
『ディア・ハンター』
製作年/1978年 製作・監督/マイケル・チミノ 共演/ジョン・カザール、メリル・ストリープ
若きデ・ニーロの共感力がスゴイ!
ロバート・デ・ニーロの初期の代表作といえば、『ゴッドファーザー PARTⅡ』や『タクシードライバー』を挙げる人が多く、早くから強烈なキャラクターを自分のものにする“怪物的名優”と認知されていた。そんな初期のキャリアの中で、“どこにでもいそうな若者”を名演した大傑作が『ディア・ハンター』だ。
アメリカ、ペンシルヴェニア州の鉄鋼の町に住むマイケルは、仲間とともにベトナム戦争に出征することになる。壮行会となるパーティや鹿狩り(ディア・ハンター)という日常風景が一変。ベトナムでのドロ沼の苦境から、あの有名なロシアンルーレットへとなだれ込む。基本的には戦争映画なのだが、出征前の友情を描くシーンがことのほか長いので、観終わった後は、ヒューマンドラマとしての感動が強い。
マイケル役としてのデ・ニーロは、戦争という極限状態で狂気をちらつかせる瞬間もあるものの、強い個性の仲間を思いやる、穏やかな印象が強い。そこに素直に共感させるところが、若きデ・ニーロの才能だ。親友に思いをはせるラストシーンの彼の表情は忘れがたい。アカデミー賞では作品賞など5部門受賞。

『レイジング・ブル』
製作年/1980年 監督/マーティン・スコセッシ 共演/ジョー・ペシ、キャシー・モリアーティ
体重を27kg増やした伝説的作品!
最近ではクリスチャン・ベールや、日本の鈴木亮平のように、役に合わせて極端な体重の増減に挑む俳優が増えたが、その原点といっていいのが今作のデ・ニーロだ。すでにアカデミー賞では助演男優賞を受賞済みで、主演男優賞にも2度ノミネートされていた彼が、念願のその主演男優賞に輝いた記念すべき一作である。
デ・ニーロが演じたのは、実在のミドル級ボクサー、ジェイク・ラモッタ。納得のいかない判定負け、八百長試合などを経験し、タイトルマッチで復活するも、性格が災いして破滅的人生にも導かれる。デ・ニーロはボクサーらしい肉体を作り上げたうえに、引退後の太った姿を再現するため、なんと体重を27kgも増量。信じがたい変貌は、いま改めて観ても驚くばかり!
全編、モノクロ(タイトルなど一部のみカラー)なのだが、その美しさは、ため息が出るほど。生々しさに徹するボクシングのシーンも、モノクロゆえの荘厳さが漂っている。そんな極上の映像美とともに、栄光と挫折、プライドが激しく交錯する劇的な男の運命が強烈に迫ってくる、まぎれもない傑作だ。

『未来世紀ブラジル』
製作年/1985年 監督・脚本/テリー・ギリアム 出演/ジョナサン・プライス、ロバート・デ・ニーロ
美女の救出劇は現実?
『12モンキーズ』の鬼才テリー・ギリアムによる、風刺とブラックユーモアに満ちたSFスリラー。舞台は体制が人々の情報を掌握している管理社会。情報省の小役人サムは、このところ自身が騎士となり、美女を助ける不思議な夢を頻繁に見るようになっていた。そんなある日、夢の美女とそっくりの女性ジルと遭遇。犯罪者となり当局に追われている彼女を、サムは情報改ざんにより助けようとする。
【ココからネタバレ】
ジルを無罪にして一度は結ばれるも、情報省に逮捕され、拷問されるサム。そのとき、彼と旧知の非合法の配管修理人が省を襲撃。救出されたサムはジルとともに逃げ切ってハッピーエンド……と思いきや、物語は拷問室に戻り、救出劇は廃人と化したサムの妄想であったことが判明する。救いのないエンディングだが、この衝撃こそがギリアムの目指した痛烈な社会風刺。アメリカではテレビ放映時、拷問室に戻る前で終わるハッピーエンド・バージョンも作られたが不評だったという。

『レナードの朝』
製作年/1990年 原作/オリバー・サックス 監督/ペニー・マーシャル 脚本/スティーヴン・ザイリアン 出演/ロバート・デ・ニーロ、ロビン・ウィリアムズ、ジョン・ハード
ヒューマンドラマの金字塔!
1969年、内向的で研究者肌の精神科医セイヤーがブロンクスの病院に赴任。嗜眠性脳炎で眠り続けている患者レナードに興味を抱いた彼は、その脳波に反応があることを知り、新薬を投与し続ける。やがてレナードが25年ぶりに目を覚ますという奇跡が起こった。病に奪われた時間を取り戻すように人生を謳歌する彼の姿は、セイヤーの日常にも変化をあたえる。だが、しだいに副作用がレナードの肉体をむしばみはじめ……。
舞台劇化もされたノンフィクションに基づき、医師と難病患者の交流を見つめたヒューマンドラマ。覚醒後のレナードの姿を通して、生きる幸せが謳いあげられる。一方で、そんな彼に接することで、他人との関わりを避けてきたセイヤーの“めざめ”も深い感動を呼び起こす。アカデミー賞では作品賞など3部門にノミネート。ロバート・デ・ニーロとロビン・アウィリアムズの名優共演も見逃せない。

『ケープ・フィアー』
製作年/1991年 監督/マーティン・スコセッシ 共演/ニック・ノルティ、ジェシカ・ラング、ジュリエット・ルイス
静かなる狂気に震える!
強烈な役が多かったキャリアの初期を経て、俳優としての円熟期に入ったデ・ニーロが、再び過激な持ち味を全開にしたのが、この作品。若い時代のような振り切った感じではなく、静かに、そして不気味に狂気を漂わせる演技に、名優の底知れぬ実力がマックスで発揮されている。
1962年の名作『恐怖の岬』のリメイク。少女暴行の罪で14年の刑期を終えたマックスだが、自分を救えなかった弁護士への恨みが消えず、その一家に近づき、家族を崩壊させていく。マックスは復讐のために直接、手を下すのではなく、法を犯さないレベルでじわじわと弁護士家族を支配し、彼らの心を操る。映画を観ているこちらも、精神的な恐怖に陥っていき……というサイコスリラー。
全身タトゥーで、過剰に鍛え上げた肉体。外見もインパクト大なうえに、相手の弱みを瞬間的に察知し、利用する動物的本能、そして人のよさそうな態度がモンスターのように豹変する瞬間と、デ・ニーロの演技はトラウマになるほどの迫力。弁護士の娘との危険なやりとりなど、心ざわめかせるシーンが多数!

『ヒート』
製作年/1995年 製作・監督・脚本/マイケル・マン 出演/アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ
大人なら、何事にも“プロ意識”を持って挑め!
ロバート・デ・ニーロ演じるギャングのボス、ニール。そしてアル・パチーノ演じるLA市警刑事のヴィンセント。ともに自分の仕事に過剰なまでのプライドを持った、プロ中のプロだ。そのうえ、名優同士がハイレベルの熱演を披露。絶対に譲れない男のプライドを表現したこの『ヒート』は、ハードな男の世界を体感させてくれる。
そんな男のプライドの中でも我らが参考にすべきは、 “プロ意識”の高さだ。強盗集団を率いるニールの場合、たとえば白昼、銀行へ押し入るシーンでは、その大胆かつ冷静な動きに犯罪者ながら“仕事人”としての完璧さが光る。それを象徴するのが、家具が一切置かれていない彼の自宅だ。この理由は、「30秒フラットで高飛びできるよう面倒な関わりを持つな」という言葉にある。要は、危険が押し迫ったときに身一つで逃げられるように。そして、大切な人がいたらその人まで巻き込まないように……っていう彼の哲学なわけ。犯罪者だということを除けば、その生業にストイックに向き合う姿勢やプロとしてのあり方は、男として学ぶべきところがある。
そしてヴィンセントもまた“仕事に憑かれた男”だ。仕事に没頭するとほかの事を忘れて行動してしまう性格。その代償として、家庭を失うという男の悲哀も突きつけられるのだ。この主人公2人を中心に『ヒート』に出てくる男たちに共通するのは、損得に関係なく、カラダの中から湧き出してくる“本能”が原動力になっているという点。実際には、まわりに迷惑をかけるので真似できないが、その本能のままに行動できる男らしい心意気だけは持っておきたい。

