〈中村玄〉の“汁なし火鍋”
〈ザ・ペニンシュラ東京〉の〈ヘイフンテラス〉で7年にわたり、腕を磨いた髙木祐輔シェフ。国内最大級の料理コンペティション“RED U-35”で入賞経験もある若手シェフの注目株が秘かに足を運ぶ店、尊敬する料理人とその一皿を紹介。
- SERIES:
- 注目シェフが教える感動の「名店メニュー」 vol.31
汁なし火鍋 麻辣香鍋(マー ラー シャン グォ)
(2600円~)
20種以上の野菜がセットになった“鍋底”をベースに、好みの肉や魚介をプラスするシステム。写真の一例は、鶏モモ、豚バラ、ソフトシェル(各800円)を加えたもので、2~3人で楽しめる量。辛さは4段階から選べる
〈レカマヤジフ〉髙木祐輔シェフ中華×スパイスのイノベーティブ
カレーを分解・再構築した前菜にはじまり、中華の一品、スペシャリテの馬告(マー ガオ)キーマと続く夜のコースで、中国料理のイノベーションとスパイスの可能性を表現。ランチは、キノコや貝柱などの出汁を使った新しいカレーを提供する。古民家を改装したしつらえも魅力。
住所:東京都目黒区五本木1-6-3 営業時間:11:30~14:00LO、17:30~21:30 定休日:月曜、隔週火曜 TEL:03-3793-5181
丁寧で正確、確かな技術が作る美味しさ
料理人修業をはじめてしばらくは「外食といえば中国料理だった」という髙木シェフ。2019年に料理コンペティションへ参戦し、異ジャンルのシェフたちとの親交が生まれ、視野も広がった。今は「和食、フレンチ、イノベーティブと、いろんな店に行くようになりました」と、話す。
様々な刺激が、“中華×スパイス”という新しい表現を磨いているが、自身のキャリアも店の料理も、ベースは中華。そんな髙木シェフが、尊敬する中華のシェフの1人が那須雄太シェフだ。
「修業時代、那須シェフが働いていらした店で研修をさせていただいた。仕事の速さ、正確さ、美しさ。目標にしたい」
料理長就任の知らせを聞いて、新天地〈中村玄〉にも足を運んだという。
「汁なし火鍋は、辛さだけでなく、香り、出汁や素材の旨味など複雑さのある一品。知られざる郷土料理を親しみやすい形で伝えている点も、すごいと感じました」
全工程を的確に積み重ねて仕上げる味
広東料理を軸に、数々の繁盛店で腕を振るってきた那須シェフ。看板料理の“汁なし火鍋”について、「もともとは四川省の家庭料理で、北京で人気に火がついた」と、その背景を語る。
朝天辣椒の量で辛さを選べるが、「なにを食べているかわからないような激辛料理にはしたくない」と、那須シェフ。野菜はひとつひとつ丁寧に素揚げし、旨味を凝縮させ、ベースの自家製ダレに、オイスターソースや紹興酒、鶏スープをバランスよく加え、味を組み立てる。
「加える肉や魚介で味が変わるので、多くの方がリピートしてくださる。日本ではあまり紹介されていないこの鍋を通じて、中華の魅力を知っていただけたら」
鍋以外に、店でイチから作る点心や前菜も種類豊富で、飲んでつまんで、鍋でシメるのが定番の楽しみ方とか。
「今後は季節替わりのメニューで、旬の食材を使った広東料理の一品も少しずつ紹介していけたらと考えています」
Check1 素材を素揚げする野菜や肉、魚介を油でさっと素揚げすることで、タレの味が絡みやすくなる。それぞれの素材の火の通りやすさを考慮し、段階的に揚げ鍋に投入して丁寧に味の土台を作っていく
Check2 強火で一気に火入れ仕上げは強火で一気に。にんにくベースのタレと朝天辣椒のほか、オイスターソース、中国醤油、紹興酒、鶏出汁などをしっかり馴染ませ、辛さと旨味を併せ持つ味を完成させる
中村玄
看板料理は、訪れるゲストの9割がオーダーするという汁なし火鍋“麻辣香鍋”。四川の唐辛子・朝天辣椒(チョウテンラージャオ)をふんだんに使った、痺れる辛さがインパクト抜群。いろいろな野菜がたっぷり取れるので、辛いもの好きからヘルシー派までファンも幅広い。2018年から料理長を務める那須雄太シェフは、広東料理を軸に渋谷や銀座の有名店で活躍したベテラン。よだれ鶏やエビのチリソース炒めなどの定番の味を磨きつつ、点心や旬の素材を使った広東料理の一品も加え、店の味をアップデイトしている。
店内は黄色と赤が基調。1997年に創業し、2011年から中国料理店に
“羊肉とパクチーのピリ辛焼売”(4個)1000円。好みで黒酢をつけて
薬膳高麗人参酒など、自家製漬け込み酒やそのカクテルも揃う
那須シェフ
●中村玄
住所:東京都渋谷区恵比寿南1-18-11 西田ビル201
営業時間:17:00~21:30LO、土・日・祝16:00~21:00LO
定休日:月曜、第3火曜
TEL:03-3711-5897
雑誌『Safari』10月号 P190~191掲載
“名店メニュー”の記事をもっと読みたい人はコチラ!
photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki