〈ドン ブラボー〉の“窯焼きピザ”
今月は北参道の人気フレンチ〈シンシア〉石井真介シェフのおすすめをご紹介。日本のガストロノミー界をリードし続けるフレンチのトップシェフが、家族と過ごす大切な時間に足を運ぶ1軒、そこで「外せない」と話す一品は。
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- 注目シェフが教える感動の「名店メニュー」 vol.06
マルゲリータ(コースの一品)
窯焼きながらシンプル、ガツン系のナポリピザとは一線を画す。小麦粉はもちろん、こねる水までひと手間かけ、旨みに重層感のある味わいに。ディナー7000円、1万円のコースの一品。ランチセット1100円でも選択できる
オススメしてくれたのはこの人!
〈シンシア〉石井真介シェフ
臨場感と遊び心のあるクラシックなフレンチ
“予約の取れないフレンチ”として一世を風靡した〈レストラン バカール〉を経て2016年にオープンした〈シンシア〉。パイ包み焼きを再構築したたい焼きなど、遊び心がありつつ、フレンチの古典に軸足を置いた料理に定評がある。キッチンはフルオープンでライブ感も格別。
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-7-13 B1
営業時間:18:00~21:00(L.O)※ランチは別店名〈シンシアプラス〉で営業
休日:日曜、第1・第3・第5月曜
TEL: 03-6804-2006
石井シェフ
シンプルさと繊細さの好バランス
貴重なオフの外食は“勉強のため”がほとんどという石井シェフが、休日に訪れるのが〈ドン ブラボー〉。「料理人仲間から評判を聞いて伺ったのが最初で、自宅から近く子連れOKなので通うようになり、毎回満足度の高さ、創意に唸らされます」
イチオシは窯焼きピザ、マルゲリータ。「直球で旨いけれど、シンプルなだけじゃない。子供も喜んで食べますが、生地やソースのバランスは秀逸で、複雑さや深みもある。ワインが進むピザです」
そんなピザやパスタなど、親しみやすい定番メニューをきちんと押さえながら、ガストロノミックな料理が楽しめるのも特筆すべき点なのだとか。
「旬の食材がちゃんと生かされていて、仕立てはきちんとしたベースの上に気のきいた遊びがある。オープンな人柄でサービス精神も旺盛、かつ常に攻めの姿勢を忘れない平シェフのパーソナリティからも刺激を受けています」
平シェフ
わかりやすい美味しさとは別の味を追求
窯焼きゆえ、「なんちゃってナポリピザです」と冗談をいうが、〈ドン ブラボー〉のピザはいい意味で全くの別もの。「伝統的なナポリピザは、がつっと塩の効いた生地にフレッシュなトマトソースと、明解かつシンプルな美味しさが魅力ですが、僕は異なるアプローチで生地から考えました」と話す。
「全粒粉を自家製タマネギ水で捏ね、さらに那須高原の牧場から取り寄せるホエーを加えて生地を作ります。発酵は、自家製のヨーグルト酵母で。生地の旨みに奥行きが出て、フレッシュさより凝縮感やコクを感じるソースと引き立て合う。塩味だけではなく、生地とソースの旨みがバランスよく調和した、料理のようなピザを目指しているんです」
イタリア料理をベースにしながら、伝統に縛られず、一歩先の「美味しい」を目指す平シェフの料理人哲学を象徴するかのようなひと皿。造りのいいワインとマリアージュする大人のピザだ。
Check1 発酵タマネギ水
イタリア料理の味の土台になるソフリット(タマネギ、人参、セロリなどの野菜を炒めたもの)的発想で作った自家製の発酵タマネギ水。これを混ぜることによって旨みが増す
Check2 自家製酵母の生地
小麦粉はおよそ2週間に一度のペースで届く、挽きたての全粒粉を使用。フレッシュで風味がしっかりしていて、焼くと香ばしさが際立つ。自家製ヨーグルト酵母で約48時間発酵
Don Bravo[ドン ブラボー]
看板商品はオーダー後に生地をのばし、薪窯で焼き上げるピザ。が、店はピッツェリアでもトラットリアでもなく、ガストロノミックな料理を出すレストランである。オーナーの平雅一シェフは、国内の有名イタリア料理店、イタリアの星付き店で修業した経験を持つが、「イタリアそのまま」ではなく「より美味しい」を目指し、和の食材、調味料もふんだんに取り入れた独創的な料理を緩急のあるコースで提供する。調布市国領という郊外立地にありながら、都心からも旨いもの好きたちが連日足を運ぶ話題の1軒だ。
●Don Bravo[ドン ブラボー]
住所:東京都調布市国領町3-6-43
営業時間:11:30~14:00(L.O)、18:00~22:00(L.O)
休日:水曜
TEL:042-482-7378
HP:www.donbravo.net/
雑誌『Safari』9月号 P216・217掲載
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photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki