【鈴木武蔵】初A代表での国際試合で感じた世界レベルのDFの強さ! コロンビア戦で見えた 理想のFW像への道!
サッカー日本代表における1トップの座を奪取することに、意欲を燃やす鈴木武蔵。真のストライカーとしての覚醒を求めて海外に渡った。そのきっかけは、初招集・初先発を果たして苦杯を飲んだ、A代表デビュー戦にあった。
- SERIES:
- アスリートの分岐点! vol.17
MUSASHI SUZUKI
TURNING POINT
2019年3月22日
キリンチャレンジカップ
VS コロンビア
ベルギー1部のベールスホットVAで背番号10を背負う鈴木武蔵。日本代表で絶対的な選手になると誓い、海外での挑戦を続けている。そんな鈴木が今回、ストライカーとしての気づきがあったと語ってくれたのは、2019年3月に行われたキリンチャレンジカップのコロンビア戦。このゲームが国際Aマッチデビュー戦となった鈴木は、1トップとして先発。2列めの堂安 律、南野拓実、中島翔哉と攻撃陣の1人として、南米の強豪チームに対して果敢に挑んだ。
「世界との差を感じた試合。その一言につきます。もちろん、それ以前も各年代の代表の試合で感じたこともありますが、この試合でマッチアップした相手DFには、ジェリー・ミナやダビンソン・サンチェスといったプレミアリーグで活躍している選手もいました。世界のトップレベルで常にプレイしている選手と対峙したわけですから、やはりアンダーのカテゴリーとは圧倒的な違いがありましたね」
この試合で日本代表は、序盤からゴールへ迫り、37分には鈴木が決定機を迎えたシーンもあった。左サイドの中島が放ったクロスを、相手DFのマークを絶妙に外しながらヘディングで合わせたのだが、惜しくもゴールの枠を捉えることはできず。その後も鈴木は持ち味のスピードを生かして守備の裏を狙い続け、前線で体を張ったポストプレイも見せたものの、後半20分の交代までに放ったシュートはわずか1本。試合自体は、後半開始早々から守備の局面が続き、64分に相手に与えたPKによる得点を覆すことができず。0対1の敗戦となった。
「対戦して感じたのは、相手チームの選手は全員、基礎の身体能力が高いということ。特にDFはカラダが大きくてゴツいのに、足も速い。やっぱりこういう相手と毎日のように練習をしたり、試合をする環境は海外にしかない。だから、自分自身も早くそうした環境に身を置いてメンタル的にもフィジカル的にももっとタフにならなきゃいけない。そして、ストライカーとして、もうひと段階成長したい。この試合を経て、その思いがよりいっそう強くなりました」
世界と戦ううえでのフィジカルの強さの必要性は、カラダでも体感したという。
「この試合が終わった後に、まるでハードな筋トレをやった後みたいにめちゃくちゃ筋肉痛になったんです。こんなサイズ感の人間と毎日サッカーをやったら、やっているだけで成長できる。これは、スゲエって思いましたね(笑)。もちろん日本人選手にも速さがありますし、また違ったよさがあるとは思うのですが、フィジカルの違いはベルギーに来てからも日々感じていること。体重でいうと僕は76㎏ぐらいですが、こっちの選手は85㎏とか90㎏が普通です。そんなゴツいカラダで、動きも速いわけですから」
フィジカルに加え、意識的にも変化の必要性を感じたことがあるという。
「フィジカルの強い相手と対等に渡り合えるカラダは、すぐには作れません。ただ、大きいDFが嫌がるところを突いていくことはできます。簡単にいえば、動きの質ということなのですが、もっと頭を使えるフォワードにならなくてはならない。その意識が強くなったのも、やはりこの試合がきっかけでした。Jリーグでは興梠慎三選手や小林 悠選手のような動き出しは、見ていて非常に勉強になりますし、年齢を重ねた現在もトップで活躍し続けている理由がわかります」
ストライカーとしての成長を求めてベルギーに渡り、2年めのシーズンを迎えた。果たして、手ごたえはあるのだろうか。
「メンタルがタフになった。それは間違いありません。ここでは自分の軸を持ち、それをプレイとしても発言としても主張しなければ、チームメイトや監督の信頼を得ることはできません。昨シーズンは自分の軸がブレて落ち込んだこともありました。でも、今はそこを乗り越え、自分自身がやっていることに自信を持ち、それを曲げない強さを持ってプレイしています。チームとしては苦しい状況が続き、自分自身もなかなか結果が出せていませんが、自信は失っていません」
厳しい環境の中で手に入れた自信が、飛躍のきっかけになる。そう信じている。
「僕は、アンダーカテゴリーで活躍してきた選手ではありません。しかし、こうやっていくつもの試練を乗り越えていくことで、はじめて本当のストライカーになることができると信じています。そして、そんな自分を信じてくれている人のためにも、ここで毎日タフにサッカーと向き合う。今はそれしか考えていません」
サッカー選手
鈴木武蔵
Musashi Suzuki
1994年、ジャマイカ生まれ。桐生第一高校2年でU-16日本代表に選出される。高校卒業後にJ1アルビレックス新潟加入。2018年にV・ファーレン長崎、2019年に北海道コンサドーレ札幌に移籍。2020年にベルギー1部ベールスホットVAへ移籍。
TAMURA'S NEW WORK[〈西川〉の“エアー”]
〈西川〉と睡眠コンディショニングサポート契約を結ぶ、堀米雄斗。「写真や言葉では伝えきれない堀米選手ならではの躍動感を感じる作品になっていれば嬉しい。ちなみに、マットレスも実は写真ではなくイラストです。細かい描き込みも楽しんでもらえたら(笑)」
「堀米雄斗が輝く瞬間を描いた」
従来のアーティストがやってこなかった、新しい道を切り開いている田村 大。“アートによるブランディング支援”というテーマで取り組んでいる作品は、そのひとつ。今回紹介する、布団の〈西川〉の“エアー”シリーズとのコラボ企画はその好例だ。同社が眠りの面からサポートしているアスリートを紹介するシリーズの第一弾として、スケートボード男子初代金メダリストの堀米雄斗を描いた。
「質の高い眠りでトップアスリートのベストパフォーマンスを支えているのが、“エアー”のマットレス。僕の絵を通してその関係性を感じてもらいたいという思いを込め、堀米選手のエネルギーがほとばしっている瞬間を表現しました。太陽は描いていませんが、一部の影を強調することで堀米選手に光があたって見えるようにしています。写真とはまた違う手法で見る人の想像を掻き立て、アスリートを輝かせられる。そんなイラストならではの表現も、楽しんでほしいです」
アーティスト
田村 大
DAI TAMURA
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会、ISCAカリカチュア世界大会で総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは10万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。海外での圧倒的な知名度を誇る。Instagram:@dai.tamura
雑誌『Safari』3月号 P176掲載
“アスリートの分岐点”の記事をもっと読みたい人はコチラ!
illustration : Dai Tamura text : Takumi Endo photo by AFLO