【まとめ】感動必至のボクシング映画9選!
5月26日に劇場公開する『クリード 過去の逆襲』。それにあわせて観ておきたいボクシング映画をまとめ記事としてご紹介!
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『ストリートファイター』
製作年/1975年 監督・脚本/ウォルター・ヒル 出演/チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーン、ジル・アイアランド
素手で殴り合うベア・ナックル・ボクシング!
舞台は1930年代、大恐慌時代のアメリカ、ニューオリンズ。流れ者のチェイニーはストリートファイトのマネージャー、スピードに売り込み、試合に出て難なく相手を倒す。その後も連戦連勝を続ける彼に悪徳マネージャーが目を付け、スピードを拉致。チェイニーは彼を救い出すため、シカゴからやって来た最強の拳闘士と戦うことになる。
後に『ザ・ドライバー』『ストリート・オブ・ファイヤー』などアクションの快作を放つウォルター・ヒル監督のデビュー作。肉弾相打つストリートファイトを克明にとらえながら、大不況の厳しい時代を拳ひとつで生きる男のドラマを紡ぐ。主演を務めたチャールズ・ブロンソンは当時54歳だが、鍛え抜かれた筋骨隆々のボディに説得力を宿らせ、タフな殴り合いを熱演。当時の妻ジル・アイアランドとの共演や、スピード役にふんしたジェームズ・コバーンの妙演など、役者陣のキラリと光る個性にも注目。
『ロッキー』
製作年/1976年 監督/ジョン・G・アビルドセン 共演/タリア・シャイア、バート・ヤング
伝説シーンが凝縮された傑作!
シルヴェスター・スタローンの代表作と誰もが認めるうえに、ボクシング映画としても最も人気の高い1作として、映画史に燦然と輝く。モハメド・アリの試合を見てアイデアが浮かんだスタローンが自ら脚本を執筆。
当時、俳優としては無名だった彼自身がロッキー役を演じた結果、主人公の挑戦とスタローンのスターとしての大ブレイクが鮮やかに重なった。その結果、アカデミー賞作品賞という栄冠までつかんだのである。
30歳を迎えて、ボクサーとしての夢を失っていたロッキー。しかし、世界ヘビー級チャンピオンのアポロが、無名のボクサーと対戦すると発表。その相手に選ばれたロッキーが、人生をかけてトレーニングに挑む。
ビル・コンティの音楽とともにフィラデルフィア美術館の階段へ向かう早朝ランニング、生卵の一気飲み、ラストのセリフなど、“伝説”となったシーンが多数。スタローンは、このロッキー役を、2018年の『クリード 炎の宿敵』まで、42年間演じ続けたことになる。
『チャンプ』
製作年/1979年 監督/フランコ・ゼフィレッリ 脚本/ウォルター・ニューマン 出演/ジョン・ヴォイト、フェイ・ダナウェイ、リッキー・シュローダー
ジョン・ヴォイトがボクサー役を熱演!
ボクシングの元世界王者ビリーは今や落ちぶれ、酒とギャンブルに溺れ、妻にも逃げられた。8歳になる息子TJだけが、彼を“チャンプ”と呼び慕い続けている。借金を背負い、ケンカ沙汰で落ちるところまで落ちたビリーは、そんなTJのために、もう一度リングに上がることを決意。ハードなトレーニングを積み重ね、ついにタイトルマッチへの挑戦権を手にする。やがてTJや元妻が見守る中、死闘のゴングが鳴った……。
1931年の同名映画を『ロミオとジュリエット』のフランコ・ゼフィレッシ監督がリメイク。『帰郷』でアカデミー主演男優賞を受賞したジョン・ヴォイトが体重を絞り、すべてのファイトシーンをこなす熱演を見せる。試合の場面は、もちろん見どころだが、親子の絆を見つめたドラマも“泣ける”と好評を博した。TJにふんして俳優デビューを飾った子役のリッキー・シュローダーの愛らしさも光り、劇場公開時には日本でも人気者に。
『レイジング・ブル』
製作年/1980年 監督/マーティン・スコセッシ 共演/ジョー・ペシ、キャシー・モリアーティ
体重を27kg増やした伝説的作品!
