、五感の記憶に忍び込む悪魔的な美味しさだった。

〈ロジー〉の田原諒悟シェフは、自身が台湾で感じた情景や文化を、料理の風味や味わい、色合いやデザインで総合的に表現するという。まさにその白眉がこの料理である。料理に名作という表現が適切かどうかわからないが、そういうたぐいのひと皿なのだと思う。実際に〈ロジー〉はオープン翌年の2019年の『ミシュランガイド台北』で1つ星、2020年からは2つ星を獲得し、『アジアのベストレストラン50』の2024年では22位を獲得した。いまやアジアを代表するレストランとして期待を集めている。田原シェフは、北海道出身。イタリア料理でキャリアをスタートさせ、渡伊して本格的な修業も積む。帰国後はフランス料理〈フロリレージュ〉の川手寛康シェフの下でスーシェフを務めた後に、台北に同店をオープンさせた。

イタリア料理とフランス料理を極めた日本人シェフが台北で作るこの料理を田原シェフ自身は“アジアンコンテンポラリー”という。料理界に新たな世界観を生み出したことも特筆に価するだろう。〈ロジー〉ではコース仕立てで、この唯一無二の世界を表現する。台北に飛んでも食べる価値のあるレストランだ。

田原諒悟シェフはいまやアジアを代表するシェフのひとり



店内はカウンターを中心にしたモダンなデザイン

“台湾産鳩/皮蛋/紹興酒と青花椒のソース”。鳩は、中はしっとり外側はカリッと飴色に焼き上げる。その鳩の出汁を使ったソースが絶妙な風味



中村孝則 美食評論家
1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より『世界ベストレストラン50』の日本評議委員長も務める。'22年春、JR九州が運行する「ななつ星in九州」の車内誌の編集長に就任。

 
Information

●logy[ ロジー ]
住所:A1F., No.6, Ln. 109, Sec. 1,Anhe Rd., Daan Dist.,Taipei City 106, Taiwan
TEL:非公開
URL:https://logy.tw/(予約はHPより)

『Urban Safari』Vol.41 P34掲載

●雑誌・WEB『Safari』の公式TikTokは

こちらからアクセスしてみて!

取材・文=中村孝則
〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。
SPONSORED
2025.06.27

〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。
復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。

〈オメガ〉を象徴するコレクションとして、1957年に創設された“プロフェッショナルライン”3部作。その中でも“レイルマスター”は、鉄道職員や電気技師といった強い電磁場が発生する場所で作業する人々を耐磁性の高さで支えた名作。そして、“シーマ…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。大人の休日にはシックなダイバーズを。
SPONSORED
2025.06.27

〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。
大人の休日にはシックなダイバーズを。

時計の人気トレンドにヴィンテージスタイルがある。1953年に誕生し、基本デザインを継承する“フィフティ ファゾムス”もそのひとつかもしれない。だがそこに懐古趣味はなく、常に新鮮な魅力を感じさせる。機能美という不変の価値があるからだろう。新…

TAGS:   Urban Safari Watches
リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。
SPONSORED
2025.06.27

リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。
端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。

クルマやカメラなどドイツの工業製品の高い機能と品質は世界的に知られる。時計も例外ではない。〈グラスヒュッテ・オリジナル〉はその代表格だ。クラシカルなスタイルに決して派手さはない。だが漂う気品は、伝統に培われた揺らがぬ時計作りの哲学と美学を…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。
SPONSORED
2025.06.27

〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。
タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。

歴史に裏打ちされた信頼性と機能。そして、存在感を放ちながら、品を保つデザイン性。そのすべてを兼ね備えた〈パネライ〉の“ルミノール マリーナ”は、知性と余裕をまとう大人にふさわしい腕時計だ。その傑作コレクションが今年、大胆な進化を遂げたとい…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!
SPONSORED
2025.06.25

〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!
“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!

煌めく太陽に、白い砂浜、青い海。夏のビーチ遊びの季節がやってくる! ラフなビーチコーデの手元だって、やっぱり快適さを求めておきたい。そんな海遊びにはラバーストラップのダイバーズ時計が最適だ。そこでプッシュしておきたいのが〈エドックス〉の日…

TAGS:   Fashion Watches
〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!
SPONSORED
2025.06.25

〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!
沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!

〈ザ・ブセナテラス〉は、日々の疲れを癒し、日常では味わえない贅沢な時間を過ごせる。充実したホテルの設備・サービス、海に面した立地を生かしたマリンアクティビティプログラム。ここは1泊2日くらいでは気づけない、魅力を秘めている。パートナーとと…

TAGS:   Stay&Travel
これでライフスタイルが見違える!新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!
SPONSORED
2025.06.25

これでライフスタイルが見違える!
新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!

いよいよ待ちに待った夏。バカンスを楽しみにしている人も多いだろう。たとえ予定がなくても、気温の上昇とともに気分をぐっと上げていきたい。そんなときに必要なのが、ライフスタイルをアップデイトするためのアイテムだ。これさえあれば、いつもとはひと…

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!
SPONSORED
2025.06.23

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!
夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!

夏がやってくると気分も開放的になり、休日はお出かけモードに。街にショッピングに行くのもいいし、たまにはアウトドアで自然の中に身を置くのも気持ちよさそうだ。もちろん、ご近所を散歩する程度で、家でゆっくり過ごすというのも幸せ。で、そのどんなシ…

TAGS:   Fashion
〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!
SPONSORED
2025.06.20

〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!
サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!

マニュファクチュール=自社一貫生産体制を2世紀以上も貫き続けるスイス、ラ・ショー・ド・フォンの名門時計ブランド〈ジラール・ペルゴ〉。そのコレクションはどれもクラシカルかつドレッシーで気品に満ちたもの。そんなイメージを、文字どおりあざやかに…

TAGS:   Fashion Watches

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