毎年、数千通のクリスマスカードを手書きする! 万年筆を使うことは 我が家の大切な伝統!
家族全員が当たり前のように万年筆を愛用し、本人も物心ついたときには万年筆を握っていたと語るのは、〈シュマッツ・ビア・ダイニング〉でヴァイスプレジデントを務めるピーター・ザイン・ヴィトゲンシュタイン。ドイツで1000年以上続く名家の血を引くピーターにとって、万年筆とはどんな存在なのだろうか?
- SERIES:
- ビジネスエリートの愛する万年筆! 第44回
PROFILE
ドイツ出身。古くから伝わる貴族の末裔であり、ドイツとオーストリアのハーフ。欧州の名門校IEビジネススクールで経営管理を学ぶ。卒業後は多岐にわたる分野でキャリアを積み、〈シュマッツ・ビア・ダイニング〉参画後は、主にビジネスディベロップメント、物件開拓、本部人材獲得を担当。音楽にも造詣が深く、自身のレーベルを所有するほど。ドイツ語、英語、スペイン語を話すマルチリンガル。これまでに10カ国での居住経験があり、日本在住歴は約2年。
最愛の人への手紙
親愛なるおばあちゃんへ
おばあちゃんがいなくて寂しいよ。
東京でも一緒にいられたらよかったのに。
でも、教えてもらった美味しい料理を
作るたびに、あなたのことを考えるんだ。
特にシュニッツェルレシピは特別だね。
大きなキスとありったけの愛を。
̶ピーター
コピペにはない、パーソナルな温もり!
本格ドイツ製法のクラフトビールと普段着感覚のドイツ料理を広めるべく、日本に7店舗を展開する〈シュマッツ・ビア・ダイニング〉。その創業メンバーであるピーター・ザイン・ヴィトゲンシュタインは、家族全員、万年筆を使うのが当たり前という環境で生まれ育った。「私は7人兄弟の末っ子なのですが、我が家で週末に食事会を催すときは、兄弟揃って万年筆で招待状や御礼状を手書きしました。学校の授業でも万年筆を使っていましたよ。日本の小学生がランドセルを背負うように、ドイツでは万年筆を使うことが伝統教育の一環なんです」
料理好きの母方の祖母はレシピを万年筆でまとめ上げ、著名な写真家として活躍した父方の祖母も万年筆のヘビーユーザー。1000年以上続く名門貴族であるピーターの家では、クリスマスの時季になると毎年、数千通のカードを万年筆でしたためるという。そんなピーターにとって万年筆は決して特別なものではなく、いつも身近にある空気のような存在。「今愛用しているのは、自分で買った〈ペリカン〉のものと、祖母の家から勝手に持ち出してきた〈ラミー〉のもの(笑)。どちらもドイツ製で、小さい頃から慣れ親しんできたブランドです。値段も手頃だし、使い勝手もいい。なにより気軽に使える点が気に入っています」
デジタル世代のピーターだが、アイデアを思いつけば万年筆でメモを取り、メニュー開発の際も大きな紙にアイデアを書き出しながら考えをまとめていくんだとか。もちろん今でも家族や友人たちに、ことあるごとに手書きのメッセージを贈ることも欠かさない。「昔は父に言われて嫌々やっていた部分もありましたが、やはりコピペのメールとは違って、手書きの文字にはパーソナルな温もりが宿る気がしますよね。ときには花束を贈るよりも、相手に喜ばれるし、想いも伝わると思いますよ。私も日本語でメッセージを書けるように、現在、漢字やひらがなを勉強中です(笑)」
愛用の万年筆
クラシック P200/ペリカン
ガンガン使えるタフなヤツ!
名作万年筆“スーベレーン”のデザインはそのままに、ステンレススチールのペン先、カートリッジとコンバーターの両用式を採用したカジュアルモデル。ピーターは3年ほど前にドイツで購入。太字のペン先を選び、普段使いの一本としてガンガン使っているそう
エモーショナルな1本!
欧米の習字ともいえるカリグラフィ用に開発された万年筆。ペン先が平坦にカットされており、書き方によって太い線から細い線へと自在に変化する。ピーターはその書き味がすっかり気に入って、写真家である祖母から譲り受けた(勝手に拝借してきた)んだとか!
祖母が古くから銀座〈和光〉の創業者一族とつき合いがあることから、〈和光〉の名刺入れ(左)を愛用。黒革のメモパッドは東京・青山の〈書斎館〉で自ら購入したもの。また右端のノートの表紙に描かれているのは、祖母の祖母に当たる高祖母の肖像画とのこと。先祖が絵画のモデルになるとは、さすが名家出身!
万年筆同様、時計も手頃な価格帯でカジュアルに使えるものが好み。写真の〈スウォッチ〉は1992年にリオデジャネイロで開催された地球サミットを記念したモデル。環境問題にも精通するピーターらしいチョイスだ
COMPANY DATA
SCHMATZ BEER DINING[シュマッツ・ビア・ダイニング]
本場ドイツの味を手軽に楽しめる!
2015年、ドイツドラフトビールが堪能でき、スタッフとすぐに仲よくなれ、友人の家に遊びにきたような雰囲気を提供するカジュアルビアダイニングを目指して、2人のドイツ人の若者が設立。オリジナルビールや、欧州で人気のビールに合う進化系ドイツ料理などを提供。
雑誌『Safari』10月号 P220-221掲載
photo : Mamoru Kawakami text : Takehisa Mashimo