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CULTURE カルチャー

2023.03.22


【カールスバッド洞窟群国立公園】地中に広がる奇跡の鍾乳洞。奇怪な造形の連続は目にしたことがない別世界!

無数のコウモリが舞い上がる砂漠の大地に小さな割れ目が開いていた。それが広大な洞窟へ続くと誰が思うだろう。2億5000万年前の海の浅瀬は硫黄や酸の化学変化と地殻変動でとんでもない景観に生まれ変わっていた。


ニューメキシコ州
カールスバッド洞窟群国立公園

【カールスバッド洞窟群国立公園】地中に広がる奇跡の鍾乳洞。奇怪な造形の連続は目にしたことがない別世界!鍾乳石の芸術は、数百万年の間にゆっくりと形成されたと考えられている。現在は雨量が極端に減ったため、たけのこ状に伸びる“石筍”の成長は止まっている。写真は見どころのひとつ“ドールズ・シアター”

ニューメキシコ州南東部、40号線以南の地域に灼熱と乾燥の荒野が果てしなく広がる。この一帯はアメリカに4つある砂漠のひとつ、チワワ砂漠の一部。不毛の大地は、テキサス州からメキシコにかけて延々と続く。

こんな荒地の地下にいったい誰が洞窟を発見したのか? このミステリーに対する答えは諸説あるが、ジム・ホワイトというカウボーイが大きな役割を果たしたことは間違いない。洞窟に棲むコウモリの糞を、肥料としてカリフォルニアの農作地帯に送ったのがはじまりだった。

ジムは巨大な洞窟の探検に夢中になったが、誰も信用しない。ついに知り合いのカメラマンを同行させカールスバッド洞窟を世に知らしめたのは1915年のことだった。有名なコメディアンでカウボーイのウィル・ロジャースは、「砂漠の下に屋根付きのグランドキャニオンがあった」と驚愕の体験を表現した。

地下へ続くスロープに入ると、空気が冷たい。気温は年間を通じて13℃だ。弱い光の中に次々と浮かび上がる奇怪な鍾乳石はすでに別世界。はじめて洞窟に入ったジムの驚きと興奮を追体験する。

地下230mにあるビッグルームは、アメリカンフットボール場11面に匹敵する長さ。人間の創造力を超えた異次元の造形が並ぶ景色は圧巻だ。“デビルズ・スプリング”、“ボトムレス・ピット”、“キングス・パレス”など印象的なネーミングの多くはジムが自ら名づけた。

忘れてはいけないもうひとつの目玉が、コウモリ。4月下旬から10月の夕刻、1分間に最大5000匹ものコウモリが虫を求めて竜巻状に上空へと飛び立つ。まさに自然の驚異だ。ほかにも、春と秋に咲く砂漠の花が楽しめるデザート・ネイチャー・トレイル、漆黒の闇に無数の星が出現するスターゲイジング・ツアーも。この非現実を是非体験してほしい。

【カールスバッド洞窟群国立公園】地中に広がる奇跡の鍾乳洞。奇怪な造形の連続は目にしたことがない別世界!ナチュラルエントランスを進むと、すぐに現れる異様なスポット“デビルズ・スプリング”。冷たい空気と不気味な静寂が別世界へと誘う

春から秋の夕暮れは
コウモリのショータイム!


Point 1
全米最大の地下空間“ビッグルーム”!


【カールスバッド洞窟群国立公園】地中に広がる奇跡の鍾乳洞。奇怪な造形の連続は目にしたことがない別世界!最大の見どころは、その名も“ビッグルーム”。地下225 mまでエレベーターで降りれば、すぐ目の前だ。一番長いところで540m、幅330mは全米最大で、世界的にもボルネオの巨大洞窟に次ぐ大きさと考えられている。高さ19mの巨大鍾乳石“ジャイアント・ドーム”、写真の“テンプルポール”、42mの深さがある“ボトムレス・ピット”と見どころが続く。

Point 2
ツアーのスタートはナチュラルエントランス


【カールスバッド洞窟群国立公園】地中に広がる奇跡の鍾乳洞。奇怪な造形の連続は目にしたことがない別世界!ビジターセンターからの小道を行くと、この先に巨大鍾乳洞が広がっているとは思えないような小さなエントランスがある。数千年前に洞窟の屋根の一部が崩れたために開いた“穴”だと考えられている。広大な砂漠の中で、この入り口を探した物語がミステリアスに語られる理由が納得できる。エントランスの上部に見える赤と黒の象形文字は、1000年ほど前にネイティブたちが洞窟をシェルターとして使った印だ。

Point 3
洞窟に潜む40万匹のコウモリの飛翔!


【カールスバッド洞窟群国立公園】地中に広がる奇跡の鍾乳洞。奇怪な造形の連続は目にしたことがない別世界!毎日、夕方になると遠くにゆらゆらと煙が上がる。それを不思議に思った少年がカールスバッド洞窟を発見した、という逸話がある。その煙こそが、無数のコウモリの飛翔だった。4月下旬から10月の夕暮れ、エサとなる虫を求めて数十万匹が舞い上がる。しかし、日によってコウモリの数はまちまち。エントランス近くのアンフィシアターで、レンジャーのレクチャーを聞きながらコウモリを待つ気分はドキドキだ。

Point 4
いざ、ワイルドな冒険ツアーへ!


【カールスバッド洞窟群国立公園】地中に広がる奇跡の鍾乳洞。奇怪な造形の連続は目にしたことがない別世界!パークでは、レンジャーの解説つきガイド・ツアーを各種用意している。5時間半のスローター・キャニオン・ケイブ(写真)のツアーは、世界最大級の高さ27mの石筍“モナーク”と対面できる。ロワー・ケイブは急な階段とロープで18mの深さを降りる冒険コース。ツアーでしかいけないキングス・パレスを含む90分のコースも人気だ。ツアーに参加しなくてもデビルズ・スプリングなど、自分のペースで見て歩くことも可能。

Point 5
地下230mのランチルーム


【カールスバッド洞窟群国立公園】地中に広がる奇跡の鍾乳洞。奇怪な造形の連続は目にしたことがない別世界!ナチュラルエントランス・ツアーを終えて最深部に到着すると、ランチルームへの案内板が見える。指示に従って入っていくと、そこにはレトロフューチャーな食堂が! 提供されるメニューに特別なものはないが、雰囲気は味わう価値がある。ハイクの足を休めるにはうってつけだ。食料や水が手に入るのは、国立公園内でここだけなので、足りない人は補給しておこう。

Carlsbad Caverns National Park
本部:3225 National Parks Highway, Carlsbad, NM 88220
電話:+1-575-785-2232
URL:https://www.nps.gov/cave
開園:年中無休
入場料:大人15ドル(15歳以下無料) ※3日間有効
国立公園指定:1930年5月14日
面積:約189.3㎢


旅の準備
どこからも遠い隔絶したエリアにある。ここまで来るなら、人気の白い砂丘のホワイトサンズ国定公園やUFO飛来で有名なロズウェルとセットで訪れたい。

旅のヒント
砂漠の外気温は40℃を超える灼熱だが、洞窟の中は年間を通して13℃とひんやりとする寒さ。長いパンツを穿いて、ジャケットを用意しておいたほうがいい。

注意点
洞窟内のトレイルは足元が滑りやすい。トレッキングシューズがベスト。照明も暗いので、ヘッドライトが必携だ。両手が使えるバックパックがおすすめ。

ベストシーズン
コウモリの飛翔が見られるのは、4月下旬から10月まで。ただし夏の暑さと乾燥は覚悟が必要だ。春と秋は、砂漠のトレイルで可憐な花を見ることができる。

行き方
【カールスバッド洞窟群国立公園】地中に広がる奇跡の鍾乳洞。奇怪な造形の連続は目にしたことがない別世界!最寄りの大きな空港はテキサス州エルパソ。デンバーやLAなどから便がある。ビジターセンターまで約250㎞。ロズウェルからは約160㎞。どちらからもレンタカーでアクセス。道はわかりやすく、混雑の心配もない。

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Information

雑誌『Safari』4月号 P236~239掲載

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文=牧野森太郎
text : Shintaro Makino photo by AFLO
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