薪や炭にこだわった〈銀座 炎 田むら〉の、香りまで楽しい日本料理!
銀座には一流の日本料理店が林立していて、日夜ゲストの舌を魅了している。新しい日本料理店がオープンしている中で、また注目店が登場した。
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- アレが食べたいからこの店へ! Vol.83〈銀座 炎 田むら〉
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- アレが食べたいからこの店へ! Gourmet Culture
〈銀座 炎 田むら〉は2025年7月10日のソフトオープンを経て、8月23日にグランドオープン。〈銀座 稲葉〉や〈麻布台 粋 稲葉〉を手掛ける稲葉正信さんの新業態とあって、食通たちがさっそく訪れている。
店内には大きな薪窯が据えられていて、薪や炭で創り上げられた料理を五感で堪能できるのが特徴。8席カウンターは、まるで舞台の客席のように臨場感があり、ゆらぐ炎を見ながらリラックスして食事できる。料理長の田村勝宏さん
料理長を務めるのは、稲葉さんからの信頼が厚い田村勝宏さん。2016年7月に最年少で〈コンラッド東京〉の〈日本料理 風花〉の統括料理長に就任。会席・鮨・鉄板焼を全て統括するなど活躍した。
手頃なランチ(9700円、1万4900円)もいいけれど、田村さんの類まれなるクリエーションを堪能したいなら、ディナー(3万1500円)で決まり! 薪窯が効果的に用いられた9品前後の料理が次々と提供される。“雲丹と湯葉馬鈴薯”
先附として供される“雲丹と湯葉馬鈴薯”は、グラス仕立ての軽快な一品。湯葉とジャガイモのペーストは、適度な弾力と甘味が食欲をそそる。その上には力強い雲丹と旨味のある琥珀ジュレがあり、ワサビが刺激的で、白いペンタスの花が愛らしい。“蒸し鮑と江戸菜”
贅沢なもうひとつの先附が、“蒸し鮑と江戸菜”。繊細な食味の江戸菜を薪で焼き、滋味のあふれる黒鮑は蒸した後に炙った。あしらわれたバチコ=“ナマコの卵巣の塩漬け”は旨味に富んでいて、酒肴にもぴったり。ポン酢餡が爽やかで、全体のバランス感がとれている。“鮪 薪の香り”
お凌ぎには、田村さんが自ら握る“鮪 薪の香り”。脂が適度に乗った中トロの漬けを炙って、マイルドな白シャリと合わせた。燻香豊かないぶりがっこがの塩味とシャキシャキ感が印象的。朝鮮唐津の“侘び寂び”の色合いが握りを引き立てる。“お造り”
器を縦に配した“お造り”は3種類あり、醤油なしで味わう。手前から順番に食べ進めると、だんだん味わいが強くなっていくのでおすすめ。手前は長崎県のアオリイカで、塩と酢橘でその快味を引き立てる。イサキには卵黄と肝のソースが乗せられているので、和えて食すのがいい。レッドソレルの赤が目を引く。奥は、上味をまとった鯛と塩昆布のジュレ。中にしのばされた赤おろしが刺激的。“毛蟹と冬瓜”
御椀は“毛蟹と冬瓜”で、毛蟹の出汁と葛の上品な汁物に仕上げられている。たっぷりの滋味あふれる毛蟹に、とろっとした冬瓜の組み合わせが出色。“太刀魚と茄子”
“太刀魚と茄子”は食味に優れた太刀魚に、口溶け感のある丸茄子を合わせた。太刀魚にはおかきをまぶして醤油を塗って焼き、ちょっとした変化を加えた。炭で瞬間燻製して、クローシュをかぶせるため、燻香を存分に楽しめる。“黒毛和牛サーロイン 自家製ブリオッシュ添え”
メインディッシュは“黒毛和牛サーロイン 自家製ブリオッシュ添え”。妙妙たる味わいの熊本県の黒毛和牛のサーロインに、黄と緑のズッキーニ、炙ったブリオッシュ、揚げたトウモロコシを添えた。コンディメントには金山寺味噌バター、ワサビ、塩が添えられるので、どれが好みか試してみて。“食事”
最後の“食事”も実に贅沢。新潟県のブランド米“雪椿”は、艷やかで粒が立っていて、乙な味わい。妙味に満たされた鰻のたれ焼き、馥郁たる味わいのストウブ鍋の牛タン煮込みと、“おばんざい”が充実しているのが嬉しい。左:かき氷 右:シャインマスカットとナガノパープル
甘味は水菓子とかき氷。前者はシャインマスカット、ナガノパープルで、後者は氷菓子ながらも年中提供されるシグネチャーデザート。マンゴーとマスカルポーネ、宇治金時、カボスヨーグルトの中からフレーバーがチョイスできて、定番は宇治金時。上品な風味と渋味をまとっていて、米粉のクランブルが小気味いい。
田村さんの料理にぴったりなお酒もある。困ったら、マネジャーの佐藤篤さんに相談してみて。左上:“ボランジェ スペシャル・キュベ” 左下:“田村 生もと純米” 右上:“スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ アヴィータ ソーヴィニヨン・ブラン 2023” 右下:“ダリオッシュ ナパ・ヴァレー メルロー 2018”
“ボランジェ スペシャル・キュベ”(3850円)は凝縮した果実味とまろやかなテクスチャーが感じられるシャンパーニュ。きめ細やかな泡立ちが食欲をかき立てるから、最初のグラスに最適だ。爽やかな酸味をもつのが“スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ アヴィータ ソーヴィニヨン・ブラン 2023”(2600円)。複雑な旨味が魅力的で、鮑との相性も抜群となっている。料理長の田村さんの名前と掛けた“田村 生もと純米”も外せない。白麹酒母仕込みによるみずみずしくきれいな甘味とキレがあって、握りやお造りに寄り添う。“ダリオッシュ ナパ・ヴァレー メルロー 2018”(5600円)は熟したブルーベリーの果実の味わいに、重厚感も感じられる。熟したほどよいタンニンがあり、しっかりしたテクスチャーなので、黒毛和牛に合わせたい。炎のゆらぎを眺めながら、田村さんの珠玉の料理を味わえるのは至福の時間。燻香を堪能できる日本料理を、とくとご賞味あれ!
●ディナー 3万1500円
・先附
雲丹と湯葉馬鈴薯
蒸し鮑と江戸菜
・お凌ぎ
鮪 薪の香り
・お造り
本日の三種盛り
・御椀
毛蟹と冬瓜
・焼物
太刀魚と茄子
・中皿
万願寺唐辛子
・強肴
黒毛和牛サーロイン 自家製ブリオッシュ添え ※追加料金でフィレにアップグレード可能
・食事
雪椿釜炊き御飯
おばんざい二種、留椀、香の物
・甘味
水菓子、かき氷
●銀座 炎 田むら
住所:東京都中央区銀座6-12-12 サクラマークスGINZA612 10F
営業時間:平日 17:00~21:30、土・日・祝日 ランチ11:00~13:30、ディナー17:00~21:30
定休日:不定休
TEL:03-6281-4040
URL:https://www.ginza-inaba.tokyo/en-tamura/
※サービス料込み
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1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。