【今井達也】ピッチャーとしての意識を変えてくれた味方のファインプレイ! 野手との信頼感、絆の大切さを実感した試合!
埼玉西武ライオンズの先発ローテーションを担う今井達也。エース候補として期待がかかる快速右腕は、全国制覇を成し遂げた甲子園の準々決勝が、ピッチャーとしての分岐点であり、原点。この試合の味方のプレイで、理想とするピッチャー像が見えたんだとか。
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- アスリートの分岐点! vol.16
TATSUYA IMAI
TURNING POINT
2016年8月18日
第98回全国高等学校野球選手権大会
準々決勝
VS 木更津総合
9月11日のオリックス戦で2年ぶりの完封勝利を達成し、今シーズンはキャリアハイの8勝をマークした今井達也。埼玉西武ライオンズの先発ローテーションの一角としてチームを支える投手となったエース候補には、ピッチャーとしてのターニングポイントとなった試合がある。それは作新学院のエースとして出場し、全国制覇を達成した2016年夏の甲子園の準々決勝。木更津総合の早川隆久(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)との投手戦が注目されたこの試合を9奪三振1失点で投げ勝ち、5年ぶりの4強入りを果たした。2試合連続で2桁三振を奪っていた今井は、この日も初回から三振の山を築き、好投を見せていたが、自分の投球以上に脳裏に焼きついているシーンがあるという。
「試合の終盤の8回に1死一塁という状況となり、相手チームの右バッターにレフト線を破るツーベースを打たれました。レフト線を破られたところを狙って走りだした一塁ランナーが三塁を蹴り、ホームに向かいました。レフトとショートが中継プレイでボールを繋ぎ、ランナーがホームベースにタッチする直前にドンピシャのストライク送球でタッチアウト。相手の追加点を防いでくれたんです。そのときのショートはキャプテンの山本拳輝選手だったのですが、試合は3対1の僅差で、しかも終盤で投手が疲れてくるところ。そういったタイミングで守備に助けてもらえたことで、9回からは自分が頑張らなくてはという気持ちに切り替わった。チームに助けられ、刺激を受けたことでピッチャーがもうひと踏ん張りできるという、野手とピッチャーの関係性や絆の大切さを、身をもって知った体験です。実際この試合では、守備にも打撃にも本当に助けてもらいました」
7回から8回にかけて疲れが見えていた今井だが、9回を迎えると仲間からの援護射撃に応えるように投球のギアを上げ、この日最速の152㎞をマーク。最後のバッターで9つめの三振を奪い、被安打6、1失点で完投勝利を成し遂げた。今井は優勝を果たしたこの大会でインパクトを残し、侍ジャパンU-18代表にも選出されたが、仲間とともに掴んだ勝利に大きな意味を感じているようだ。
「たとえば、守備のエラーのような味方のミスで失点したり、ランナーを許してしまったときは、ピッチャーがそこをカバーするべき。ひとつのエラーでピンチが広がったとしても、ピッチャーがバッターを三振で打ち取り、ピンチを脱したとなれば、やっぱりピッチャーに対する野手の信頼は厚いものになると思います。また、そのミスを取り返すために、打席に立つときは絶対打ってやるという気持ちになってくれたら嬉しいですよね。仲間のミスをカバーし合うことができる。そういうピッチャーになりたいですね」
理想とするピッチャー像については、こんな持論も語ってくれた。
「第五の内野手ともいわれるピッチャーですが、ボールを持っている以上はバッターに対して攻めていける権利がある。守備でも相手に対して唯一攻めていけるポジションだからこそ、チームがピンチのときほど攻めていくという姿勢を持っていたい。そこがピッチャーの面白さであり、好きなところでもありますね」
今期は、はじめて規定投球回数に到達し、監督選抜で初のオールスターゲームにも選出。自身で掲げた2桁勝利の目標は達成できなかったが、エースへの階段は着実に上っている。
「埼玉西武ライオンズの場合は、髙橋光成さんや松本 航さん、平良海馬といった非常に若いピッチャー陣なのですが、だからこそもっと野手に負けないくらい投手陣も頑張りたい。僕の場合は、先輩投手の背中を追いかけながらではありますが、年齢関係なくピッチャー陣の中で刺激し合う関係でありたいです。そういった環境の中でもっともっと頼れるピッチャーになっていきたいですね。技術的な部分では、ストレートの質を上げる、カットボールのような小さく動いて芯を外すような変化球。それで内野ゴロを打たせたり、球数を減らすなど、先発投手としての武器になるのでいろいろ試しながら磨いています。シーズン中は毎試合毎試合、その日のコンディションがいいときもあれば、そんなによくないときも絶対あります。そうした中で、先発ピッチャーとして最低限成し遂げなくてはならない仕事をどれくらいできるのかが一番重要。そのレベルをできるだけ上げていきたい。まだまだ現状の数字には全然、満足していないですからね(笑)」
プロ野球選手
今井達也
Tatsuya Imai
1998年、栃木県生まれ。強豪作新学院高のエースとして2016年夏の甲子園で全国制覇。同年のドラフト1位で埼玉西武ライオンズ入団。2年めとなる2018年に初登板初勝利を飾り、2019年にプロ初完投。今期自身初の規定投球回数に到達し、2年ぶりの完封勝利を達成。
TAMURA'S NEW WORK[ハイパーカー]
強いエネルギーとともに感じさせる品格を表現するために、写り込みを省きながら車体の光沢感を、ハイライトを生かす手法で再現した。“シアン”という名称は、ボロネーゼ地方の方言で“稲妻”を意味する言葉。時速350㎞超のパワフルな走りが自慢。
「秘めたエネルギーを感じる作品に」
田村が今回、描き下ろした新作のモチーフは、〈ランボルギーニ〉の“シアン”。従来のバッテリーの3倍パワフルなスーパーキャパシタを初搭載した、3億円超えのハイブリッド・ハイパーカーだ。
「購入した方のご友人から、納車式に驚きのあるプレゼントを贈りたいという依頼を受けて描かせていただきました。凄まじいエネルギーを秘めたクルマなので、それを表現できるよう背景などの余計な要素を削ぎ落としています。アプローチとしては、アスリートを描くときに近いものがあります。同時に、描いていて、造形自体がアート作品のように美しいものだということが伝わりましたね」
クルマをはじめて描き、発見も。
「このハイパーカーも僕が描いているアートも、なくてもいいものかもしれない。けど、それがあることでライフスタイルを豊かにしてくれる。価格は全く違いますが、共通する価値を感じながら作品を描けた貴重な体験でした」
アーティスト
田村 大
DAI TAMURA
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会、ISCAカリカチュア世界大会で総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは10万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。海外での圧倒的な知名度を誇る。Instagram:@dai.tamura
雑誌『Safari』2月号 P174~176掲載
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illustration : Dai Tamura text : Takumi Endo