“最強”を目指し駆け上がる世界3階級制覇王者【中谷潤人】、頂点を目指すための成長の糧を得た一戦!
王者・井上尚弥との無敗同士の頂上決戦で辛くも敗戦したものの、歴史的名勝負と評される激闘によってボクサーとしての評価を一段上げた中谷潤人。頂点を目指す長身サウスポーが、“世紀の一戦”で得たものを語る。
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ボクシング選手 中谷潤人
1998年、三重県生まれ。2020年11月にWBO世界フライ級王座を獲得し、2023年5月にWBO世界スーパーフライ級王者となって世界2階級制覇を達成。2024年にWBC世界バンタム級を制し、3階級制覇達成。4度の防衛後、2025年スーパーバンタム級に転向。
今年5月に東京ドームで開催され、日本のボクシング史に名を残す名勝負となった4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ。中谷潤人が王者・井上尚弥と激突した一戦は3-0の判定で井上に軍配が上がったが、ハイレベルな攻防が世界のファンを魅了。中谷にとっては、プロ33戦め初の黒星となった。
「はじめて負けを経験したという意味で、すごく大きな分岐点だったなと感じています。ボクサーの1敗はすごく大きいので、負けたらもうどん底というイメージを強く持っていました。でも、戦いを終えて、たくさんの人からいい反響をもらったり、“本当にいいファイトだった”という言葉をいただいたりしたことで、負けに対する自分の中のイメージや価値観が大きく変わった一戦でもあります」
一発当たれば終わりという、サムライの斬り合いのような緊張感に満ちた一戦。試合後の病室でその映像をじっくりと見直したという中谷だったが、案外すがすがしい気持ちだったという。
「終わった時点で、やれることはやったなという感覚でした。勝利する目標には達せなかったけれど、それ以上に得られるものが多かった試合だったと受け止めています。試合の展開としては、後半に自分からボクシングを作っていくためにも、前半をどう戦うのかが課題でした。意識したのは、自分のパンチのタイミングを相手にわからせないようにすること。いかに相手のパンチをもらわず、情報を与えないようにするのかというところは、チームとして想定どおりの戦い方でしたので、序盤においては自分の流れに持っていくプロセスは踏めていたと思います」
そんな意識を持って入った試合の前半は、高度な駆け引きが続く“チェス・マッチ”のような展開に。中谷も井上も相手の出方を注意深く観察しながら互いの駆け引きが激しく交錯する、静かながら熱い戦いが繰り広げられた。8ラウンドには互いにパンチを交えながらリング上で笑みを浮かべ合う一幕もあり、試合は一気に激戦モードに。しかし、10ラウンドにバッティングによって負った左目上の深いカットによって徐々に展開が変わり、王者に主導権を握られる結果となった。
「8ラウンドで僕と井上選手が笑い合ったシーンは、自分としても印象に残っている場面。ボクシングを心から楽しんで素直に出た笑顔だったので、ファンの人たちにも楽しんでもらえたかなと感じていますし、よいエネルギーを与えられたと思える場面でした。一生懸命時間を費やして取り組んでいれば、多くの人の心を動かすことができるんだという自信になりましたし、勝ち負け以上に価値のあるものがあるということも実感できました。自分がやってきたことは間違っていなかった。そう思えた戦いでもあったと思います。もちろんそれは、相手が井上選手だったからこそ得られたもの。井上選手は、試合の中での学習能力がすごく高く、その戦い方においても優れた選手。僕自身はどういう戦い方で入っていくかはある程度決めていて、そこは遂行できたと感じていましたが、ポイント的にどう見えていたかは別だった。ポイントをどう取るのかという部分でも、井上選手は優れていました。そんな井上選手と戦えたことで、相手主導ではなく自分主導でどうボクシングを組み立てるのかという部分やジャッジに対してどうアピールするかという課題も含め、多くの成長材料を得ることができたと思っています」
そんな激闘から約3カ月の休養期間を経た中谷は、8月に練習を再開。スーパーバンタム級で日本人4人めとなる世界4階級制覇を目指すことを明言した。同時に、目標であるPFP=パウンド・フォー・パウンド(全階級を通じての最強ランキング)1位への道筋を思い描く。
「PFP1位を目指すためには、現在のスーパーバンタム級という階級で世界チャンピオンになることが1番の近道です。現在のチャンピオンは井上選手ですから、当然ながら再戦も視野に入ってきます。そこにたどりつくためにも、井上選手が振り向いてくれるようなファイトをしていきたいと思います」
そんな中谷は、幼少期に長谷川穂積や山中慎介といった歴代チャンピオンに憧れ、ボクサーになる道に進んだ。
「長谷川さんや山中さんはかつて僕に夢を与えてくれた存在。同じように僕も多くの人に愛され、夢を与えられるボクサーになりたい。同時にファンのみなさんから温かい言葉やエネルギーをたくさんもらっているので、リングの上でそのお返しもしていきたいと思っています」
アーティスト 田村 大
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは16万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。Instagram:@dai.tamura
※『Safari』11月号206〜207ページ掲載
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illustration : Dai Tamura composition&text : Takumi Endo










































