『ミッドナイトラン』
製作年/1988年 製作・監督/マーティン・ブレスト 脚本/ジョージ・ギャロ 出演/ロバート・デ・ニーロ、チャールズ・グローディン、ジョン・アシュトン
捕まえてからの護送劇が見どころ!
主人公ジャックは、マフィアの罠にはまって刑事の仕事を追われたバウンティハンター。ある日、彼は依頼主から、マフィアの会計士だったデュークという男を捕まえて連れてくるよう頼まれる。大金を横領して慈善団体に寄付したため、追われているデュークは身を隠していたが、ジャックはデュークを難なく見つけて連行。ところが、マフィアはもちろん、その犯罪を暴こうとするFBIが行く手に立ちはだかる。危機に直面した彼らの運命は!?
バディムービーの名作としても知られるサスペンスアクション。現代のアメリカの賞金稼ぎは保釈金業者からの依頼で、保釈中に逃亡した者を捕まえることが主たる仕事だが、本作のジャックはその専門家。元刑事らしく探偵の資質にも優れている。根はやさしいが、過去の苦い経験から、少々やさぐれ気味。そんな彼がマジメで、どこか天然ボケのデュークとの交流により、変わっていくのがドラマの妙味。アクションやデ・ニーロの妙演も見どころだ。

『ザ・ダイバー』
製作年/2000年 監督/ジョージ・ティルマン・Jr. 脚本/スコット・マーシャル・スミス 出演/ロバート・デ・ニーロ、キューバ・グッティング・Jr.、シャーリーズ・セロン
人種の壁を乗り越えて潜水士を目指す!
海軍に入隊したアフリカ系アメリカ人のカール・ブラシア(キューバ・グッディングJr.)は、厳しい現実にさらされながらもやがて潜水士を目指すように。白人兵しか入所が認められていない養成所へ100通にも及ぶ嘆願書を提出し、黒人兵として初めて入所。伝説のダイバーとして名を馳せる鬼教官ビリー・サンデー(ロバート・デ・ニーロ)の下で過酷な訓練に身を投じることになるが……。
1940年代末を舞台に、アメリカ海軍史上初めて黒人のエリート潜水士“マスターダイバー”となったカール・ブラシアの実話を映画化。人種差別のみならず、その先に待ち受ける悲劇にも屈しなかった彼の軌跡に心を揺さぶられる。

『ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ』
製作年/2005年 監督/ジョン・ポルソン 出演/ロバート・デ・ニーロ、ダコタ・ファニング、ファムケ・ヤンセン
驚愕のラスト15分!
ラスト15分の衝撃が話題となったサスペンススリラー。母の自殺にショックを受け、心を閉ざした9歳のエミリー(ダコタ・ファニング)。心理学者の父デイビッド(ロバート・デ・ニーロ)は娘の心の傷を癒そうと、湖に程近い静かな町へ移り住む。だが、エミリーは“見えない友達”のチャーリーと遊ぶようになったうえに、次々と怪事件が起こり……。
<ここからネタバレ>
チャーリーはデイビッドの別人格で、妻の浮気を知った彼が自殺に見せかけて殺したことが発覚。自分の中のチャーリーを自覚したデイビッドの暴走により、周りの人間やエミリーまでもが命を脅かされていく。ハリウッドきっての名優デ・ニーロと天才子役として名を馳せていたファニングの鬼気迫る競演が、衝撃のラストに拍車をかけた。

『グッド・シェパード』
製作年/2006年 製作・監督/ロバート・デ・ニーロ 共演/マット・デイモン、アンジェリーナ・ジョリー
監督としての力量も発揮!
ロバート・デ・ニーロの長いキャリアの中で、『ブロンクス物語/愛につつまれた街』に続いて2本めの監督作。もともとフランシス・フォード・コッポラが監督する予定だったが、コッポラは製作総指揮に回り、デ・ニーロにバトンが渡された。とはいえ、重厚かつ骨太な演出力で、監督としての手腕をきっちりと発揮。マット・デイモン、アンジェリーナ・ジョリーという大スターが共演し、デ・ニーロ自身も主人公を諜報機関に誘う将軍役で登場する。
大学生のエドワードが秘密結社に参加したのをきっかけに、やがてCIAの有能な諜報員になるまでを描く。愛する女性がいながら、友人の妹を妊娠させ、結婚するなど私生活のドラマと、世界の運命も左右する仕事の両面を、じっくりと見据えた力作。
デ・ニーロによると「実際のCIA職員が完成作を観て、納得してくれた」とお墨付きをもらったそうで、内部の裏切り者や対立する国のスパイとの攻防など、徹底してリアルだ。メリハリのある展開で、2時間47分という長さを飽きさせない。