最近ではクリスチャン・ベールや、日本の鈴木亮平のように、役に合わせて極端な体重の増減に挑む俳優が増えたが、その原点といっていいのが今作のデ・ニーロだ。すでにアカデミー賞では助演男優賞を受賞済みで、主演男優賞にも2度ノミネートされていた彼が、念願のその主演男優賞に輝いた記念すべき一作である。
デ・ニーロが演じたのは、実在のミドル級ボクサー、ジェイク・ラモッタ。納得のいかない判定負け、八百長試合などを経験し、タイトルマッチで復活するも、性格が災いして破滅的人生にも導かれる。デ・ニーロはボクサーらしい肉体を作り上げたうえに、引退後の太った姿を再現するため、なんと体重を27kgも増量。信じがたい変貌は、いま改めて観ても驚くばかり!
全編、モノクロ(タイトルなど一部のみカラー)なのだが、その美しさは、ため息が出るほど。生々しさに徹するボクシングのシーンも、モノクロゆえの荘厳さが漂っている。そんな極上の映像美とともに、栄光と挫折、プライドが激しく交錯する劇的な男の運命が強烈に迫ってくる、まぎれもない傑作だ。
『ALIアリ』
製作年/2001年 監督・脚本/マイケル・マン 共演/ジェイミー・フォックス、ジョン・ヴォイト、ジェフリー・ライト
アリになりきり大熱演!
人種差別がはびこる1950年代のアメリカで、プロボクサーを目指してトレーニングに励む青年カシアス・クレイ。22歳の若さでヘビー級世界王者となった彼はイスラム教に入信し、モハメド・アリに改名。無敵を誇り、連戦連勝を続け、名声を轟かせるアリだったがベトナム戦争の徴兵を拒否したことでアメリカの英雄は一転して反逆者に。王座をはく奪され、苦境に追い込まれながらも、彼は信念を曲げずにボクシングに打ち込み続ける……。
『ヒート』の鬼才マイケル・マンが伝説のボクサー、アリの半生を骨太に描いた伝記ドラマ。しばし“やせっぽち”を自称していたウィルが主演を務め、肉体改造に挑んで筋肉質のボディをつくりあげた。ファイトシーンの熱演はもちろん、強気のビッグマウスを含むカリスマ性の体現も印象深く、まるでアリが乗り移ったかのよう。アカデミー主演男優賞のノミネートも納得の大熱演!
『ミリオンダラー・ベイビー』
製作年/2004年 監督・出演/クリント・イーストウッド 出演/ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン
名優たちの豊潤なるアンサンブルに涙がこみ上げる
アカデミー賞4冠(作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞)に輝く傑作ヒューマン・ドラマ。ボクシングでのし上がることを夢見るマギーは、自分を鍛えてほしいと老トレーナーのフランキーに懇願する。何度断ってもあきらめないその執念と情熱に彼はやがて折れ、二人は厳しいトレーニングを開始。すると、彼女は一試合ごとにメキメキと頭角をあらわにし、大注目の選手へと成長していくのだがーーー。
数々の名作で歴史に残る”対決”を生み出してきたイーストウッドだけに、本作のリング上におけるファイトシーンの醸成はさすがの凄みが漂う。が、我々が涙を堪えきれなくなるのは、舞台を病室へと変える後半からではないだろうか。リングを降りても命の闘いは続く。父娘にも似た絆を育む二人。静かに、それでいて実に力強く交錯する互いの感情。そっと見守るモーガン・フリーマンの姿。もはや言葉は要らない。まるで映画の神様が宿ったかのような豊潤な香りと味わいをじっくりと味わいたい。
『ザ・ファイター』
製作年/2011年 監督/デビッド・O・ラッセル 出演/マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、メリッサ・レオ
ボクシングを通じた兄弟の絆に泣く!
