
悪いことをしている人は懲らしめられてほしい。単純な願いに思えるものの、そう簡単にはいかないのが世の中というもの。なので鬱憤も溜まる一方だろうが、そんな人にはネットフリックスで配信中の韓国ドラマ『鉄槌教師』を見てスカッとしてほしい。もしかしたら、少しだけ正しい世界が広がっているかもしれないから。
日本を含むアジアはもちろん、欧米でも話題になっている『鉄槌教師』の舞台は、学びの場である学校。秩序の崩壊と混乱が深刻化して久しい教育の現場を立て直すため、韓国政府によって創設された教権保護局の監督官たちが学校へ乗り込み、問題を解決していく。“教権保護局”という聞き慣れない機関は架空のもので、教権保護局の監督官なる職業も現実には存在しない。言ってしまえばファンタジーなのだが、このファンタジーの中には“求められていたもの”が巧妙に詰まっている。

その中心にいるのが、全身真っ黒のスーツに身を包んだ監督官のナ・ファジン(キム・ムヨル)だ。飄々とした雰囲気のファジンは元エリート軍人らしく、頭も切れて腕っぷしがものすごく強い。いわばリーダー格のヒーローだが、ファジンのそばには頼もしい仲間も。怒らせたらファジンより怖いかもしれない武闘派女性監督官のイム・ハンリム(チン・ギジュ)、抜群の分析力を誇る事務官のボン・グンデ(ピョ・ジフン)、そして教権保護局の創設者であり、政界で戦う大臣のチェ・ガンソク(イ・ソンミン)が活躍を見せる。
教権保護局に舞い込んだ案件をファジンらが精査し、学校に赴くのが各話ごとの主な流れ。いじめの加害者、暴力に取りつかれた生徒、過度に反抗的な生徒ら、さまざまなケースに対応していく。日本のタイトルが『鉄槌教師』なので制裁を加える対象は生徒のみだと思ってしまいそうだが、原題は“真の教育”。教育者の立場を悪用する教師や行き過ぎたモンスター・ペアレントら、大人たちの罪にも目を向け、真の教育を施していく。さらに、校内に蔓延る薬物や賭博の問題が取り沙汰されることも。熾烈さを極める受験事情や14歳未満は刑事処罰されない“少年法”が鍵を握るエピソードもある。少年法と言えば、こちらも良作の『未成年裁判』でも題材になっていたが、『鉄槌教師』の演出を務めるホン・ジョンチャンは『未成年裁判』を手掛けた監督だ。

『梨泰院クラス』や『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』にもいたいじめの加害者に、SNSを攻撃手段に使うインフルエンサー、同級生に薬物を売る問題児、教師に危害を加える生徒の親など、登場するのは現実に根づいた“悪者たち”。実際、生徒の親と教師の関係が描かれる第5話は、小学校教師が自殺した2023年の事件をモチーフにしているという。しかしながら先に触れたように、教権保護局は架空の機関で、ファジンらのような監督官も実在しない。皮肉にも、そこが『鉄槌教師』の面白さであり、悪を炙り出す作戦やキレッキレのアクションで相手をやっつけるファジンやハンリムにも、頭脳で応戦するグンデや政治家として矢面に立つガンソクにもロマンがある。各々が体現する「こうであればいいな」が、絶妙な爽快感をもたらしてくれるのだ。

とはいえ、無傷で何でもしてくれるヒーロー集団の物語に陥っていないのがまたいいところ。人の痛みを理解し、被害者に寄り添う教権保護局の面々は、自ら痛みを抱えてもいる。エピソードが進むにつれて彼らの傷が浮き彫りになり、それが教権保護局の活動と絡み合っていく展開も見事。圧倒的な高揚感が待つラストまで、一気に見たくなるはずだ。
『鉄槌教師』
原作/チェ・ジェヨン、ヨン・ジェウォン 演出/シン・ギス 脚本/キム・ジュノ 出演/キム・ムヨル、イ・ソンミン、チン・ギジュ、ピョ・ジフン 配信/ネットフリックス
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