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2026.07.05 NEW

日本人が古くから大切にしてきた四季へのまなざしを
食で伝える日本料理店が横浜・関内にオープン

横浜・関内。馬車道や日本大通りにもほど近い弁天通に、2026年7月6日、日本料理店〈関内 なむら〉が暖簾を掲げる。この店が大切にしているのは、旬の味覚や銘酒の先にある、季節との豊かな向き合い方。そして、料理を通じて届けたいのは移ろう季節を愛でる喜び。
「最近は忙しくて、道端に咲く花や風の変化に気づく機会も少なくなっていますよね。でも本当は、季節って特別な場所に行かなくても感じられるものだと思います」と店主の苗村彰俊は語る。

通りを歩けば、初夏には夏椿が咲き、夜には蛍が現れることもある。季節が進むごとに、雨上がりの匂いが変わり、吹く風の向きも変わる。そんな日常の中にある小さな変化に関心を寄せ、目を向けられるようになると、いつもの景色は少し違って見えてくるはずだ。〈関内 なむら〉は、その感覚を思い出させてくれる場所であることを目指している。料理、酒、器、建築。それぞれが調和しながら、日本人が古くから大切にしてきた四季へのまなざしを静かに伝えていく。 

 食事は"汲み出し"と呼ばれる一杯からはじまる。塩とあられを浮かべた湯を口に含み、まず身体を整える。一見すると簡素な所作に見えるが、身体にやさしく染みわたるこの一杯から、その日の物語ははじまる。「素材を理解することが料理人の仕事だと思っています」そう話す苗村の探究心は、高校時代の趣味である釣りからはじまった。自ら釣った魚を友人へ振るまった とき、同じ魚なのに日によって味が違うことに気づいた。なぜ違うのか。神経締めなのか、血抜きなのか。保存温度などによるものなのか。その疑問を解き明かしたいという思いが、料理人としての原点となった。 出汁に使う水の硬度とPHを調整し、野菜の皮や端材の使い道を考える。素材を余すことなく使いきるのも、環境配慮のためということはもちろん、食材が持つ可能性を最後まで引き出したいという思いから。市場へ足を運び、生産者を訪ねることも欠かさない。平塚のエボダイ、三浦のタコ、保土ヶ谷のカンパリトマト、神奈川区のヤングコーン、厚木のアスパラガス……。 近隣だからこそ鮮度の高い状態で届けられる食材と生産者との対話の積み重ねが、〈関内 なむら〉の料理を支えている。 

 
 

 
先付けに登場するのは、平塚で水揚げされたエボダイ。干物として知られる魚だが、鮮度が落ちやすく、刺身で味わえる機会は多くない。そら豆やずいき、金糸瓜を添え、トマトの酸味を生かした出汁のジュレを重ねることで、暑い季節にふさわしい涼やかな一皿となる。お造りには鎌倉のアオリイカと初鰹を。初鰹は炙りと刺身の二種で供し、それぞれの異なる表情を楽しめる。添えるのは、一カ月かけて発酵させた行者ニンニクの醤油漬けや、小田原の下中玉ねぎを麹と合わせた発酵だれ。食材そのものだけでなく、時間が生み出す旨味も加える。焼き物は備長炭による神奈川区のヤングコーンや厚木のアスパラガスを、沖縄の海塩とともにシンプルに。素材の力が際立つ。締めは、ご飯と麺の二種類。三浦のタコと生姜、市内産の枝豆を炊き込んだご飯は、枝豆の茹で汁まで余すことなく使い、香りを閉じ込める。麺の出汁には、その日の料理で使った野菜の端材を活用。食材への敬意が最後の一椀にも込められている。 

 甘味には、シグネチャーでもある水羊羹を。目の前で水を張った木桶へ水羊羹が流し入れられ、その様子は涼やかで美しく、口に含めば文字どおり水のようにほどけていく。繊細な食感を追求した一品だ。最後に、宇治茶で有名な和束町で学んだ知識を生かして選んだシングルオリジンの抹茶を一服。苗村が師事する茶道の流派"宗偏流"に習い、抹茶の水面には、ぽっかりと浮かび上がる三日月の景色を味わえる。二十四節気や五節句に寄り添いながら、その日の気候、その日の食材、その日の空気を映し出す料理の数々。五感で季節を味わうための料理が供される。また日本酒も料理と並ぶ主役。目指しているのは、料理と日本酒が合わさることで生まれる、ユニークで新しい味わいの体験。まず酒を味わう。次に料理を口にする。そして再び酒へ戻る。その往復によって、日本酒も料理もまったく違う表情を見せ始はじめる。苗村は、神奈川県内をはじめ全国の酒蔵へ足を運び、蔵人たちから学び続けてきた。その経験を生かし、その日の料理との対話が生まれるペアリングを提案する。なかには苗村自らが酒蔵で絞った日本酒や、熟成させた日本酒も。コースを通じて十〜十二種の日本酒を提供する。 

 
 

 
〈関内 なむら〉を訪れる楽しみは、料理だけではない。玄関へ続く細いアプローチ、足元の石、視線をやわらかく遮る下地窓……。歩みを進めるたびに 景色が変わり、気持ちは少しずつ日常から離れていく。その体験は、まるで京都の町家の奥にある茶室へ向かう道のりのよう。 空間設計を手掛けたのは、茶道お家元の茶室や寺院建築も手掛ける"藤森工務店"。数寄屋建築の技術と思想を受け継ぎ、海外の茶室やラグジュアリーブランドの空間演出も手掛ける職人たちだ。 限られた面積でありながら、不思議なほど広がりを感じる理由は、茶室の思想を土台として設計されているから。料理人としてどんな空間で客人を迎えたいのか。 どんな時間を過ごしてほしいのか。そこから考えた結果、 完成したのは、料理を味わう前から季節を感じ、心を整えるための空間だった。 茶室には、"小宇宙"という考え方がある。限られた空間の中に自然や四季、人との出会いを凝縮 するという思想だ。〈関内 なむら〉もまた、その精神を現代の料理店として表現している。 カウンター越しに見える光や路地のように続く動線、控えめに佇む花や掛け軸など。小さな空間で ありながら、そこには豊かな季節の景色が広がっている。

〈関内 なむら〉の空間には、完成がない。店とともに素材も歳月を重ね、少しずつ育っていく。その象徴が栗の木のカウンター。栗の渋を用いて染色することで、深みのある色合いに仕上げている。使い込むほどに艶が増し、時間の積み重ねが景色となって刻まれていく。 照明にある真鍮もまた同じ。新品の輝きを求めるのではなく、あえて雨や風にさらし、自然の力で風化 させている。青竹は飴色へと変わり、石や土もまた静かに表情を深めていく。完成した瞬間よりも、年月を重ねた先にある美しさを大切に。それは苗村の料理観とも重なる価値観だ。 天井には、職人の手によって編まれた網代を採用。今では扱える職人も少なくなったへぎ板を用い、 やわらかな陰影を生み出している。土壁には京都の聚楽土。足元には島根県産の来待石。それぞれが 長い時間をかけて育まれてきた自然素材。本物の素材にこだわり抜いたのは、自然が作り出す表情に勝るものはないと考えたから。 料理もまた自然の恵みから生まれるもの。だからこそ空間も自然の力を宿した素材で構成したかったと語る。 訪れるたびに少しずつ景色が変わる。それもまた、この店ならではの楽しみのひとつ。季節ごとに足を運んでみて、実際にその違いを感じてほしい。

 
Information

⚫️関内なむら

住所:神奈川県横浜市中区弁天通二丁目二十八 ライオンズマンション関内103
TEL:045- 305- 6539
営業時間:ディナー17:00〜21:00 ( ラストイン19:00)
※ 最初にご予約いただいたお客様のお時間から、いっせいスタート
                  ランチ( 水曜・土曜限定) 12:00〜15:00 
※ 12:00いっせいスタート
定休日:不定休
席数:7席
価格:コース1万6500円 ペアリング7700円

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