〈モノリス〉の“パテ・アン・クルート”
青山一丁目の炭火焼き料理の店〈ザ・バーン〉を率いる米澤文雄シェフ。ニューヨークの三ツ星店で活躍した経験を持ち、2019年にはヴィーガン料理の本を出版して、そのシーンを牽引するなど、多方面で活躍するトップシェフが、リスペクトする一皿とは?
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- 注目シェフが教える感動の「名店メニュー」 vol.26
パテ・アン・クルート
(5000円~のコースより)
サクッと香ばしいパイ生地はバターがかぐわしく、肉のパテはしっとりとして口当たりがなめらか。贅沢な素材の味と食感が、重層的な旨味を生み出す。フレッシュな野菜とヴィネグレットの酸味で、キレと軽やかさを添えて
テイクアウトもできる!
装飾も見事“パテ・アン・クルート・オバール”はテイクアウト、通販限定。要予約で現在約3週間待ち。7000円
〈ザ・バーン〉米澤文雄シェフ熟成肉や有機野菜をシンプルな炭火焼きで
国産牛の熟成肉や有機野菜などを炭火で豪快に焼き、シンプルに提供するモダンダイニング。オープンキッチンはライブ感にあふれ、ニューヨークスタイルのバーも併設。ヴィーガンコースあり、ランチはカジュアルなバーガーメニューありと使い勝手も抜群。
住所:東京都港区北青山1-2-3 青山ビルヂングB1 営業時間:11:30~14:00L.O、17:30~22:00L.O(日曜~21:00L.O) 定休日:月曜 TEL:03-6812-9390
学びたい伝えたい大切な味
数年前まで、料理コンクールをきっかけに出会った同世代のシェフ4人で、定期的にレストランに食事に出かけていたという米澤シェフ。
「フランス料理人が2人に、中華のシェフが1人と僕の4人。それぞれ着眼点も違って、すごく勉強になるんですよね」
今は同じメンバーと定期的にとはいかなくなったが、やはりレストランに行けば、常に学びがあるという。そんな米澤シェフが「忘れがたい一品」と話すのが〈モノリス〉のパテ・アン・クルート。
「お店にお邪魔したのは3年ほど前なのですが、昨年、小さな型で焼く“パテ・アン・クルート・オバール”をテイクアウト販売されているのを知って。シェフ同士の小さな集まりに持って行ったところ、その場にいた全員が大絶賛でした」
あまりに感動し、即リピートしたそう。
「高い技術力と丁寧な仕事、膨大な手間暇。どれひとつ欠けても完成しない。尊敬の念を抱かずにいられません」
作るたびに発見があり味が深まる
石井シェフがパテ・アン・クルートを作りはじめたのは、約3年前。
「パイ生地を練り、ファルス(肉のパテ部分)を作り、型詰め、焼成と、完成まで5日間を要する。誰もができる料理ではないけれど、フランス料理の粋が詰まった一品に挑戦したくなったんです」
世界選手権があるほど、高い技術力を必要とする一品。その難しさは、生地と肉の火入れにあるという。
「生地はザクッと香ばしく、中の肉はしっとりロゼ色に。生地は生焼けでは食べられないし、火が入りすぎてパサついた肉では美味しくない。別々のゴールを、同時にピークで仕上げなければならない」
大変な手間がかかるが、現在は週に1回のペースで焼いているのだという。理由は、作るたびに新しい発見があり、完成形が少しずつ理想に近づくから。
「お持ち帰り用のオバールは、より難易度が高い。でも、こういう料理があることを知っていただけたら嬉しいですね」
Check1 贅沢な素材をふんだんに豚肩ロースと背脂に加え、ホロホロ鶏やフォアグラ、鴨を贅沢に使用。食感と風味の層が、旨味を一層深くする。ホロホロ鶏とフォアグラはフランス産、鴨も国産の上質なものを厳選
Check2 2㎏の型でじっくり焼成テリーヌ型(手前)は二代め。以前使用していたものの倍の大きさの2㎏サイズ。型が大きいほど、じっくりと火入れができる。小型のオバール型とともに、フランスで調達
cuisine FrançaiseMONOLITH
2020年に10周年を迎えた〈モノリス〉。フランスでの修業経験も豊かで、都内の有名店で料理長を務めた石井剛シェフが営む全18席のフランス料理店だ。石井シェフは、権威ある料理コンクールでの受賞歴も多数あり、レストランを舞台にしたドラマの監修を手掛けるなど、日本のフランス料理界を牽引するシェフの1人。シェフのスペシャリテとして人気を博する“パテ・アン・クルート”をはじめ、フランスの食文化と伝統的な調理技法を伝える料理で構成するコースは、多くの食通たちから支持されている。
モダンでシックなしつらえ
卵の殻の中に泡状のスクランブルエッグを詰めた“モノリスエッグ”。アミューズとしてすべてのコースで供される
石井シェフ
サービスを仕切る松本有佑子ソムリエール
●モノリス
住所:東京都渋谷区渋谷2-6-1
営業時間:16:00~22:00L.O(コース18:00~)
定休日:月曜(祝日の場合は翌火曜)
TEL:03-6427-3580
雑誌『Safari』5月号 P214~215掲載
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photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki