【ラッセン火山国立公園】20世紀初頭の大噴火とその後の自然の再生が、地球のパワーを感じさせる
地球上にある4種類の火山がすべて揃う火山国立公園。なかでも1921年まで噴火活動を続けたラッセン山はシンボル的存在だ。地球の活動を感じる数々のスポットや、ラッセン山の頂へのハイキングは知らなかった世界への扉を開く。
- SERIES:
- アメリカ ナショナルパークへの旅! vol.15
カリフォルニア州
ラッセン火山国立公園
ヘレン湖のピクニックエリアからラッセン山の南斜面を望む。噴火によって破壊された森は、自然の力で再生する過程にある
ラッセン火山国立公園は地質学的にかなり特異だ。溶岩ドーム、楯状火山、噴石丘、成層火山という4種類の火山が狭いエリアにすべて揃う例は、世界でも極めて少ない。それが国立公園に指定された大きな理由となっている。
活動を休止していた火山が急に活動を活発化、噴火を起こしたのが1914年5月のこと。その翌年の5月に大爆発が発生。この決定的瞬間をとらえたのが、地元の実業家でアマチュア写真家のベンジャミン・ルーミスだった。ルーミスの写真は世間の注目を集め、国立公園認定へと繋がった。
観光スポットはパーク内を走る89号線沿いに連なっている。北西のマンザニータ湖は、美しい湖面越しにラッセン山を眺めながら湖畔を一周できるビューポイント。様々なアクティビティも楽しめる。ルーミスが貴重な写真を撮影したのが、デバステイテッド・エリア。今も噴火によって吹き飛ばされた巨大な岩が、ゴロゴロと展示されている。高さ1㎞まで水蒸気と灰を噴出したという噴火の威力を肌で感じることができる場所だ。
3187mの山頂へ続くラッセン・ピーク・トレイルは山の南側からエントリーする。往復4〜5時間のハイクは中・上級者向けだが、山頂から眺める360度の絶景は、チャレンジする価値がある。その先にあるのが、地熱によって泥が沸き立つマッドポットを巡るバンパス・ヘル。ボードウォークが整備され、家族連れでも楽しめる。さらに南東側のゲート近くには、硫黄臭が立ち込めるサルファー・ワークスもある。
1914年にはじまったラッセン山の活動は1921年まで断続的に続いて鎮まった。しかし、同じカスケード山脈のセント・ヘレンズが1980年に噴火して以来、調査が続く。100年ぶりに眠りから覚める可能性もあるかもしれない。
約5㎞にわたる遊歩道が整備された、バンパス・ヘル・トレイルは人気スポット。火山活動の臨場感を味わうことができる
地球の胎動を感じる
天然温泉もある泊まれる牧場!
パーク内にある唯一のホテルが〈ドレイクスバッド・ゲストランチ〉。コーム・ヤマニー・ビジターセンターから80㎞ほど山道を行くと、カスケード山脈の深い森の中に現れる。国立公園に認定される以前からシフォード一家によって営まれてきた歴史あるホテルで、天然温泉プールがあるほか、乗馬ツアーや天体観測、釣りなどのアトラクションが用意されている。冬は雪に閉ざされるため、オープンは6月~10月上旬。
●ドレイクスバッド・ゲストランチ
14423 Chester Warner Valley Rd, Chester, CA 96020
TEL:+1-877-622-0221
URL:https://lassenlodging.com/
往復4~5時間で山頂の絶景!
健脚自慢に是非チャレンジしてほしいのが、ラッセン山のピークへのハイキングだ。ラッセン山は、世界最大級の溶岩ドーム型火山。噴火によって形成された巨大なカルデラと、3187mの山頂から見わたす景色はまさに絶景。天気がよければ、120㎞離れたシャスタ山も眺望できる。トレイルは噴火後に自然再生した森の中をジグザグに進む。登頂の自信がない人は、1.3㎞地点にあるビューポイントがおすすめだ。
自然の色彩が美しい硫黄採掘場の跡地
コーム・ヤマニー・ビジターセンターから1.6㎞地点にあるのが、かつての硫黄採掘場の跡地サルファー・ワークス。19世紀にオーストリアの実業家が医薬品の原料として硫黄を採掘したといわれている。あたりには硫黄臭が立ち込め、地下からは蒸気が噴き上がる。グラグラと泡立つ泥水のプールを目にすれば、ラッセンが今も火山活動を続けていることを実感。黄色、オレンジ、赤に染まった岩も印象的だ。
大噴火の跡が残るデバステイテッド・エリア
“デバステイテッド”とは、“破壊された”という意味。ベンジャミン・ルーミスが1915年5月22日に起こった最大の噴火の瞬間を撮影したのが、まさにこのエリアだ。噴火によって吹き飛ばされた巨大な岩や溶岩の跡が、今も一帯を覆っている。ルーミスは、それ以降も破壊された森が再生していく様子を定点撮影し、貴重な記録を残した。
野生動物も集まるマンザニータ湖
パークの北西に位置するマンザニータ湖周辺は、キャンプ場やストア、ガソリンスタンド、レストランなどが集まるビレッジになっている。雪解けが最も早く、6月にオープンする際の表玄関でもある。静かな森に囲まれたマンザニータ湖を一周するトレイルは、気持ちがいい。初心者向けで、ラッセン山を見ながらのハイキングはカモやリスなど野生動物との遭遇も楽しい。
電話:+1-530-595-4444
URL:https://www.nps.gov/lavo
開園:年中無休
入場料:自動車$30(4月15日~11月30日)、$10(12月1日~ 4月14日) オートバイ$25 自転車・徒歩$15 ※7日間有効
国立公園指定:1916年8月9日
面積:約430㎢
旅の準備
自動車道路、遊歩道ともに整備され、家族連れでも気軽に楽しめる。ただし、ラッセン山の山頂へのハイキングは中級以上。しっかりとした装備が必要。
旅のヒント
サンフランシスコから1日のドライブとなる。パワースポットとしても知られるシャスタ山とセットの観光がおすすめ。ルートを考慮して計画を立てたい。
注意点
カリフォルニア州だが、意外と雪が深い。公園内のメインの道路が全面開通するのは、6月末~7月になる。公式サイトで道路の状況をチェックしておこう。
ベストシーズン
観光スポットがすべて見られるのは、7~9月と短い。10~6月もパークは開いているが、その間はウインタースポーツの愛好家のパラダイスとなる。
行き方
空港がある最寄りの街はカリフォルニア州レディング。ここから、マンザニータ湖のビジターセンターまで約70㎞。サンフランシスコから約450㎞、ネバダ州リノから約250㎞。
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雑誌『Safari』9月号 P188~191掲載
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text : Shintaro Makino photo by AFLO