ニューポートの活気の中心人物!
近頃ますます盛り上がりを見せる、ニューポートビーチ 。'60年代のスピリットを受け継ぎ、サーフィンと音楽とアートが融合したユニークな文化がこの地で発展を遂げてきた。今回紹介するリーバイも、フリーサーファーとして、そしてミュージシャンとして今のニューポートビーチをリードする重要な人物。その素顔は、まるでこの街のように自由で、遊び心にあふれていた。
今月のサーファー
リーバイ・プライリー
[LEVI PRAIRIE]
南カリフォルニアの中でも独特なビーチカルチャーを持つニューポートビーチ。'60年代にハリウッドスターが移り住んだことで、多くのバーが栄え、それとともに音楽シーンも発展。'80年代にはカラフルなウェットスーツとサーフボードを愛用する若者が増え、ニューウェイブやパンクの影響を受けた“エコビーチ”として名を馳せた。
常に新しいカルチャーを生み出してきたこのビーチだが、最近では若いサーファーが急増。いっそう盛り上がりを見せている。リーバイも、そんなムーブメントを牽引する1人だ。
「はじめてボードの上に乗ったのは8歳のとき。兄タナーがやっているのが楽しそうで、サーフィンへの興味が湧いたんだ」
最初は父の指導下で猛練習。その後タナーと一緒にニューポートビーチピアのそばで、荒波の日もノーウェイブの日もひたすらパドルしていたのだそう。
「はじめて波に乗れた瞬間は、まるで宇宙に繋がっているような浮遊感。楽しく自然と一体化できるスポーツに出合えたことに、今でも感謝しているよ」
彼のホームであるニューポートの人気スポット、ブラッキーズは、アレックス・ノストやロビー・キーガルといった有名サーファーたちも足繁く通う場所。リーバイは幸運にも、そんなレジェンドたちと一緒にセッションを楽しみ、スキルを磨いていった。
遊び心あふれる“ブラッキーズの先輩”たちから刺激を受け、独自のスタイルを身につけていくリーバイ。ロングボードで優雅にカットバックしたかと思うと、わざと不細工なポーズで波と戯れ、笑いも提供。その数分後にはキレのあるノーズライドを披露。と、エンターテイメント性の高いパフォーマンスは次第に注目を浴びるように。
大会でも上位常連となり、2018年にはジョエル・チューダー主催の〈ヴァンズ・ダクトテープ〉へも出場した。兄から受け継いだブランド〈ダッシュサーフボード〉のシェイパーとしても活躍し、同時に兄の〈タナーサーフボード〉もサポート。2人の息の合ったコンビは有名サーフ雑誌も取り上げるほど。現在2人は個性的なフリーサーファー兄弟として、国内外でその名が知られている。
ホームであるニューポートビーチのブラッキーズでライド中。トリップから帰ってくると、慣れ親しんだホームのよさを実感できるそう
尊敬するローカルのレジェンドサーファー、マイク・ロジャースとビーチで波情報を交換
フリーサーファーとして注目を浴びるかたわら、実はミュージシャンとしても活躍しているリーバイ。最近ではこの種のサーファーはさほど珍しくないように思えるが、彼は二足の草鞋をバランスよく履きこなし、着実にキャリアを積み上げている。
「はじめて弾いた楽器も兄タナーのギターで、確か12歳の頃。彼が両親からプレゼントされたギターを楽しげに弾いているのを見てうらやましく思い、彼のいない隙に弾いていたのを覚えているよ(笑)」
こちらも敬愛する兄の影響が垣間見えるエピソードだが、その翌年には高校の同級生と一緒にガンテス・ウォーリアーというバンドを結成。ギター&ボーカルとしてステージに立つ。'80年代パンクやニューウェイブにインスパイアされたサウンドで、20代に入るとさらに精力的に活動しようとするのだが、このバンドはどちらかというと余興メインのパーティバンド。リーバイは1人違和感を募らせていた。
とあるライブを終えた瞬間に、もうこれ以上続けられない、と自ら退きソロの道へ。それ以降は、リーバイ・ヨーカム・プライリー名義でシンガーソングライターとしてアルバムをリリース。パンクやニューウェイブの影響を受けつつポップで活力に満ちあふれた彼の音はマニアな人気を呼び、コロナ禍の前まではフェスやイベントなどのライブ活動で多忙だった。
最近では、自身のブランドのためにコマーシャルソングを制作、そちらも好評を博している。そのユニークでスキルの高いパフォーマンスは、彼のプレイフルなサーフスタイルにも通ずるものがある。聞けば、彼の母は若い頃ダンサーだったそう。自由な表現力は母親譲りなのかもしれない。
「サーフィンをすることで音楽活動へのモチベーションをキープできているんだと思う。音楽に行き詰まると海でクレンジングして頭をすっきりさせることもあるし、海と音楽は僕にとってどちらも重要なファクター。両方あってこそバランスが保てるんだと思うよ」
海から上がりサーフバンで素早く着替えを済ませ自宅のスタジオへ!
バンは自分でDIYをした自慢の1台。相棒的存在だ
ニューポートビーチから車で5分ほど陸に入ったコスタメサ。〈デイドリーム・サーフショップ〉やライブハウス、お洒落なカフェやバーなどが集結し、ニューポートビーチカルチャーの発信地として賑わっている。リーバイは幼少期よりこの近辺で育ち、今もこの地を愛するローカルだ。
昔からの友人も多く、交友関係も華やかに見えるが、彼のライフスタイルは意外とシンプル。朝は早く起きてヨガでカラダをほぐす。その後コーヒーを飲みつつ波チェック。兄のタナーと時間が合えば、早朝から一緒に海でセッションを楽しみ、家に戻って朝食を済ませたあとは、自宅に設置したスタジオで音楽活動。スタジオにはピアノ、ギター、ドラム、ドラムマシーン、マイクなど必要なものはすべて揃っており、友人のミュージシャンを招いたジャムセッションや、レコーディングも行うことができるようになっている。
と、誰もがうらやむ自由気ままなライフスタイルを送る彼。その時間に縛られないスケジュールを、いったいどうやって管理しているのかと聞くと、「直感に従うのみ!」との答えが。直感を信じ、自分の感覚に素直に生きているからこそ、いつでも輝いていられるのだろう。
「残念なことにコロナ禍でフェスやイベント、ショーなどの仕事は激減してしまったけど、そのかわり制作の時間が増えて充実した日々を送っているよ。近しい仲間や家族との絆も深まったし、そういう気づきも自分の作品に反映していこうと思っているんだ」
コロナの状況がおさまり普段の生活が戻ったら、ワールドツアーを予定しているのだとか。
自宅のスタジオにもサーフボードをディスプレイ。レコーディング前のリハーサルに没頭中
ホームポイント近くで不定期に開催されるフィッシュマーケット。家族のために新鮮な魚を購入するのも楽しみのひとつだとか
●ホームポイントはココ!
ブラッキーズ[BLACKIES]ニューポートビーチピアの北側に位置するポイント。ビーチブレイクだが、ロングからショートまで楽しめる。ここでは、アレックス・ノストはじめ、今をときめくアーティストサーファーたちが通い詰めるスポットとしても有名。
雑誌『Safari』6月号 P226~227掲載
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photo : Tom Cozad text : Momo Takahashi(Volition & Hope)