サウスポート ×『セイフ ヘイヴン』
映画を観ていると、背景の街がどこかわからなくても魅力的な風景に出くわすことがある。いつか旅をするなら、そんな場所に行ってみたい……。アメリカ東海岸に位置するノースカロライナ州は有名な大都市があるわけではないが、意外に映画の舞台になることが多い。それだけ、ありふれた佇まいなのに、スクリーン向きということ。『セイフ ヘイヴン』の舞台となったサウスポートで、その魅力に迫ってみよう。
- SERIES:
- 映画を巡る旅に出よう! vol.15
秘めた過去を持つ女性が港町で自分を取り戻す
『セイフ ヘイヴン』(2013年/アメリカ映画)
南部の美しい海辺の街
サウスポート(ノースカロライナ州/アメリカ)
● 原題:Safe Haven
● 原作・製作:ニコラス・スパークス
● 監督:ラッセ・ハルストレム
● 出演: ジュリアン・ハフ、ジョシュ・デュアメル、コビー・スマルダース、デヴィッド・ライオンズ
Story
ボストンからの長距離バスがサウスポートに停車。降りてきた女性はケイティと名乗り、ウェイトレスとして働きはじめる。雑貨店を営むシングルファーザーのアレックスと親しくなるケイティ。アレックスも彼女によって、妻を亡くした心が癒されていく。しかしケイティの過去がアレックスの知るところとなり、その関係は崩れはじめ……。
原作者はノースカロライナ好き?
本作の原作者ニコラス・スパークスは、結婚後にノースカロライナ州に移住。そこで執筆活動をはじめたので、映画『きみがくれた物語』などノースカロライナは多くの作品で舞台になっている。『最後の初恋』のビーチなど同州で撮影された映画も多い。作風と土地柄がマッチした最高例なのかも。
登場人物
一流のウェディング・プランナー
ケイティ(ジュリアン・ハフ)〈右〉
サウスポートでウェイトレスの仕事を得て、林の中のコテージで暮らしている。近所のアレックスと仲よくなるものの、実はある事件の容疑者として指名手配を受けていた。本名はエリン。
妻を亡くしたシングルファーザー
アレックス(ジョシュ・デュアメル)〈左〉
雑貨店を経営。妻を病気で亡くして以来、傷心の日々を送る。息子と娘も母のことを忘れられず、親子関係はぎくしゃく。そんなときケイティと出会い、一緒に時間を過ごすことで前向きになる。
ニコラス・スパークス。その名前にピンときた人は、映画ファン、または海外文学ファンだろう。『きみに読む物語』や『メッセージ・イン・ア・ボトル』など彼の小説の映画化作品は日本でもヒット。運命で結ばれ、あるいは運命に引き裂かれる恋というロマンチックなテーマながら、大人の読者・観客の心に強烈にアピールする仕掛けも用意されており、〝映画向け〞のベストセラー作家である。そのスパークスの多くの作品の舞台となっているのが、ノースカロライナ州だ。
アメリカ東海岸の中ほどに位置し、これといって特徴はなさそうな州だが、カルチャーで有名なのはまず音楽。ジョン・コルトレーン、セロニアス・モンクら有名ジャズミュージシャンを輩出した。日本でも話題になったクリスピー・クリーム・ドーナツや、あのペプシコーラもノースカロライナが発祥で、アメリカの食文化を支えてきた。全体的に〝南部〞の雰囲気が色濃く、海辺の景勝地も特徴的なことから、映画のロケ地としても愛されている。なかでも州の南に位置する港町のサウスポートや周辺のビーチは、その落ち着いたムードで国内旅行者にも隠れた名所として人気を誇っているのだ。
そのサウスポートを舞台にした、ニコラス・スパークス作品の映画が『セイフヘイヴン』。それぞれ心に深い傷を抱えた大人のラブストーリーが展開していく。ちょっぴり驚きの展開も用意しているが、『きみに読む物語』にも印象的に使われたサイプレス・スワンプ(沼)で、主人公たちがカヌーを漕ぐシーンがあったりと、スパークス世界を堪能させる作品。主人公を演じるジュリアン・ハフも、思わず抱き寄せたくなるような大人の女性の魅力を醸し出す。こんな人と一緒にサウスポートの穏やかな街や美しい海辺を、いつの日か歩いてみたい……。妄想に浸ってしまう人も多いことだろう。
Place01 サウスポート・フェリー・ターミナル
サウスポートからケープ・フィア川を挟んだ対岸のフォート・フィッシャーまで、片道35分で運航するフェリーは、一般市民にとっては日常の交通手段。船内はどこかクラシックな雰囲気で、乗るだけで観光気分を味わえる。警察に追われる事実を知られ、街を出ていこうとするケイティをアレックスが引き止めるのが、このフェリーターミナルの桟橋だ。
●Southport Ferry Terminal
住所:1301 Ferry Rd SE, Southport, NC 28461
Place02 アメリカン・フィッシュ・カンパニー
ケイティがウェイトレスとして働くのが、この店。立ち寄ったアレックスが勤務中のケイティにキスしたりする。周囲に遮る建物もないので、サウスポートの隠れスポットであるうえに、『セイフ ヘイヴン』のロケ地として有名になった。ウォーターフロントで心地よい風に当たりながら、シーフード中心の食事やドリンク、ローカルな雰囲気を楽しみたい。
●American Fish Company
住所:150 Yacht Basin Dr, Southport, NC 28461
ゴールデン・ゲート・パークの様々な場所が登場!
敷地面積はNYのセントラルパークよりも広いということで、見どころがいっぱい。噴水や花壇、日本茶園のまわりのユニークな木々など、この映画を観れば、じっくり時間をかけて訪れたくなるはず。
Place03 フォート・フィッシャー州立保養地
海辺のシーンが多い『セイフ ヘイヴン』で、最も印象的なのがこのビーチ。アレックスはビキニ姿のケイティに思わずカメラを向ける。サウスポートとケープ・フィア川を挟んだプレジャー島は、大西洋に面したいくつものビーチが休日のお出かけ先にぴったり。島内には貴重なアルビノ(白い)ワニなどがいるノースカロライナ水族館もある。
●Fort Fisher State Recreation Area
住所:4845, 1000 Loggerhead Rd, Kure Beach, NC 28449
Place04 サウスポート・コミュニティ・ビルディング
人口5000人にも満たない小さな街のサウスポートで、市民が結婚式やクラス会で利用する。建物裏のウォーターフロントのスペースでは、屋外ウエディングやパーティが行われることも。映画の中でも独立記念日フェスティバルのライブ会場として使われ、大盛り上がり。ふらっと立ち寄れば思わぬイベントに出くわすかも!?
●Southport Community Building
住所:223 E Bay St, Southport, NC 28461
なぜケイティはこの街に来た?
犯罪容疑者となったケイティは長距離バスで逃走。休憩で止まったサウスポートで降りてしまった理由は、のどかな海の風景への安心感、そしてコーヒーを売ってくれたアレックスへの一瞬のときめき!
映画の撮影場所として人気!
サウスポートの北部にある都市、ウィルミントンで『愛がこわれるとき』『アイアンマン3』『死霊館』が撮影されるなど、この地域一帯は映画やドラマでよく使われる。様々な地形や広大なビーチ、田園など、とにかく“映える”風景が多いのでハリウッドでも注目の的なのだ。
雑誌『Safari』6月号 P244~245掲載
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