プロデビュー後、14連勝など華々しい記録を打ち立てた、実在のボクサー、ミッキー・ウォード。一度は引退を考えた彼に、復活のきっかけを与えたのが、兄の存在だった。それは、同じく実力を認められたボクサーながら、麻薬に溺れ、逮捕もされた異父兄のディッキー・エクランド。この『ザ・ファイター』は、複雑な兄弟関係にある彼らが、苦闘を繰り返しながら頂点に立とうとする姿を、ド迫力のボクシングシーンとともに描いていく。強烈でセンセーショナルながら、直球の感動も届ける渾身の“兄弟映画”だ。
闘志ムキだしのスタイルが持ち味のミッキー。ボクシングへの純粋な情熱も劇的に描かれるのだが、それ以上に『ザ・ファイター』が切実なのは、家族ドラマ。彼のファイトマネーを当てにする強烈なキャラの母親、そして姉妹たち。ジャンキーであるディッキーをかばったために、ミッキーが見舞われるアクシデントなど、問題だらけの家族関係に胸を締めつけられる。ディッキーを演じるため15kgも減量したクリスチャン・ベールと、“鬼母”役のメリッサ・レオが、アカデミー賞で助演男優賞&助演女優賞のW受賞を達成。ボクシングと兄弟の絆、その両方でカタルシスがもたらされる骨太な一作。
『クリード チャンプを継ぐ男』
製作年/2015年 監督/ライアン・クーグラー 出演/マイケル・B・ジョーダン、シルベスター・スタローン
あきらめない心が大事!
ボクシング映画の“伝説”『ロッキー』シリーズの中で、もっとも師弟愛に浸れるのがスピンオフ作品の本作。主人公ロッキー・バルボアは年齢を重ね、自らはボクサーとして完全引退状態。孤独な日々を送る彼の前に現れたのが、かつてのライバルにして盟友だったアポロ・クリードの息子、アドニスだった。
本作の師弟愛がドラマチックなのは、教える相手が自分の家族やアカの他人ではなく、親友の息子という微妙な距離感にあること。アドニスはアポロの死後に生まれたので、チャンピオンだった父の記憶がない。それゆえ、ロッキーは“教え子”との関係に葛藤する部分が多い。しかしながら、悩める若者に手を伸ばし、ともに闘い(ロッキーは重病が判明!)、あきらめない心を教えこんでいく。その様は、年長者としてあるべき姿を観る者に教えてくれる。
自分が習得したテクニックやボクサーとしての精神を、後進の才能に継がせようとする姿に、『ロッキー』のファンならずとも胸が熱くなるはず。スタローンは、本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。アドニス役のマイケル・B・ジョーダンも迫真の演技で応え、師弟愛のドラマはじつにエモーショナル! 過去の『ロッキー』シリーズへのオマージュや、信じがたいカメラワークによる試合シーンも見どころだ。
『クリード 炎の宿敵』
製作年/2018年 監督/スティーブン・ケープルJr. 脚本・出演/シルベスター・スタローン 出演/マイケル・B・ジョーダン、フローリアン・ムンテアヌ、ドルフ・ラングレン
ドラゴ親子の苦闘に泣けてくる!
ロッキーの指導により、世界ヘビー級のタイトルマッチに勝利したアドニス・クリード。恋人のビアンカにプロポーズし、公私ともに人生は絶好調だった。そんな彼の前に現れたのが、ウクライナのボクサー、ヴィクター・ドラゴだ。ヴィクターの父は、かつてアドニスの父アポロをリング上で死に追いやった宿敵イワン・ドラゴ。時を超え、息子同士の因縁の対決がはじまる……。
1985年『ロッキー4/炎の友情』と濃密につながる本作。アポロとドラゴ、それぞれの息子が父親の思いを託されるという設定が、なんともムネアツなのだ。特に敵役のドラゴ親子の苦闘は切実!父イワンはロッキーに敗れたことで、祖国や妻に見捨てられ、実は落ちぶれた生活を送っていたことが明らかに。シリーズファンならこれだけでも泣けてくる。息子のヴィクターが、心に深い傷を抱えつつ父に闘争心をかき立てられる姿は、敵対する相手ながら胸に迫るはず。
photo by AFLO