【林 大地】サッカー選手としての未来を書き換えた国際試合! 五輪出場と海外移籍を掴んだ劇的な勝ち越しの1発!
東京五輪でインパクトを残し、ベルギー1部に挑戦の場を移した林 大地。“ビースト”の異名を持つストライカーが次世代FWとして注目を浴びるきっかけとなったのは、あざやかな決勝弾を決めたU-24代表デビュー戦だった。
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- アスリートの分岐点! vol.15
DAICHI HAYASHI
TURNING POINT2021年3月29日
セゾンカードカップ2021
VS U-24
アルゼンチン
がむしゃらにゴールに向かうプレイスタイルでサガン鳥栖での初年度に9ゴールをマークし、東京五輪代表の狭き門をこじ開けた林 大地。ビーストの愛称で知られるアタッカーのターニングポイントとなった試合は、U-24日本代表が東京五輪に向けた強化試合としてU-24アルゼンチン代表と対戦した一戦。この試合で初招集された林は、初先発でゴールを決め、鮮烈な代表デビューを飾った。当初はこの強化試合のメンバーに林の名前はなかったが、堂安 律の負傷による辞退を受けて追加招集となった。
「目の前にチャンスが転がり込んできたので、生き残るためにとにかくインパクトを残してやろう。その気持ちだけで試合に臨みました。自分はFWなので、やっぱり生き残るためには、得点という目に見える結果が必要ですから」
1トップで先発した林は、前半の終了間際の45分、相手DFラインの裏に飛び出し、瀬古歩夢から引き出した絶妙なロングフィードを右足で流し込んでゴールネットを揺らした。あざやかなゴールに加え、トレードマークになっている得点後の野性的な雄叫びも強烈な印象を残した。試合は、南米の強豪から勝ち取ったこの先制点で3対0の勝利を掴んだ。
「後から映像を見返してみると、ファーストタッチもしっかりできていたし、フェイントも1回入れて、キーパーの動きも冷静に見ていました。一連の動作に、無駄はなかったと思います。この得点でその後の東京五輪に出られるのか出られないかという可能性が首の皮一枚繋がったなという感じでしたね。全く皮が繋がっていなかったところから、このゴールを決めたことで、“なにかが起きるかもしれない”という雰囲気に変わった。それなりの爪痕は残せたと思います」
得点という結果だけでなく、前線からの守備や身体を張ったボールキープといった献身的なプレイでも勝利に貢献した。
「東京スタジアムで行われたU-24アルゼンチン代表との1戦めでは、得点を奪えず1対0で完封負けでした。自分はラスト3分くらいに入ってボールには触れていなかったのですが、ベンチから見ていたときに気になったことがいくつかありました。たとえば、FWに対してですが、相手チームの選手はなにもないところからバーンってカラダを当てたりするような汚いことをやっていました。南米の選手はこういったプレイをよくするのですが、それに対して縮こまっていたら好き勝手やられてしまう。だから、2戦めでは自分からどんどん仕掛けていきました。アルゼンチンの選手は相手からやられるのは慣れていないなとは思っていたので、こっちからガンガンやってやろうと。それは意識していましたね」
記念すべき代表初ゴールを決めた試合で存在感をアピールした林は、強運も味方につけて東京五輪の代表メンバーに。当初はサポートメンバーだったが、登録枠が増えたことで本戦メンバーに選出される。全5試合中4試合で先発の座も射止めた。そして、「あのゴールから、いろいろなことが繋がって海外挑戦もできた」と語るように、サガン鳥栖からベルギー1部のシント=トロイデンへの移籍を果たす。しかも新天地では、さっそく第6節のセルクル・ブルージュ戦で先発出場し、ここでも初出場で初ゴールをマーク。貴重な決勝弾でベルギーデビューを飾り、チームの連敗を止めた。
「デビュー戦で、インパクトは残せたと思います。ベルギーでの数字的な目標としては、やはり移籍を発表したときに二桁ゴールを宣言したので、そこはしっかり取りたいですね。やっぱりA代表は目指したいところですし、選ばれるためにはこっちで試合に出て、得点という目に見える結果を残さないと」
そんな林は、第7節でも先発。自陣で奪ったボールをスピードに乗った爆走ドリブルで敵陣ペナルティエリア付近まで運び込み、ゴールを演出。闘志みなぎるプレイで、ベルギーでも“ビースト”の健在ぶりをアピールしてみせた。
「普段はそんなことないんですけど、昔からサッカーをやっているときだけは負けるのがものすごく嫌なんです。チームの負けもそうですが、目の前にいる奴に負けるのも嫌で(笑)。そういう思いが強いからこそ臆病にならず、勇気を持って果敢にプレイしたい。臆病になって縮こまってしまうのって、実は誰でもできることだし、簡単なこと。それよりも自分は“どうにでもなれ”という気持ちで、突っ込んでいく選手でありたい。そのスタンスを変えるつもりはないですね」
サッカー選手
林 大地
Daichi Hayashi
1997年、大阪府生まれ。中学校時代にガンバ大阪ジュニアユースに所属。履正社高校、大阪体育大学を経て2020年にサガン鳥栖加入。1年めでチーム最多の9ゴールを挙げる。東京五輪開催中に正式オファーを受けた、ベルギー1部のシント=トロイデンに2021年完全移籍。
TAMURA'S NEW WORK[田村 大 アート展示会]個展は〈アトモス〉千駄ヶ谷店のギャラリーにて、11/26(金)~11/28(日)に開催された。炎や樹木を描いた作品のほか、水やろうそくの炎を描いた作品も展示。合計55点に及ぶ作品には部屋に映えるサイズ感のものが多く、高さが130㎝に及ぶものも。
「アスリートと同じ躍動感を表現」
田村 大が、はじめての個展をスニーカーショップの〈アトモス〉千駄ヶ谷店で開催された。今回紹介するのは、そのために描き下ろした作品だ。
「今年の夏に〈アトモス〉と〈ナイキ〉のコラボで、アニマルシリーズという別注スニーカーが出て。そのグラフィックからインスピレーションを得て描いた動物画と自然モチーフの新作を今回の個展で用意しました。炎を描いた作品は、暖炉で燃える薪のように眺めてもらえたらと思い描いたもの。樹木の幹を描いた作品は、観葉植物のような存在に。インテリアになるものは、きっとアートにもなるはず。そんな思いを形にしてみました」
アスリート画とは違う作風が新鮮だ。
「でも、炎の躍動感や樹木が放つエネルギーを描いている点は、人物画と同じ。手描きにこだわっているのは、それを表現するためでもある。原画で見ていただくと、その力強さを感じてもらえるはず」
アーティスト
田村 大
DAI TAMURA
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会、ISCAカリカチュア世界大会で総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは10万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。海外での圧倒的な知名度を誇る。Instagram:@dai.tamura
雑誌『Safari』1月号 P198~200掲載
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illustration : Dai Tamura text : Takumi Endo photo by AFLO