●今月のビジネスセレブ
ボルボ・カー・ジャパン 代表取締役社長
マーティン・パーソン[Martin Persson]Profile
1971年、スウェーデン生まれ。1996年、交換留学で初来日。翌年帰国し、リンショーピング大学大学院理学修士号、ボルボ大学院開発プログラムを取得。1999年、ボルボ・ジャパンに入社。キャリアを積み、2008年、本国のボルボ・カー・コーポレーションのグローバルCRM責任者に就任。その後、ロシア、中国に赴任し、ボルボ・カー・ロシア社長などを経て、2020年10月から現職。
アイ・ダブリュー・シー
ポートフィノ・クロノグラフ
●愛用歴/約8年
●使用頻度/週に1 ~ 2回
●購入場所/ドバイの〈IWC〉ブティック
ポートフィノの中でも高い人気を誇っているクロノグラフ。過不足がいっさいない研ぎ澄まされたデザインには風格さえ漂う。
「長く愛用していきたいので、昨年日本に来てからメンテナンスに出し、その際にストラップも新調したんです。日本の気候には合うとは言えないけれど、私はやはりアリゲーターストラップが好きなので、当初と同様のものを選びました」
IWC[アイ・ダブリュー・シー]
ポートフィノ・クロノグラフ
洗練されていながら、時計としての真価を追求し続ける質実剛健な一面も持ち合わせる〈IWC〉は、ビジネスセレブの間からも高い支持率を誇るマニュファクチュール。そのウォッチコレクションのなかでも、よりエレガントで知的な雰囲気を漂わせるのがこのポートフィノ。マーティンがセレクトしたのは、特徴的なプッシュボタンによってスポーティな躍動感も併せ持つクロノグラフ。ラッカー仕上げの独特なカラーニュアンスが洒脱なブルーダイヤルが静謐に個性を主張する。
名は体を表す。その言葉のように、時計は男の生き方を表す。そして時計選びのセンスは、どこかクルマ選びのそれと通じるものがある。
新卒で当時のボルボ・ジャパンに入社。キャリアを重ね、スウェーデン本社へと栄転し、昨年、ボルボ・カー・ジャパンの代表取締役社長として再来日を果たしたマーティン。〈ボルボ〉を愛し続けてきた男が選んだのは、〈IWC〉のポートフィノ・クロノグラフだった。
「今から約8年前、休暇で訪れたドバイの〈IWC〉ブティックで購入しました」
かねてから、「時計を買うなら〈IWC〉」と決めていたというマーティン。ラグジュアリーウォッチブランドのブティックが立ち並ぶドバイの街だが、他の店に入って流すことさえせず、〈IWC〉のブティックを目指した。
「腕時計はその人のパーソナリティを表すものだと思っています。我々男性にとっては、時計は唯一のアクセサリーなので、なおさら。〈IWC〉は時計をよく知っている人たちの間では有名なブランドですが、決して目立つデザインではないですよね。いい時計だけれど、これみよがしにはならない。その辺のさじ加減も含めて、直感的に、このブランドがいいと思って」
それは、ボルボ・カー・コーポレーションで、本国スウェーデンから最初の海外赴任となるロシアへ栄転が決まったタイミングだった。
「実は、ずっと海外に赴任したいと思っていたんです。その願いが叶い、これからまた頑張っていこう! と、そんな思いを込めました」
ボルボ・カー・ロシアでは副社長から社長代理へ昇進。その後、中国、そして再び本国で副社長職を歴任し、2019年にはボルボ・カー・ロシアの社長に。そして昨年、現職に就いたマーティンの、ビジネスパーソンとしての歩みは、常にこの〈IWC〉と一緒だった。
「みなさんご存知のように、〈IWC〉にはいろいろなウォッチコレクションがあります。本当のことを申しますと、ポートフィノではなくいちばん欲しいのはポルトギーゼだったんです」
ポルトギーゼは、言わずと知れた〈IWC〉のフラッグシップコレクションだ。
「でも、ポルトギーゼは当時の私にとっては若干予算オーバーで(笑)。でも、この“ポートフィノ・クロノグラフ”を選んでよかったと思っています」
マーティンの言葉どおり、ポートフィノはブランドの中で、エントリーモデル的な立ち位置といわれているコレクションだ。しかし、それでいながら、堂々とした名品としてのエレガンスを感じさせ、価格以上の価値を持つ「〈IWC〉の良心」と称賛を集める玄人好みの1本。このモデルを選んだマーティンの人間性やセンスが浮かび上がる。
「〈IWC〉の時計全般に言えることですが、この時計は極めてシンプル。だけど、究極の機能美、スタイリッシュなデザインで、品格があります」
このポートフィノはラッカー仕上げによる、ブラックに近い深いブルーの文字盤の色みもクールだ。
「これはブルーですか?」
光の角度によって、ブルーブラックのグラデーションを放つ自分の愛用機を見つめて、「それははじめて知りましたね。今までブラックだと思っていました」と屈託なく笑う。
この日はシンプルなスーツ&シャツのビジネススタイルに合わせていたが、どんな着こなしにもマッチするコーディネート力の広さも魅力だ。スウェーデン本社含めてカジュアルな社風というボルボ。オフィシャルなビジネスシーンでもタイドアップする機会は滅多にないという文化だそうだが、日本ではドレスアップする機会も多く活躍する場が増えるだろう。
「毎晩、寝る前に、リュウズを巻き上げる時間がとても好きです。これは自動巻きなので、手で巻く必要はないのですが、それが私のデイリールーティン。一日使って巻き上げる、ひとつの儀式のような習慣になっています」
そんなふうに寵愛を受け続けているポートフィノ。昨年来日してから、オーバーホールにも出した。
「ストラップの交換とメンテナンス合わせてなかなかの出費になりました。妻には怒られましたが(笑)」
機械式時計に必要なメンテナンスも怠らず、きっとマーティンの相棒となれたことを幸福に感じているに違いない。
「この時計で満ち足りていますが、またいつか、時が訪れたら、もう一本時計を購入したいなと漠然と考えています」
もし次に買うとしても〈IWC〉の腕時計と決めている。いい意味で、派手さはない。しかし、だからこそさりげなくセンスが光る。それは〈ボルボ〉の美学、そしてスウェーデンのデザインと多くの共通点を持つ。マーティンはこれからもこのクルマと時計を愛し続けていくだろう。
北欧デザインとテクノロジーの融合1927年、スウェーデンのイェーボリで創業したボルボ・カー・コーポレーション。企業目標「Freedomto Move(モビリティの自由)」を掲げ、個々のニーズを満たせる、持続可能で安全なモビリティをユーザーに届けることを目指し続けている。2021年上半期には過去最高の半期業績を発表し、自動車業界から耳目を集めた。日本におけるインポーターであるボルボ・カー・ジャパンは、2025年にEV販売比率35%、そして、2030年には国内で販売するすべてのモデルをEVのみとすることを発表した。
雑誌『Safari』10月号 P196~197掲載
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Martin Persson photo : Yoshifumi Ikeda(BOIL) text : Kayo Okamura