『トラブル・イン・ハリウッド』
製作年/2008年 製作・出演/ロバート・デ・ニーロ 製作・原作・脚本/アート・リンソン 製作・監督/バリー・レビンソン 出演/ショーン・ペン、ブルース・ウィリス、ジョン・タトゥーロ
映画プロデューサーの苛烈な1週間を描く!
主人公は離婚歴のある映画プロデューサー、ベン。カンヌ映画祭に出品するための作品が試写で不興を買い、怒るスタジオの社長をなだめつつ、彼は気まぐれな監督に再編集をするよう頼みこむ。一方では新作の撮影を控えていたが、主演のブルース・ウィリスは製作陣の意向に反し、ヒゲ面で出演すると言って譲らない。おまけに、未練を残している元妻に新たな恋人の影がちらつき、ベンはどんどんストレスをため込んでいく……。
『ヒート』『ファイト・クラブ』などを製作したアート・リンソンの回顧録に基づくシニカルコメディ。映画プロデューサーの胃が痛むような一週間の奔走を、ユーモラスに描く。ロバート・デ・ニーロが主演を務め、周囲の人々の主張やわがままに振り回されっぱなしの苦労を体現。映画を一本作り上げるために、どれだけの人間がかかわり、どれほどの苦労がついてまわるのかが、よくわかる。

『マイ・インターン』
製作年/2015年 製作・監督/ナンシー・マイヤーズ 共演/アン・ハサウェイ、レネ・ルッソ
一歩引いた受けの名演技に唸る!
最近のロバート・デ・ニーロは、“老いて、なお過激”と“いい人オーラ”という両面で活躍中。前者の代表格が『アイリッシュマン』での暗殺も請け負うドライバー役なら、後者は『マイ・インターン』だろう。
通販サイトの会社に、シニア・インターン制度で採用された、70歳のベン・ウィテカー役。パソコンの使い方にも疎い彼だが、自然体でやさしい人柄のおかげで、若い社員にとって“癒し”の存在になっていく。なかでも仕事とプライベートの両面に問題を抱える女社長ジュールズには、ベンが長い人生経験を生かした最高のアドバイスを与える。
年齢差によるカルチャー・ギャップでほっこりした笑いを届けつつ、シリアスなトラブルには冷静に、的確に対処して胸を熱くさせる。そんなベン役で、デ・ニーロはあくまでも自然体。ジュールズ役のアン・ハサウェイを前に、一歩引いた受けの演技には、長年のキャリアの余裕が感じられ、デ・ニーロのファンなら感動せずにはいられない。
ストーリー自体はわりと予想どおりだけれど、そうした安心感もデ・ニーロ映画としては異色。若い世代にとって、“理想の上司”“理想のおじいちゃん”が、ここにいる!

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
製作年/2023年 製作総指揮・出演/レオナルド・ディカプリオ 原作/デヴィッド・グラン 製作・監督・脚本/マーティン・スコセッシ 脚本/エリック・ロス 出演/ロバート・デ・ニーロ、リリー・グラッドストーン、ジェシー・プレモンス、ジョン・リスゴー、ブレンダン・フレイザー
デ・ニーロと激しい火花を散らす!
マーティン・スコセッシ監督作品といえば、初期は『タクシードライバー』や『レイジング・ブル』などロバート・デ・ニーロが計8回、近年は『ディパーテッド』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などレオナルド・ディカプリオが5回主演を務めている。作品の“顔”をもいえる2人が、スコセッシの下で初共演。1920年代の米オクラホマを舞台に、先住民のオセージ族の連続怪死事件と、その事件の捜査をきっかけにFBIが誕生したドラマが展開していく。アメリカの歴史の知られざる一断面を、スコセッシらしい重厚で骨太、そして衝撃と映像美たっぷりに演出。オセージ族の協力も得て再現された文化、そして時代の雰囲気に文句なく没入させてくれる。
ディカプリオは第一次世界大戦の帰還兵アーネスト役。彼を待っていたのは、デ・ニーロが演じる叔父のウィリアムで、言葉巧みに甥をオセージ族のモーリーと結婚させる。そこからウィリアムの企みをアーネストが実行。アーネストはさらに別の人物に危険な行為を依頼し……と、無自覚に悪意が広がるプロセスに、2人の名優のカリスマティックな実力が最大限に生かされ、何度も背筋が凍る。




































































