FCAジャパン、マセラティ ジャパン CFO――アレッシオ・トゥッチーロ
触れずとも素材のよさがわかるシックなスーツに、バイオレットがかったピンクの差し色をシャツとチーフで効かせる。その佇まい、コーディネートは、まるでピッティのスナップに登場するファッション関係者のような小粋さだ。
- SERIES:
- ビジネスセレブの「時を紡いで」 vol.05
●今月のビジネスセレブ
FCAジャパン、マセラティ ジャパン CFO
アレッシオ・トゥッチーロ[Alessio Tuccillo]
Profile
スイス生まれ、オランダ育ちのイタリア人。1992年にフィアットグループに入社し、2001年からCFO職に就く。その国際的な経歴により、ヨーロッパ全域でCFOの役割をカバーするまでに。そして2010年に日本での役職を任命され来日。現在はFCAジャパンのほか、マセラティ ジャパンのCFOも兼任している。
ジャガー・ルクルト マスター・コンプレッサー・ジオグラフィーク
●愛用歴/約6年
●購入場所/イタリア・ミラノの時計店
●使用頻度/週に2 ~ 3回
6時位置の回転ディスクで時刻を表示する都市を選択できるワールドタイムに加え、その上にはセカンドタイムゾーンを表示する逸品
「ヨーロッパとアメリカにある本社と、自分がいる日本、すべての時刻が一目瞭然です。ワールドタイムという複雑機能を搭載しながら、視認性もよく、とても実用的。ユーザーフレンドリーな時計ですね。操作が簡単なところも気に入っています」
ジャガー・ルクルト[JAEGER-LECOULTRE]
マスター・コンプレッサー・ジオグラフィーク〈右〉
ケースが反転するレベルソと並び、〈ジャガー・ルクルト〉を代表するマスターコレクション。スイス公認クロノメーターより厳格な、自社独自の規格“マスター100時間コントロール”にちなみ誕生し、様々なバリエーションを擁する。なかでも24都市表示を搭載したこのモデルは世界の時計愛好家からの憧憬を集める傑作として知られている
ジャガー・ルクルト ポラリス・クロノグラフ・ワールドタイム〈左〉
〈ジャガー・ルクルト〉のアイコンのひとつである1968年製のメモボックスからインスパイアされ、2018年に発表されたメンズウォッチコレクション、JLC ポラリス。2つのカウンターを備えたクロノグラフと、世界24都市の時間表示が可能なワールドタイムを搭載したコンプリケーションは、ケースに軽量で堅牢なチタンを採用していることも特徴的だ
それもそのはず、出生地こそスイスのベルンだが、アレッシオは生粋のイタリア人。とはいえ、スイス、イタリアのほか、オランダ、フランスと、様々な国で暮らした経験を持つ。この幼い頃から培われた国際感覚が、彼の時計選びの核になっているのかもしれない。
「ご覧のとおり、私はワールドタイムを搭載した時計が好きなんです」
取材当日持参した2本は、いずれも〈ジャガー・ルクルト〉の、ワールドタイムとGMT機能を搭載したコンプリケーション。同じブランドで、同じような機能を搭載した時計を2本! そう、アレッシオは心底、この〈ジャガー・ルクルト〉に惚れこんでいるのだ。
「〈ジャガー・ルクルト〉は、長い歴史を誇る素晴らしいウォッチメーカーですよね。そして、みなさんもご存知のように、時計のムーブメントを自社で一貫生産する技術を持つ数少ないマニュファクチュールです。自動車メーカーは自社内でエンジンを作るのは当たり前ですけれど、必ずしもそうでない時計界では、マニュファクチュールであることは、やはり大きな魅力だと思うのです」
アレッシオが最初に、いわゆる機械式時計を購入したのは約20年前に遡る。それは、〈ブライトリング〉のクロノ アベンジャーだったという。
「その当時はオランダに住んでいましたが、そのモデルがどうしても欲しくて、スイスにオーダーをかけ、4カ月ほど待ってやっと手にしました」
