言葉のディテールにこだわれるのが万年筆のよさ! 電子メールでは伝わらない 温もりある“思い”が届けられる!
ヨーロッパ、南アメリカ、アジアの3地域で総支配人を歴任してきた〈ANAインターコンチネンタルホテル東京〉総支配人のミシェル・シェルトー。30年におよぶホテリエとしてのキャリアは、〈インターコンチネンタル ホテルズ グループ〉一筋だが、愛用している万年筆も15年間同じものを使い続けているという。そんなふうに自分との“繋がり”や信頼関係を大切にするミシェルと万年筆との素敵な関係とは?
- SERIES:
- ビジネスエリートの愛する万年筆! Vol.45
[ANAインターコンチネンタルホテル東京総支配人]
PROFILE
フランス出身。〈インターコンチネンタル ホテルズ グループ〉でキャリアをスタートし、2001年7月に〈インターコンチネンタル サンパウロ〉の総支配人に就任。’06年1月~ ’08年6月にはスペインの〈インターコンチネンタル マールメノール〉の総支配人となり、ヨーロッパ、南アメリカ、アジアの主要3エリアで総支配人経験を積む。’17年8月から現職。東京・沖縄を担当するリージョナル総支配人としても活躍中だ。
最愛の人への手紙
イソベさまへ
おかえりなさいませ。
〈ANAインターコンチネンタルホテル東京〉をご愛顧賜り、ありがとうございます。
素敵な滞在のひとときとなりますように
̶ミシェル
親友からの贈りものを15年も愛用中!
「幼少期の万年筆の思い出ですか? 少しほろ苦い記憶がありますね」
そう話すのが〈ANAインターコンチネンタルホテル東京〉総支配人のミシェル・シェルトー。彼が万年筆にはじめて触れたのは4歳のとき。生まれ育ったフランスでは、文字の書き方を学ぶ授業の一環として自然に使いはじめたという。
「私は左利きなので、インクが乾く前に書いた文字に手の甲や袖口が触れてしまい、苦労しました。汚さずに書けるまで長い時間がかかり、フラストレーションが溜まりました。そのせいもあって、万年筆には苦い思い出があるんです」
ミシェルが、日常的に万年筆を使いはじめたのは、ブラジルに滞在していた15年ほど前のこと。今でも親友関係が続いている当時の同僚から、総支配人就任のお祝いとしてプレゼントされたのがきっかけだという。祝ってくれた同僚の気持ちが嬉しくて使いはじめたが、そのおかげで幼い頃には気づいていなかった万年筆の魅力を発見できたという。
「万年筆は、決して早さを求めるための道具ではありません。キーボードを叩くときとは違い、言葉選びや個々の言葉にこめる思いといったディテールにこだわるようになります。だから、メールのような素早さを重視した文章では伝わらない気持ちが伝わる。そんな気がします」
ミシェルは、15年前に同僚からもらった万年筆を現在も愛用中だ。
「ほかにも自分で何本かの万年筆を買ってはみましたが、やはり自分との繋がりの深さを感じるこの万年筆が一番気に入っていて、手に取ってしまいますね」
ミシェルの万年筆に対する思いを聞いていると、彼自身が“繋がり”を大切にしていることが伝わってくる。
「万年筆は、主にゲストや親しい友人にメッセージを贈るときなどに使いますが、実際に書くときは、自分が伝えたいことだけでなく、その言葉を受け取る相手の気持ちも深く考えるようになります」
万年筆を手に取ることで、他人のことをおもんばかる時間を作れる。それが、ミシェルが万年筆に抱くかけがえのない魅力のひとつになっているようだ。
愛用の万年筆
モデル名不明
/ペドロ デュラン
適度な重みとミニマルな
デザインがお気に入り!
マドリードを拠点に、良質なシルバー製品を生産しているスペインブランドが手掛けた万年筆。シャフトに走るアール・デコ調の装飾が特徴的で、しっかりとした重みが筆致に安定感をもたらしてくれるという。クリップには、ミシェルの名前がフルネームで刻印され、それがまた特別な愛着を抱かせる理由のひとつになっているんだとか
さりげない統一感を!
万年筆を握る手元からは、優しげな配色のカフリンクスもちらり。よく見るとネクタイの色と統一されていて、こうした部分にも細やかな配慮が行き届いている。ポケットチーフには必要以上に色は使わず白が基本で、清潔感のある“TVフォールド”で挿すのが好み。ちなみに時計は〈ブライトリング〉を愛用中
思い入れのあるものを使用!
名刺入れやペン立てといったデスクまわりの書斎用小物は、すべてブラジルを代表するハイジュエリーブランド〈H.スターン〉のもので統一。リオデジャネイロでの支配人時代にホテル内での出店に立ち会い、その記念にブランドの創業者から直接いただいたものを今でも大切に使い続けている。
COMPANY DATA
ANA INTERCONTINENTAL TOKYO[ANAインターコンチネンタルホテル東京]
最高水準のサービスを提供するホテル
ラグジュアリーステイを求める国内外のVIPから指名される名門ホテル。昨年10月、高層階の4フロアを改装し、最高級の客室“クラブインターコンチネンタルルーム”が誕生。“金継ぎ”をイメージしたくつろぎの空間で、多彩な滞在特典とともに極上のステイを提供。
雑誌『Safari』11月号 P342・343掲載
photo : Mamoru Kawakami text : Takumi Endo