【脇坂泰斗】レジェンドの背番号を継ぐ布石となった試合!
川崎フロンターレU-18で育ち、阪南大学での成長が認められて古巣の主力となった脇坂泰斗。レジェンドの背番号を継承することが許された“川崎のプリンス”は、初先発戦で“プロとして第2のスタート”を切った。
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- アスリートの分岐点! vol.27
YASUTO WAKIZAKA
TURNING POINT
2019年5月3日
明治安田生命J1リーグ 第10節
VS ベガルタ仙台
常勝軍団での居場所!
J1屈指の攻撃力を誇る川崎フロンターレの中軸として、ポジションを確立している脇坂泰斗。アカデミー時代から尊敬していた川崎Fのレジェンド・中村憲剛が身につけていた背番号“14”を今シーズンから継承し、その重責を担う強い決意を持って戦っている。
そんな脇坂がサッカー人生における分岐点としているのは、プロ入り初スタメンを勝ち取り出場した2019年5月第10節のベガルタ仙台戦。ホームで3対1の完勝となったこの一戦で脇坂は、試合前に語っていた「ラストパスや得点に直結するプレイを意識したい」という意気込みをあざやかに体現してみせた。
前半からボールを支配していた川崎Fは、代名詞のパスワークで中央を崩し、前半13分に小林 悠が先制点を挙げた。この得点をアシストしたのが、相手陣内で守田英正が奪ったボールを田中 碧を介して受け、ラストパスで小林に繋げた脇坂だった。
さらに37分には、齋藤 学が中盤でインターセプトしたボールを受けた脇坂。右サイドをドリブルで仕掛け、相手DFをかわしてグラウンダーのクロスで長谷川竜也による追加点をアシスト。脇坂自身が持ち味として語る「ボールを受けてさばき、前と後ろを繋ぐ役割」を初先発でまっとうし、2アシストの活躍で勝利に貢献した。
「プロ1年めは2連覇を目指すチームの試合に絡めていませんでした。そこで自分をどうレベルアップしておくのかという土台作りに取り組み、2年めのシーズンに挑んでいました。ブレないメンタルを持ち続けながら積み上げてきた自信もあり、いつ試合に出してもらっても戦える準備はできていました。そういった流れの中でスタメンとして試合に出たというだけでなく、2アシストという目に見える数字の部分で結果を出せたのは、自分の中では非常に大きなことでした。練習を通して積み重ねてきた自信を試合の中で表現できたということが、またひとつ大きな自信になったと思います。自分がプロとしてやっていく中での2段階めのスタート。それがこの試合でした」
デビュー戦の緊張はあったものの、序盤から落ち着いてゲームを組み立てた脇坂は、負傷中だった中村憲剛に代わってトップ下を担い、存在感を発揮。川崎市商店街連合会がホームゲームで最も印象に残った選手をマン・オブ・ザ・マッチとして讃える“あんたが大賞”も受賞。サポーターから惜しみない賞賛を受けた。
「どのチームもホームは特別だと思いますが、この日はちょうどゴールデンウィーク真っただ中だったので大勢のサポーターのみなさんが来てくれていました。応援の声もすごかったことを今でも鮮明に覚えています。それと同時に、結果を出すことができたことをチームのみんなが一緒になって喜んでくれたことも忘れられません。チームメイトや監督を含めたコーチングスタッフは、その前の年から1年間、自分が続けてきたことを見てくれていたのはわかっていました。また、サポーターのみなさんも先輩たちも僕がアカデミーユース出身ということでずっと期待をしてくださっていました。試合にずっと絡めなかったときも、“待ってるよ”といった前向きな声をずっとかけてくれたのが心に響きました」
卓越したパサーであった中村憲剛とはまた違う、動きながらのプレイやコンビネーションで崩すという異なる持ち味を先発デビュー戦で発揮した脇坂。自ら志願した背番号“14”を背負って戦った今シーズンも、その存在感は際立った。
「僕たちは3連覇を逃した悔しさも知っていると同時に、2連覇したことで得た自信もあります。そうやって積み重ねてきた歴史を、うまく引き継いでいけるチームになってきていると感じています。たとえ敗戦してもそれを引きずるのでなく、その結果をどうやって次の試合に持っていくのかを考えられる集団になってきている。その中で僕のような中堅が押し上げる作業も必要だと思っています。ただ、だからといってチームのことばかり考えてしまうと、自分のよさを消すことになってしまいかねない。だから意識的に取り組んでいるのは自分のレベルアップにフォーカスすること。今シーズンでいえば、これまで以上に得点やアシストにこだわりはじめたところ。それがシーズン中盤以降の数字にも表れたと思います。Jリーグといえばフロンターレと誰からもいってもらえるくらいの常勝チームにしたい。そのためにも内容にはこだわりたい。そういった意味でも、自分のよさを出せることがチームにとってもプラスになる。そう考えています」
サッカー選手
脇坂泰斗
YASUTO WAKIZAKA
1995年、神奈川県生まれ。川崎フロンターレU-18から阪南大学を経て、2018年に川崎フロンターレ入団。2021年3月のW杯アジア第2次予選とアジア杯予選で、日本代表初選出。中村憲剛の背番号を継承して挑んだ今期第18節で、J1リーグ通算100試合出場を達成。
TAMURA'S NEW WORK
〈ウブロ〉×サッカー日本代表
ウブロ銀座ブティックでは、W杯グループリーグの期間中ビル全体がサムライブルーにライトアップされ躍動感あふれるイラストが浮かび上がる。日本代表の試合時は、光が点滅するイルミネーションを予定。表参道ブティックは店舗前の階段に作品が描かれている。
日本が熱狂する戦いに期待を込めて
〈ウブロ〉の表参道ブティックと銀座ブティックのビルや階段に、今にも飛び出しそうな迫力で描かれたサッカー日本代表選手たち。W杯カタール大会 2022オフィシャルタイムキーパーの同社が手掛けた日本代表オフィシャルウォッチ“ビッグ・バン e ブルー ヴィクトリー”発売を記念し、田村が描いたものだ。
「撮影に立ち合ってみなさんにポーズをとっていただいたのですが、吉田麻也選手が照れながらも全力で雄叫びなどをやってくれた姿から、チームを鼓舞しようという強い気持ちを感じました。キャプテンのこうした気持ちが伝播してチームの力になるのだと思いました。1人、1人の躍動感からも、そんな力や一体感を感じられる絵になっていれば嬉しいです」
〈ウブロ〉には、思い入れもあるようだ。
「憧れの存在でいつか仕事を一緒にしたいとの思いから、独立3年めに購入した“ビッグ・バン”を愛用してきました。夢がまたひとつ叶った作品でもあるんです」
アーティスト
田村 大
DAI TAMURA
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは20万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。海外での圧倒的な知名度を誇る。Instagram:@dai.tamura
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雑誌『Safari』1月号 P236~238掲載
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illustration : Dai Tamura text : Takumi Endo photo by AFLO