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2026.07.09 NEW


大人の空間を格上げする、“不完全”の美学。ピート・ヘイン・イークのエキシビションで本物の価値を知る!

スクラップ材木や工場廃棄物などの素材を用いて、唯一無二のユニークな作品を生み出し続けるオランダ人インテリアデザイナー、ピート・ヘイン・イーク。現在、東京・表参道の〈CIBONE(シボネ)〉にて、彼のエキシビションが開催されている。最新のテクノロジーで完璧なものを作ろうとする現代の手法とは対照的に、手間と時間をかけて作られる彼の作品には、素材の持つ物語や温もりが宿っている。こだわりを持つ大人の住空間を格上げしてくれる、注目のイベントだ。


今回の展示は、今から35年前の学生時代に廃材を使って生み出したという、彼の創作の原点ともいえる「キャビネット」が中心。代表作のスクラップウッドを用いたものだけでなく、アルミやオーク素材の作品、さらには日本の生活様式に合わせて制作された新作「Old Window / drawer Cabinet」も初披露されている。
会場のスタイリングを手掛けたのは、インテリアスタイリストの作原文子。彼女が世界を旅して出会った私物と、家具の輸送に使われたコンテナ箱を組み合わせ、人の気配を感じる洗練された「部屋」のような空間を見事に演出。彼女も「彼の作品には温度があり、インテリアの主役にも脇役にもなれる懐の深さを感じる」と絶賛しており、プロダクトの奥深い魅力を存分に味わうことができる。

「不完全な時にこそ、成功を感じる」——日蘭のトップクリエイターが語るものづくり
初日に行われたレセプションでは、ピートと、国内外で幅広く活躍する建築家の長坂 常(スキーマ建築計画)によるトークイベントが開催。テーマは、両者に共通する素材や機械のユニークな使い方、すなわち「誤用」についてだ。
・素材が秘めるインスピレーションと可能性
「建築をやるので、そこにある場所性も一つの素材。その場所がある分だけ可能性がたくさんある」と長坂が言及すれば、ピートは自身の原点を振り返る。「1989年の卒業制作の時、たまたま材木置き場で出会った廃材がとても美しく見えた。それぞれに物語があって、私に訴えかけているようだった」と、偶然の巡り合わせが今に繋がっていることを明かした。
・「誤用」という名のストレートな選択
一般的ではないユニークな素材の使い方について、ピートは「間違った使い方というよりも、自分としてはまさにこうあるべきというつもりでやっている、明白な選択」とストレートな意見をぶつける。これに対し長坂は「普通にそうなることが分かって使うが、それを『誤用』と言った方が楽しくなるし、敷居が下がって色々なことができそう。直球のピートに対して、僕は少し斜めからアプローチしている(笑)」と応じ、会場の笑いを誘う。
・現場の“重力”と、ハプニングへの向き合い方
理論や数値に縛られがちな現代のデザインにおいて、ピートは「理論だけに頼らず、現場の経験に基づいた知識と上手く結合できれば新たな物事が可能になる」と直感の重要性を説く。長坂もこれに強く共感し、「CADの中で仕事をしていると重力のない世界を想像してしまうが、ピートは毎日重たいものを持ちながらデザインしていて物との接触が圧倒的に違う。それは憧れでもある」と自身の思いを口にした。また、ピートが「日本はできるだけ間違いを避ける丁寧なものづくりをする。オランダは雑というか、一から構築し直すのを恐れない」と日欧の姿勢の違いを指摘すると、長坂は「日本の場合はこの先どういうことが起こるか(地震など)を考えないといけない事情もある」と返し、日本ならではの建築の背景を浮き彫りに。
・何が物や建物の“美しさ”を決めるのか?
最後に語られたのは、美の本質について。ピートの答えは明確だ。「私が一番興奮するのは、何かが不完全な時。すべてが完璧だと興味を持てない。わずかな失敗にこそ美がある」とし、さらに「シンプルなアイデアから始まって、出来上がった時に説明もいらないくらい自然に感じられる状態を目指している」とクリエイションのゴールを提示した。一方の長坂は「知の更新」をキーワードに挙げる。「マテリアルの可能性を人に伝えられたり、そのアイデアが他人に再利用されたりした時に喜びを感じる。自分が作ったはずなのに、いつか来た時に『今こんなことになってるの?』と、自分じゃない人によってさらに知の更新がかかっていくような、そんな変化を楽しめるものを作りたい」と、未来へ開かれた美学を言葉に込めた。
 

 
効率や完璧さが求められる現代だからこそ、直感と手作業によって生み出される“不完全な美”が心に深く刺さる 。会期は2026年7月19日まで。ぜひ会場へ足を運び、家具たちが放つ圧倒的な存在感とストーリーを体感してみてほしい。

 
Information

with the maximum respect for the materials - PIET HEIN EEK
会場 : CIBONE(東京都渋谷区神宮前 5-10-1 GYRE B1F)
会期 : 〜7月19日まで
開場時間 : 11:00〜20:00


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