【オリンピック国立公園】壮大な自然が作り出す1枚の絵のような美しい景色
踏み込んだ瞬間に、今まで体験したことのない空気に包まれる。1年のうち10カ月にわたり雨や雪にさらされる温帯雨林の森だ。そして、孤独な海があり、野生植物に彩られる高原が広がる。
ワシントン州
オリンピック国立公園
ハリケーンリッジを起点として2000m級の高原にアクセスできる。春と秋咲く花は、ひとつのハイライト。冬はスキーヤーの聖地となる
アメリカの北西の角に位置するオリンピック半島。太平洋からの湿った風が吹きつけ、1年のうち10カ月にわたって雨や雪が降り続ける。「アメリカの中で最も湿った地域」と称される特異な環境によって生まれたのが、温帯雨林という珍しい植生だ。観光は乾季となる6、7月がいいだろう。
典型的な温帯雨林の景観を体験できるのが、パーク西部の“ホーの森”。トウヒ、モミ、スギ、ツガといった針葉樹がうっそうと生い茂り、シダ類などの下草が繁茂する。また、木の枝からは気根を持つコケが垂れ下がり、空気中の水分を吸収して生きている。奥入瀬渓谷が巨大に広がったといえば、イメージしやすいだろうか。
森に分け入るトレイルを歩くだけでも特別な経験だが、レンジャーツアーに参加すればより興味が深まる。同じように見えていた針葉樹の見分けがつき、不思議なエコシステムを理解できる。
パーク南部のクイノールト湖は温帯雨林の森にひっそりと横たわる。朝霧の中、静かにボートを漕ぎ出せば、神秘的な風景に包まれる。
半島の西海岸は1953年にオリンピック国立公園の一部に追加された地域。カラロック付近のビーチは遠浅で、ビーチコーミングを楽しむ人が散策している。また、数百年も海中で揉まれた大量の流木が打ち上げられている。白銀に光る流木が自然に積み上がった様子は壮観だ。
最北部のフラッタリー岬とラ・プッシュを結ぶパシフィック・コースタル・ハイクは、約50㎞、4泊5日のハイキングコースだ。寂しい海を見ながら歩き続ける旅は貴重な体験となるだろう。
エントランスシティのポートエンジェルスからアクセスのいいハリケーンリッジは、高山植物が楽しめる高原地帯。2000m級の山が望め、ウインタースポーツの拠点となる。
全米でも唯一といわれる温帯雨林の森。いろいろな針葉樹と、それと共存するコケ類が特異な風景を作り出す。木の影から妖精が現れそうだ
唯一無二の場所!
公園で出合える森の王者とマスコットキャラ!
ルーズベルトヘラジカ
海あり、森あり、亜高山帯ありと、オリンピック国立公園の自然は多様性に満ちている。当然、そこに生きる動植物の種類も多い。動物15種、植物8種はこのパークにしかいない固有種だ。森に棲むルーズベルトヘラジカ(エルク)は、シカの仲間でも最大級。成長したオスは500kgを超える。また、亜高山帯で見られるマーモットは日向ぼっこをする姿が愛らしい。
トレイルの終点は3股の雄大な滝!
ホーの森と並ぶ人気の観光スポットがソルダックだ。鬱蒼とした温帯雨林のハイキングトレイルが難易度に応じていくつも延びている。なかでもシンボル的存在なのが、ソルダック滝。流量豊かな川が3つに分かれて流れ落ちる様子は迫力満点。トレイルから間近に体感できる。ハイキングを終えたらソルダック温泉で疲れを癒そう。温度別に整えられたプールがきれいに管理されている近代的施設だ。子供から年配者までゆっくりと楽しむことができる。
アート作品のようないびつな“離れ岩”!
パシフィック・コースタル・ハイクの北部、フラッタリー岬とオゼットの中間のシシ・ビーチにポイント・オブ・アーチと呼ばれる景勝地がある。干潮時に現れる風と潮で削られた岩の連なりは、ひたすら続く砂浜のインパクトとなっている。シャッターチャンスは夕景。日没と潮時を確認して訪れたい。
高さ178フィートの世界最大級の標本
降水量が多い気候は針葉樹の規格外の成長も促す。クイノールト湖には世界最大のウエスタンレッドシダー(スギ)の樹がある。スギは通常、高さ35m、太さ2.4mほどだが、この個体は高さ55m、直径7m、樹齢は推定2000年だ。また、近くには世界最大のトウヒもあり、こちらは高さ47.8m、直径14.5m。
氷河が作った湖でカヤックを楽しむ!
パーク南西部のクイノールト湖は、森に囲まれる静かな湖。早朝には濃い霧が出て、幻想的な景観を演出する。早朝にそっとカヤックを漕ぎ出せば、特別な経験となるだろう。宿泊は湖畔にあるキャンプ場のほか、クラシックなレイク・クイノールト・ロッジもおすすめ。ホテルから気持ちのいいトレイルにアクセスできる。
電話:+1-360-565-3000
URL:https://www.nps.gov/olym
開園:年中無休
入場料:自動車$30、オートバイ$25、自転車・徒歩$15 ※7日間有効
国立公園指定:1938年6月29日
面積:約3731㎢
旅の準備
オリンピック半島の中心にある亜高山地帯を中心に自転車のスポークのように道が延びている。観光ポイントをまわるルートをよく検討しておく必要がある。
旅のヒント
エントランスシティであるポートエンジェルスから反時計回りに101号線を行くといい。観光を終えてまた101号線に戻って進むと、半島をぐるりと1周できる。
注意点
半島の西側と東側では気候が大きく違う。西側は全米で最も雨が多いことで知られる。東側は亜高山帯でウインタースポーツが盛ん。服装には注意が必要。
ベストシーズン
パークの特異な森の景観は温帯雨林という特殊な気候によって作られる。乾季は6月と7月のみ。そのほかは雨や雪の日が多い。観光は乾季の2カ月がおすすめ。
行き方
シアトルからフェリーでベインブリッジ島へ。そこからポートエンジェルスまでクルマで約100㎞、1時間。ポートエンジェルスにもローカル空港がある。
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雑誌『Safari』3月号 P184~187掲載
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text : Shintaro Makino photo by AFLO