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CULTURE カルチャー

2019.08.30


ダウンタウン ×『(500)日のサマー』

“ダウンタウン”と聞くと、観光で行くにはちょっと物足りない場所という印象を持つ人が多いかも。たしかにそこで暮らす人たちの生活の場だったり、あるいは会社や公共施設が多い地区だったりする。しかし都市によっては、他の地区とは違う魅力で観光客を惹きつけることもあり、LAのダウンタウンはそんな場所ではないだろうか。『(500)日のサマー』のようなラブストーリーのロケ地として訪ねることで、心ときめく発見も多いはず!

恋愛初心者が小悪魔に恋をした!
『(500)日のサマー』(2013年/アメリカ映画)



歴史を重ねた建造物が多い街
ダウンタウン( カリフォルニア州/アメリカ)





●原題:(500)Days of Summer
● 監督:マーク・ウェブ
● 出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ズーイー・デシャネル、クラーク・グレッグ、マシュー・グレイ・ギュブラー、クロエ・グレース・モレッツ


Story
グリーティングカード会社で働くトムは、新入社員のサマーとエレベーターが一緒になり、ともにロックバンドのザ・スミスが好きとわかって思いが高まる。デートを重ねる2人だが、トムの告白に対し、サマーは「真剣につきあう気はない」ときっぱり。微妙な関係が続いた結果、サマーと会う機会も減り、トムは仕事にも身が入らなくなる


ダウンタウンの魅力がいっぱい
なにげない日常シーンに、ダウンタウンの魅力が詰まっている本作。トムが踊る公園は有名スポットだし、屋上のガーデンパーティのシーンでは夕景が美しい。サマーのアパートはコリアタウンの近く。ダウンタウンにはリトルトーキョー、チャイナタウンもあり、アジア系の雰囲気も感じとれる。



登場人物


建築家を夢見る冴えない青年
トム(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)〈右〉

グリーティングカードを作る会社で、カードの文面を考える仕事をしている。大学で建築を学んでいたので、今の仕事に不満を募らせていたとき、会社に新しく入ったサマーにひと目惚れ。運命を信じるタイプ。

真実の愛を信じない魔性の女
サマー(ズーイー・デシャネル)〈左〉

トムの会社の新しい秘書。音楽の趣味が合うトムと仲よくなり、自分からキスするなど彼を本気にさせる。その後、デートを重ねるも、恋人にはならないスタンスを貫く。トムと深い関係になるつもりはない。





映画が好きな人、または旅行が好きな人が「この映画の舞台は××」と聞けば、なんとなく観る前に風景をイメージしやすいはず。しかし、そんな人たちにとっても、予備知識ナシで観て「ここ、どこ?」と新鮮な驚きを与える作品もある。典型的な有名スポットとは全く違う風景が出てくる、このパターンの代表例がLAのダウンタウンではないか。LAといえば、サンタモニカのビーチや、観光客で賑わうハリウッド大通り、ビバリーヒルズの高級住宅街などが定番として目に浮かぶ。そんなキラキラな風景とは違って、意外に古くて情緒のあるビルが立ち並んでいたり、メキシコ系やアジア系の地区があったりと、独特なムードが漂うのがダウンタウン。思わぬ発見が多い場所なのである。

これまでも『ブレードランナー』や、同名の実在ホテルを描いた『ミリオンダラー・ホテル』など、LAダウンタウンで撮影された映画は、どこか無国籍でミステリアスな魅力を放っていた。ラブストーリーとして根強い人気を誇る『(500)日のサマー』もLAで撮影されながら、NYやヨーロッパの薫りさえ漂ってくる。主人公のトムとサマーがデートで巡る各所はノスタルジーをくすぐる風景が多いし、西海岸のきらめく太陽も少なめ。LAの固定観念を気持ちよく打ち破ってくれるのだ。かつては「治安が悪い」と不評だったダウンタウンだが、近年は開発が進み、美しい公園も完成。お洒落スポットも急増して、ショッピングや食事も満足できるし、シアターや美術館も揃い、エンタメの中心地となった。LA観光の目玉としてアクセスしやすくなった今こそ、最先端と古きよきムードの両方を満喫できる、というわけ。ロマンチックな気分に誘われ、『(500)日のサマー』の2人のようにダウンタウンで予期せぬ出会いが……なんてことも!?


Place01 レッドウッドバー&グリル

ダウンタウンの“カワダホテル”の隣に位置するこのレストランは、レストランとしてもバーとしても人気。食事のメニューはバーガーやタコスなど、いかにもLAスタイル。そしてバーでは、バンドのライブやパフォーマーのショーが行われ、ビール片手に楽しめる。映画では盛り上がったトムがこの店でカラオケを熱唱。サマーが嬉しそうに見つめる。

●The Redwood Bar & Gril
住所:316 W 2nd St, Los Angeles, CA 90012

Place02 The Barclay

ダウンタウン全体のシルエットを眺められるのが、サマーのアパートの屋上でのパーティシーン。夕方の太陽に照らされる高層ビルの風景が美しい。このサマーのアパートは、ダウンタウンから北西に向かったコリアタウンに位置する。人気レストランもあるが、ハリウッドとダウンタウンの中間という利便性で、家賃の高いアパートが多く、散策するのも楽しい。

●The Barclay
住所:706 Normandie Ave, Los Angeles, CA 90005

〈イケア〉デートなど憧れるシチュエーションばかり
映画や美術館に行き、バーで飲みと、デートしまくりの時期のトムとサマーは幸せいっぱい。〈イケア〉でも、ソファでくつろぎ、ベッドの上で抱き合ったりとやりたい放題。マネしたら店員に怒られそう!?


Place03 Fine Arts Building

アーティストのためのスタジオ兼ギャラリーとして、1928年に建築された13階建てのこのビルは、ダウンタウンでも知る人ぞ知る隠れスポット。1階がギャラリー型のエントランスで、ここのみ出入りは自由。壁側のボックスには、ビルに入居するアーティストの作品が展示されている。吹き抜けになった2階の回廊など、内装のデザインだけでも一見の価値アリ。外観のレリーフも含め、建築が大好きなトムのお気に入りの場所で、サマーとのデートでは外から覗いている。

●Fine Arts Building
住所:811 7th St, Los Angeles, CA 90017


Place04 エンジェルズ・ノール・パーク

冒頭とクライマックスに登場する、トムとサマーにとっての思い出の場所。トムが「LAでいちばん好きな場所」と言うだけあって、本作を観たら誰もが訪れたくなる。運行距離(90 m)が世界最短鉄道のケーブルカー“エンジェルズ・フライト”に乗って登る丘の上にあるこの公園は、LAとは思えない静かな雰囲気。現在、基本的に閉鎖中だが、管理・清掃している人にその場で頼めば入れてもらえるとか。公園を見に行くことはできるのでLAの歴史的ビルを眺められるかも。

●Angel’s Knoll Park
住所:356 S Olive St, Los Angeles, CA 90013


印象的なビルが多数登場

映画のラストに出てくるクラシカルな内装の“ブラッドベリー・ビルディング”は、あの『ブレードランナー』の撮影にも使われた。そのほか、現在は閉館しているが、アメリカでも最古の歴史を誇る映画館の“ミリオンダラー・シアター”も登場。LAの歴史を感じる意味でも本作は必見だ。

 
Information

雑誌Safari』10月号 P242~243掲載

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