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CULTURE カルチャー

2020.10.10


ダウンタウン ×『セブン』

基本的に映画はストーリーを楽しむものなので、撮影場所がどこなのか気にならない場合も多い。あからさまに観光名所が出てくる映画は別として、背景を意識しないで観た後に「実は、あの都市でロケしていたのか!」と驚くケースもある。ブラッド・ピットが主演した『セブン』も、そんな1本。映画史に残るこの衝撃作。多くのシーンがロサンゼルスのダウンタウン撮影されていた事実はあまり知られていないので、改めて紹介したい。

七つの大罪になぞらえた猟奇殺人事件を追う
『セブン』(1995年/アメリカ映画)

隠れた名所が存在する小さなエリア
ダウンタウン(カリフォルニア州/アメリカ)

 

 
● 原題:Seven
● 監督:デヴィッド・フィンチャー
● 脚本:アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー
● 出演:ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、ケヴィン・スペイシー

Story
ある街で、食べ物に顔を埋めた肥満の男の死体が発見される。その部屋には“暴食”という謎の文字が残されていた。続いて無残な殺人が起こり、その現場には“強欲”という文字が……。“七つの大罪”に沿って事件が続くと考えた刑事のミルズとサマセットは、ついに容疑者を見つけるが、激しい格闘の末に取り逃がしてしまう。

“七つの大罪”とは?
“暴食”“強欲”“怠惰”“肉欲”“高慢”“嫉妬”“憤怒”というのが、キリスト教による“七つの大罪”。罪そのものというより、人間を罪に導く要素ということで、連続殺人犯はこの七つの罪に従って標的を選んでいく。映画のタイトルもここから取られた。誰でも思い当たる欲望や感情かも!?

登場人物右:血気盛んな若手刑事
ミルズ(ブラッド・ピット)
新人刑事。先輩のサマセットとともに死体発見現場へ急行。殺人犯の手口に戸惑いながらも、決死の思いで捜査を続ける。私生活ではトレイシーという美しい妻がいて、サマセットにも紹介。

左:退職間近のベテラン
サマセット(モーガン・フリーマン)
ベテラン刑事。最初の2件の犯行から、犯人がキリスト教の“七つの大罪”に沿って殺人を続けることを予感する。退職まであと1週間というときの大事件に、刑事生命をかけることを決意。


映画を観ながら、その主人公になりきって気持ちを共有するのは、よくあること。それ以上に主人公の感覚を味わいたければ、その人物がたどった場所へ向かうのが最適……というのがこの連載の目的だが、ブラッド・ピットの気分になってもらうために、今月は『セブン』を取り上げよう。

監督はデヴィッド・フィンチャー。『ファイト・クラブ』、『ベンジャミン・バトン/数奇な人生』と、何度もブラピを主演に迎えている鬼才が、最初に彼と組んだのが、今から25年前の『セブン』だ。日本でも大ヒットしたし、おぞましい手口の連続殺人犯を描いた問題作なので、強烈なインパクトを記憶している人も多いだろう。本作でブラピが演じる刑事が奔走するのがロサンゼルス。しかし本編では都市の名前は出てこないし、なにも知らずに観たら、LAで撮影されたと気づかない可能性もある。

この映画は終盤のシーン以外、ほぼ雨が降っている。ご存知のとおり、LAの天気が雨になることは、きわめて稀だ。物語に合わせて観る者を徹底的にダークな気分に誘うための、フィンチャー監督のこだわりだが、逆に言えば、他の映画とは全く違うLAの風景と出合うことができる、貴重な一作なのである。主に撮影が行われたのは、LAのダウンタウン。ビバリーヒルズやサンタモニカといった“いかにも”なLAではなく、どこか危険な薫りが漂う街並みは、連続殺人の舞台にふさわしい。

実際に本作が撮影された'90年代は、LAのダウンタウンを旅行者が夜中に一人で出歩くなんて、もってのほかだった。しかし近年は、再開発に伴って治安も回復。ブラピ扮するミルズ刑事の気分になって、ロケ地巡りをするにも最適な時代となった。映画の中の風景と、25年後の風景。変わらない建物と、変わった街のムードを感じ取ってほしい。 

 
Place 01(理容室)
Salon Pure
サマセットとミルズが会話しているバーバーショップ(理容室)。やがてFBIからの重要な情報を持つ男が現れる。このバーバーショップは現在も営業中。映画では、どこにでもありそうな内装だが、現在は改装されたようでクラシカルな雰囲気に変わっている。男性のヘアカットは$50~。ブラピがロケをした場所で髪を切るのも、いい思い出になるのでは?
●Salon Pure
住所:117 E 6th St, Los Angeles, CA 90014

Place 02(アパート)
Pan American Loft Community
3件めとなる“怠惰”の被害者が発見されたビルディング。PAN AMといえば今はなき航空会社だが、商標は存続し、あちこちに名前が残っている。1895年建設で、『コンスタンティン』ではキアヌ・リーヴス扮する主人公が住んでいたアパートに使われた。目の前には『ブレードランナー』のロケ地として有名なブラッドベリー・ビルディングがある。
●Pan American Loft Community
住所:253 S Broadway, Los Angeles, CA 90012

雨降りの日ばかり
最後の1日以外は、すべて雨が降っている。室内のシーンでも窓には雨の雫がたれ、雨音が聞こえてくる徹底ぶり。撮影のために大量の雨を降らせ、照明も暗めに抑えた監督の演出が冴えわたる。


Place 03(ホテル)
アレキサンドリア・ホテル
1906年開業の、ダウンタウンの老舗ホテル。現在はホテル部分とアパート部分に分かれている。『セブン』では連続殺人犯が、ここに住んでいるという設定。ミルズが乗りこむが、犯人は外の非常階段から逃走する。映画でもわかるが、建物の裏手はいかにもLAのダウンタウンという危険な薫りが漂う。ロバート・ケネディ(ケネディ元大統領の弟)が暗殺された場所としても知られ、『ドリームガールズ』や『スパイダーマン3』など多くの映画の撮影に使われている。
●Alexandria Hote
住所:501 S Spring St, Los Angeles, CA 90013

Place 04(アパート)
Chester Williams Building
1926年にオフィス用として建てられた12階建てのビルディング。現在は88室のアパートメントとして機能している。屋上からはダウンタウンの高層ビル群を眺められるので、もしここに友人が住んでいたら訪ねてみたい場所だ。『セブン』ではミルズが容疑者に銃口を頭に突きつけられたシーン。そのほかにも『インセプション』では、マリオン・コティヤールが窓から飛び降りようとするシーンをこのビルで撮影。『フォーン・ブース』ではNYの地下鉄の入り口という設定で使われるなど、映画ファンには“聖地”と言っていいかも。
●Chester Williams Building
住所:215 W 5th St, Los Angeles, CA 90013

クライマックスはランカスター
映画史上でも最もショッキングとされるエンディングは、ロサンゼルスの北にあるランカスターで撮影。ロサンゼルスとの間には広大なエンジェルス国立森林公園もあり、アメリカらしい大自然を満喫できる。映画のダークな内容とロケ地のギャップも味わってみては?

 

 

 
Information

雑誌『Safari』11月号 P226~227掲載

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