その後は、〈ショパール〉のミッレミリアなどの腕時計を経て、約6年前にこのマスター・コンプレッサー・ジオグラフィークを購入した。
「〈ジャガー・ルクルト〉というブランド自体に強く惹きつけられていましたが、決め手は24都市の時刻を表示するワールドタイムとGMT機能が搭載されているという点。もちろんほかのブランドにもワールドタイムの時計はたくさんありますが、これはとてもシステムがユニークで使い勝手がいい。私はこのとおり国際的な会社で働いていますので、いくつもの都市の時刻がすぐにわかるこの機構は、今となっては時計選びのファーストプライオリティになりました」
ブランドの背景、時計の機能、そしてデザイン――すべてアレッシオの心を満たしたマスター・コンプレッサー・ジオグラフィークだったが、また心揺さぶる時計が現れた。それが昨年発表されたジャガー・ルクルト ポラリス・クロノグラフ・ワールドタイムだ。
「ワールドタイムとGMT機能に、クロノグラフも搭載されたJLC ポラリスは、マスター・コンプレッサー・ジオグラフィークと似ているようで違う。1968年製の伝説の時計・メモボックス・ポラリスを現代的に甦らせたというストーリーにも惹きつけられました」
思えば、最初に手にした〈ブライトリング〉のクロノ アベンジャーも、〈ショパール〉のミッレミリアも、どちらもクロノグラフを搭載したエレガントスポーツウォッチ。アレッシオの好みは一貫してブレることはないようだ。
「よく言われていることかもしれませんが、時計はクルマに似ていると最近つくづく感じます。時計もクルマも、外見からは想像できないほど、その中には技術の粋が詰まっている。時計のムーブメントはクルマだとエンジンであって、そこに惹きつけられるんだと」
アレッシオの愛車は、〈アルファ ロメオ〉のステルヴィオ。
「メカとして最高を目指すというのはどこの自動車メーカーも同じだと思いますが、機械的な素晴らしさに加え、エモーションを掻き立てるエンジニアリングにするというのは、〈アルファ ロメオ〉にしかできない。それと同じものを、〈ジャガー・ルクルト〉や〈ブライトリング〉、〈ショパール〉などの時計に感じます。“時計はクルマに似ている”と言いましたが、たとえばクォーツ式の時計はクルマなら電気自動車だと思うのですが、私はそれらにはどうも心惹かれません。機械式の時計には、ムーブメントにエモーションが宿っていて、ハートビートを感じる。人生にはやはりエモーションが必要です」
お気入りのマスター・コンプレッサー・ジオグラフィークは、購入時についていたシックなブラックのアリゲーターから、明るいブルーのストラップにつけ替えた。アレッシオは時計を、ファッションとしても、まさにエモーショナルに楽しんでいる様子がうかがわれる。
「時計は私の個性の一部です。2つの会社の日本法人の財務を見るCFOとして、彩りのない数字と向き合う毎日、こういったカラフルなアイテムをまとって気分を高めて、仕事もエモーショナルに楽しみたいなと思っています(笑)」
Company Information
日本の自動車文化をより豊かなものへ
140カ国以上で事業を展開し、世界でおよそ500万台を販売する世界屈指の自動車連合であるFCAグループの日本法人。イタリアの〈アルファ ロメオ〉、〈フィアット〉、〈アバルト〉やアメリカを象徴する〈ジープ〉も手掛ける。日本市場では年間約2万台強の販売台数を誇り、2019年はFCAジャパンの9年連続の販売増と、販売・サービスネットワークのさらなる拡大を目指している。5月に発売された〈アルファ ロメオ〉のプレミアムスポーツサルーン“ジュリア”の限定車も話題に。
雑誌『Safari』8月号 P224・225掲載
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photo : Yoshifumi Ikeda(BOIL) text : Kayo Okamura