【荒木遼太郎】周囲の期待に応えた快挙達成の試合からの飛躍!
弱冠20歳にして、鹿島アントラーズの新10番を担う荒木遼太郎。パリ五輪世代の中心選手としての活躍にも期待が高まる攻撃的MF は、27年ぶりの快挙を達成した試合を自信に変え、さらなる飛躍を目指している。
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- アスリートの分岐点! vol.21
RYOTARO ARAKI
TURNING POINT2021年11月3日
明治安田生命J1リーグ 第34節
VS サンフレッチェ広島
チームタイトル獲得へ!
鹿島アントラーズ伝統の背番号10を背負って今期のピッチに立っている荒木遼太郎。東福岡高校から加入した1年めから26試合に出場し、2年めの昨期は10得点・7アシストという活躍でブレイクを果たした。10代での2桁得点到達は、1994年の城 彰二以来、27年ぶりの快挙。そんな荒木にとっても、この2桁の大台に到達した試合は特別な意味を持つ分岐点となった。
その試合は昨年11月3日、J1リーグ第34節のサンフレッチェ広島戦。4対1で勝利を収めたこのゲームで、荒木に得点のチャンスが巡ってきたのは、後半26分のこと。鹿島のMF和泉竜司がペナルティエリア内でファウルを受け、VAR判定でPKを獲得。キッカーとなった荒木は、ゴール右隅に決めた。
「あと1点で2桁ということは意識していたので、この日は決めてやろうと思っていました。だから、VARで確認を取っているときに逆サイドに向かって歩きながら、本来のキッカーである綺世くん(上田綺世)に、蹴らせてっていってみたんです。相手との点差もあったタイミングだったので、もしかしたら蹴らせてくれるんじゃないかと思って(笑)。綺世くんは、最初は聞こえなかったような素振りでボールに向かっていましたが、ハーフウェイラインあたりで、“いいよ、お前行ってこいよ”って譲ってくれて。綺世くんは優しいので、僕に蹴らせようって考えてくれていたようです」
キッカーを託された荒木は緊張もなく、実際落ち着いていたという。
「もし相手に読まれたら止められていましたが、自信はあったのでゆっくりキーパーの動きを見ながらコースを突けました。9点め以降、この10点めがなかなか決められなかった。だから得点後、ピッチでチームメイトに祝福してもらったときは本当に嬉しかったですね」
Jリーグ史上2人めという快挙を成し遂げた昨年は、柳沢 敦や興梠慎三が背負ったアントラーズエースナンバーの背番号13を託されてシーズンを戦った。
「背番号13を背負ったときのプレッシャーは、やっぱり大きかった。それと同時に、チームやサポーターの方々からの期待も感じることができました。それがプラスに働き、よいプレッシャーを自分にかけることができたからこそ、充実したシーズンを送れた。そう感じています」
プロ1年めから存在感を放ってきた荒木。東福岡高校時代は1年生のときから先発を務め、3年生のときには10番を背負う主将として名門チームを攻守で牽引した。そんな自分のプレイに確かな自信を持つ一方、プロの世界の厳しさも感じ、それを糧にしてきたようだ。
「プロになって、すぐに通用したとは思っていません。チャレンジ精神で食らいついてきたというのが、正直なところです。当たり前なのですが、同じ相手に同じ仕掛けは何回も通用しないですからね。1回抜いたら、また次は自分が変化しないといけない。常に進化し続けなくてはならないのがプロです。でも、それもプロ入り前から想定していたこと。そんな甘い世界じゃないと思っていたのですが、実際それ以上でした。日々厳しさやプレッシャーを感じていたのは確かなのですが、それを感じないくらい、毎日強い気持ちでサッカーをし続けてきたというのが実感です」
大ブレイクを経て迎えた今期は、これまでジーコやビスマルク、本山雅志、柴崎 岳、金崎夢生、安部裕葵が担ってきた背番号10に、自ら志願して変更した。
「高校と鹿島の先輩である本山さん(本山雅志)がつけていた背番号でもあるので、ずっと自分もつけたいと思っていました。少し迷った部分もありましたが、今年は10番を背負って戦いたいという気持ちが勝り、志願しました」
昨年末にはA代表にも初選出。パリ五輪世代としても期待が高まる荒木だが、国際舞台を見据える意味でも、チームで結果を残すことに強い意欲を示す。
「今シーズンの鹿島は、誰が出てもFWは強烈。前線の4枚で相手を崩すことができるメンバーも揃っています。もし失点しても攻撃でしっかり取り返すようなサッカーを、チームとしてやっていきたいですね。自分自身は10番をつけたことで、まわりの期待が高まっていることもわかっています。それに負けないように、持ち味であるゴールに繋がるプレイをしたい。そこから自分のゴール数にもこだわっていきたいですね。なにより、鹿島の歴代10番のように、チームにタイトルをもたらす選手になりたいです」
サッカー選手
荒木遼太郎
RYOTARO ARAKI
2002年、熊本県生まれ。名門・東福岡高校を経て、2020年に鹿島アントラーズ加入。レギュラーを掴んだ2年めに、ベストヤングプレイヤー賞受賞。日本代表では、2018年U-16選手権の優勝に貢献。3月のU-23ドバイカップ初戦で、U-21日本代表として決勝点をアシスト。
TAMURA'S NEW WORK
[WBAスーパー・IBF世界ミドル級王座統一戦]
WBAスーパー王者・村田諒太(帝拳)VS IBF王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)
「年齢を重ねたアスリートの多くがそうですが、村田選手もゴロフキン選手もボクサーとして経験してきたものが顔の表情に刻まれています。この作品ではディテールは控えめにする一方、陰影を生かすことで、そんな2人の顔の迫力のようなものを表現しています」
王者が背負ったものを感じる作品に
世界ミドル級王座統一戦で激闘を繰り広げた村田諒太とゲンナジー・ゴロフキン。その2人の精悍な表情が目を引く、オフィシャルTとマスク。2人の全身を描写する手もあったが、あえて顔だけ描いた。
「世界が注目していた一戦ということもあり、村田選手もゴロフキン選手も非常に大きなものを背負っている試合でした。顔だけを描く場合、躍動感が表現できなくなりますが、情報を削ぎ落とすことで2人の王者が背負っているものを強い眼差しで表現したい、と思ったんです」
余白の黒にも意味を持たせたという。
「この作品ではテクニックを詰め込まず、黒い余白を強調して描いているのですが、それはイメージで埋めてもらう余地を残すためのもの。アスリートの熱量を表現することも僕の作品のテーマ。この余白があることで両選手が試合にぶつけた熱量の高さが浮き彫りになり、それを感じるきっかけになってほしい。そんな思いも込めた作品です」
アーティスト
田村 大
DAI TAMURA
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは20万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。海外での圧倒的な知名度を誇る。Instagram : @dai.tamura
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雑誌『Safari』7月号 P204~206掲載
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illustration : Dai Tamura text : Takumi Endo photo by AFLO