この作品、見逃してない?
U-NEXT『DUSTER / ダスター』 J.J.エイブラムスが描く70年代を舞台にしたクライムアクション!
J.J.エイブラムスといえば『スター・トレック』に『スター・ウォーズ』など、今やフランチャイズ映画の印象で語られることが多いが、ドラマのヒットメイカーとしても知られるところ。なかでも、2004年開始のサバイバルドラマ『LOST』は謎が謎を呼ぶ展開で視聴者を夢中にさせ、世界中で注目を集めた。作品の人気に呼応し、何名かの主要キャストがブレイクしたのも『LOST』の大事な功績。その1人がジョシュ・ホロウェイで、彼の演じた魅力的な詐欺師ソーヤーはシリーズ屈指の人気キャラクターとなった。
その経緯を知る人なら、J.J.エイブラムスとジョシュ・ホロウェイが再びタッグを組んだ『DUSTER/ダスター』に歓喜するはず。物語の舞台は、70年代のアメリカ南西部。暴力と混沌が渦巻く街で犯罪組織の一員として生きるジム・エリスの物語が展開するのだが、ホロウェイが演じているのがまさにこのジムという男。彼は犯罪組織のために働く何でも屋で、トラブルの解決から“ヤバいブツ”を運ぶこと、さらには逃走の手伝いまで、組織に頼まれたことなら何でもする。そんなジムの相棒が、作品タイトルにもなっている愛車の“ダスター”。劇中にはカーチェイスシーンもしばしば盛り込まれており、ハイテク勝負の現代流カーアクションとは異なるクラシカルなムードがたまらない。
クラシックカーの味わい深さに限らず、このドラマの第一の魅力は充満する時代の空気にある。ジムをはじめとする登場人物たちのファッションはもちろん70年代のもので、タイトなトップスとハイウエストのボトムス、それらのカラフルな色づかいを見るだけでウキウキさせられる。ジョシュ・ホロウェイの長い髪は一見『LOST』のソーヤー風だが、無人島でのサバイバルを強いられていたソーヤーよりよっぽどスタイリングに命をかけていそうで、毛先の遊び具合が70年代らしい。また、エルヴィス・プレスリーからハワード・ヒューズ、リチャード・ニクソンまで、当時の有名人がさりげなく物語に絡んでくることも。さらには、レトロなセットや小物までもがいちいち心をくすぐってくる。
物語自体は、シンプルに見えて複雑だ。組織のために危ない仕事を続けてきたジムは、ある日を境にFBIの黒人女性捜査官ニーナ・ヘイズ(レイチェル・ヒルソン)と深く関わることに。まだ新米のニーナは黒人に対しても女性に対しても目に見えた差別が横行するFBIの中で奮闘しており、ジムが忠誠を尽くしてきた組織を一網打尽にしようと考えている。そんなニーナのプランが、ジムを自分たちの仲間にして組織の動向を探らせること。最初は申し出に背を向けるジムだったが、やがて2人は極秘のパートナーシップを結ぶことになる。
危険ながらも安定した毎日から引きずり出され、裏切りという使命を背負わされてしまったジム。彼がニーナと手を組んだ背景には組織への疑念があり、ニーナに協力する中で疑念はどんどん膨らんでいく。一方、組織の壊滅を目指すニーナにも過去に事情があり、2人がどのような運命をたどっていくか、ハラハラせずにはいられない。また、ジムには元恋人との間に幼い娘がいるが、娘は彼が父親であることを知らず、たまに会う娘の前では“ちょっといい加減だが楽しいおじさん”として振る舞っている。ジムとニーナの任務が深みへと向かっていく中、家族への影響も無視できなくなりそうだ。
目に楽しい作品世界の中で、緊迫感がそこはかとなく漂い続け、のんびりとしたユーモアが時折顔を出し、不器用な者たちのあがきも成長も楽しめる。そこには当時の社会に対する痛烈なメッセージもあり、とりわけニーナの奮闘にはクエンティン・タランティーノが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でしれっとやってのけたファンタジーの痛快さも。見逃すには惜しい1作として、強くおすすめしたい。
『DUSTER / ダスター』U-NEXTにて独占配信中
製作総指揮/J・J・エイブラムス ショーランナー、脚本、製作総指揮/ラトーヤ・モーガン 出演/ジョシュ・ホロウェイ、レイチェル・ヒルソン
エピソード数/全8話
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