【小林 悠】積み上げてきた実績の原点となる記念すべき一発! チーム、サポーターにFWと認めさせたJ初ゴール!
圧倒的な強さで首位を走り続ける川崎フロンターレ。その常勝軍団のストライカーとして、ゴールを量産する小林 悠。J1通算ゴールは歴代8位の126点。リーグ屈指の点取り屋の覚醒は、J1初ゴールから止まる気配がない。
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- アスリートの分岐点! vol.10
YU KOBAYASHI
TURNING POINT2011年5月3日
Jリーグディビジョン1 第9節
VS ジュビロ磐田戦
昨シーズンから続く連続無敗記録を23試合に伸ばし、首位を独走している川崎フロンターレ(第15節時点)。攻守で相手チームを圧倒していくアグレッシブなプレイスタイルを標榜し、リーグ屈指の得点力の高さを誇る。その前線を担うのが、川崎のゴールゲッター・小林 悠。相手の最終ラインで駆け引きを繰り返し、絶妙な動き出しからフィニッシュに持ち込む点取り屋として、数々の劇的なゴールを決めてきた。そんな小林が特別な試合として語ってくれたのが、2011年のJ1第9節のジュビロ磐田戦。クラブ入団2年めにして、待望のJ1初ゴールを決めた記念すべき一戦だ。
「入団初年度はケガの影響でほとんど試合に出られなかったので、その意味でも格別なゴールになりました。FWである限り、やっぱり常にゴールを求められているし、自分自身も点を取ってチームに認められたいという思いが募っていました。このシーズンは最終的にリーグ戦で12得点を決めることができたのですが、それもこのファーストゴールがあったからこそできたこと。FWはゴールを決めることでパスをもらえるようになるものだし、点を取っていてこそ中盤の選手も自分を探してくれるようになる。そういう意味合いで、この1点を決めたか決めなかったかによって、2011年の結果は大きく変わっていたと思います」
二桁得点の口火を切るゴールが生まれたのは、両チームスコアレスで迎えた試合終盤の90分。小宮山の左サイドからのクロスを、中央にいたジュニーニョが合わせてシュートを放ったが、DFによるブロックで阻まれることに。しかし、そのこぼれ球に反応したのがファーサイドにいた小林。右足でニアサイドに流し込み、試合を決定づける決勝ゴールがネットを揺らした。2連敗中だったチームを救ったゴールでもあった。
「後で動画を見返してみると、全然きれいなゴールじゃなかったんですけど、形とかはどうでもよかった。チームを勝たせるゴールを決めたい。その気持ちだけしかなかったですね。決めた瞬間は、気づいたらサポーターのいるスタンドに向かって叫んで走っていました」
小林が選手交代で試合に投入されたのは、試合後半の78分。0対0の均衡を打ち破る決勝点が渇望されるピッチで見事に結果を出したのだから、スタジアムが歓喜に沸いたことは想像に難くない。
「サポーターがものすごく熱く祝福してくれたことも、忘れられません。この初ゴールを決めたとき、サポーターの方から『ここから5点決めたらチャント(応援歌)を作ります』っていってもらえて。そんな言葉をかけてもらったら、やっぱり燃えますよね(笑)。自分だけの応援歌は絶対に欲しかったので、まずは5点という気持ちに切り替わりました。翌月の大宮戦で5点めを記録してチャントをいただき、最終的にシーズン12得点できたことは出来すぎかもしれませんが」
記念すべき初ゴールは、ワンタッチで決めたシュートだが、ポジショニングの巧みさや冷静なワンタッチは小林の持ち味としてよく語られるものだ。
「この試合の初ゴールもそうですが、たまたま目の前にボールが転がってきたように見える得点を決めることが多いんです。でも、ゴールに偶然はないというのが僕の考え方。FWとしては身長も高くなく、スピードもあるわけではない自分が、どうすれば点を取れるのかということを考え続けてきましたし、それは今も変わりません。ボールがたまたま転がってきたところにいるように見えても、動き出しやゴール前の詰めといったその前段階の動きがあって、結果としてそう見えていることが多い。だから、偶然のゴールではなく必然。そこにいることに意味があると思ってプレイしています」
名実ともに“川崎の顔”として、若手を牽引する役割も担うが、ゴールへの意欲はますます貪欲になってきたようだ。
「憲剛さん(中村憲剛)の存在は大きかったので、あそこまではできないかもしれませんが、僕なりに若手選手に伝えられることは伝えていきたい。ただ、若い選手に絶対に負けたくないという気持ちは強いですし、いい意味でギラギラしているところは変わらないですね(笑)。相手にしてもそういうFWのほうが嫌だと思いますし、ボールも自ずとそのほうが集まってくるので。ギラギラ感は絶対になくしたくないポイントです。シーズンはじめに必ず寝室の壁に目標を貼るのですが、今年書いた目標も“得点王”。その気持ちは、いつまでも変わりませんね」
サッカー選手
小林 悠
YU KOBAYASHI
1987年、東京都生まれ。町田JFCでサッカーをはじめ、麻布大学附属渕野辺高校、拓殖大学を経て2010年に川崎フロンターレ加入。2017年に得点王に輝き、リーグ制覇。また、この年からキャプテンに就任。昨季で5年連続二桁ゴール達成。
TAMURA'S NEW WORK[G-SHOCK]田村のイラストを用いた特大広告は、カシオ計算機本社がある初台駅の構内にも掲示中。八村塁選手が履いている〈ジョーダンブランド〉のスニーカーは、購入した製品を見ながらリアルさを追求したのだとか。細部にも見どころが満載だ
「自己ベストを更新した作品」
今回紹介する新作は、田村がかつてないことに挑戦した作品。“G-SHOCK”初となるWear OS by Google™搭載スマートウォッチ“ジースクワッド プロ GSW-H1000”の広告ビジュアルだ。
「Team G-SHOCKのNBAバスケットプレイヤーである八村塁選手と一緒にジースクワッド プロを描いた作品ですが、腕時計をイラストで表現したのははじめて。製品写真がない広告なので時計の魅力を伝えるためのリアルさを追求する一方、近くで見たときに僕の作品の強みでもある迫力あるタッチを楽しんでいただけるよう工夫を凝らしました」
八村選手の描き方もいつもと違う。
「八村選手がダンクを叩き込む一連の動きは、イラストでありながら動画のような躍動感を表現しています。アーティストとして常に自己ベストを更新していきたいというのが僕の考え方。今回の作品でもそれが生きたと感じています」
アーティスト
田村 大
DAI TAMURA
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会、ISCAカリカチュア世界大会で総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは10万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。海外での圧倒的な知名度を誇る。Instagram:@dai.tamura
雑誌『Safari』8月号 P166~168掲載
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illustration : Dai Tamura text : Takumi Endo photo by AFLO