Safari Online

SEARCH

LIFESTYLE ライフスタイル

2020.12.26


【田臥勇太】なにか道を切り開く方法を考え続けるしかない! NBAの扉をこじ開けたピック&ロール!

一流アスリートのターニングポイントとなった試合を紹介する“アスリートの分岐点”。第1回は、夢のまた夢といわれていたNBAの扉をこじ開けた田臥勇太。リビング・レジェンドの思い出深い試合とは!?

YUTA TABUSE
TURNING POINT
2003年7月14日
サマーリーグ第5戦
VS デンバー・ナゲッツ

まだ狭き門であることに変わりはないが、NBAのコートで日本人選手が躍動する姿を見られるようになった。田臥勇太は、2004年にその狭き門を最初に突破し、日本人初のNBA入りを果たした先駆的プレイヤーだ。その快挙は、まさに日本のバスケットボール史における大きなターニングポイントだったといえる。その歴史的初戦が行われたのは、2004年11月3日。フェニックス・サンズの開幕メンバーとして召集され、第4クォーターから出場を果たした田臥は7得点を叩き出し、鮮烈のデビューを飾った。日本人選手が世界最高峰のリーグで活躍する姿は日本のバスケ少年に勇気を与え、田臥に次いでNBAのコートに立った渡邊雄太をはじめ、多くの選手が後に続く道を切り開いた。

しかし、そんな田臥自身には、この記念すべきデビュー戦以上の衝撃を受け、選手としてのターニングポイントとして記憶されている試合が別にあった。

「NBA入りの前年度に当たる2003年に挑戦を決意し、ダラス・マーベリックスのサマーリーグに出場したのですが、今考えると、このときの体験がバスケットボール選手として大きな財産になっています。その中でも特に大きな気づきを得た試合として記憶に残っているのが、第5戦のデンバー・ナゲッツ戦です」

田臥はこのダラス・マーベリックスのサマーリーグに、トライアウトから参加。そこから選抜された選手として、NBA入りを目指す者には絶好のアピールの場となるサマーリーグ戦に召集されたのだ。サマーリーグはプロ入り1、2年めの若手も参加し、生き残りをかけて戦う場でチーム関係者の注目度も高い。

「なんとか第一関門をクリアしてメンバーになりましたが、いざサマーリーグがはじまると、また違う戦いがありました。チームにはプロを経験したフリーエージェントの選手やドラフトされた選手もいる。だから、与えられた時間の中でアピールできないと、コーチから声もかからない。試合に出ること自体が勝負でした」

そんな中出場を果たした第5戦で、田臥は圧倒的な存在感を発揮した。第1クォーター終盤でコーチから声がかかると、いきなりゆったりとしたドリブルからあざやかなワンハンドパスを放ち、得点を演出。その後もゴール下への突破で相手チームを混乱に陥れるなど、日本屈指のポイントガードとしての力を存分に発揮。その質が高く、熱量のあるプレイで観客のどよめきを誘っていた。

「この試合には、絶対に結果を出すという強い思いを持ち、ミスを恐れず今まで以上にアグレッシブに挑みました。それはよく覚えていますね。ピック&ロールからいい形でディフェンスをかわし、アシストを決めた場面は特に印象に残っています。いい流れを作れましたね」

このピック&ロールとは、自分をマークしている相手ディフェンスの進路をいったんチームメイトに防いでもらい、自分がフリースペースに走った段階でパスを供給するオフェンス技術のひとつ。チームメイトとの連携がなければ成立しない、この技を見事に決めたことが仲間の信頼を勝ち得ていたことを物語っている。

「数少ないチャンスをものにしないと勝ち残れない厳しい勝負の世界であっても、自分から動き出せば状況を変えられる。この試合でアタックしたことで、そんな大切なことを身をもって学びました」

この試合が特別なゲームになったのには伏線がある。実は田臥は初戦で多数のゴールを演出し、ポイントガードとしての力を示した。しかし第2戦で状況は一変し、NBAの洗礼を浴びることに。痛恨のパスミスなどで失点の原因を作ってしまった。さらに第3戦では2分足らずの出場時間でなにもさせてもらえない状況に。今までなら通ったパスが通らず、打てるはずの間合いのシュートも簡単にブロックされた。その結果、第4戦はベンチウォーマーとなり、出場時間0分という選手人生はじめての屈辱を味わった。

「それまでやってきたことが、ほぼ通用しない世界。カラダが小さいから吹っ飛ばされたりもしていました。でも、そんな中でも自分を表現しなければならない。まわりと同じことをやっていては勝負できないんです。通用する部分をどう伸ばすか。通用しない部分をどう補うのか。なにか道を切り開くには、やっぱりそれを考え続けるしか方法はないんですよね」

自分を表現する方法を考え続ければ、状況を変えられる。今なお気迫にあふれる田臥のプレイスタイルには、分岐点となった試合で得た、そんなメッセージが込められているのかもしれない。

バスケットボール選手
田臥勇太
YUTA TABUSE
1980年、神奈川県生まれ。能代工業高校では高校総体、国体、全国高校選抜の3大タイトルを3年連続で獲得し9冠を達成。2004年フェニックス・サンズの開幕ロースターで、日本人初のNBA選手に。帰国後は、宇都宮ブレックスで2017年のBリーグ初代チャンピオンに輝く。


TAMURA'S ART FILE
田村大にとってアスリートは、“アート”のようなものなのだとか。「長年かけて作り上げてきた肉体と技術は、それ自体が芸術。だから変に脚色はしません。それと同時にスーパーヒーローのような存在でもあるので、その選手が“必殺技”を出している場面を描いた絵と思って見ていただければ」

「世界的アーティスト田村大」
この連載で、田臥勇太の“分岐点”となった試合での勇姿を描いた迫力あるイラスト。実はこれ、田村大という気鋭のアーティストの描き下ろし。SNSにコツコツ投稿していたNBA選手のイラストが評判を呼び、世界的な知名度を獲得。今では超有名選手に直接会って作品を手渡すほど、その実力を認められている要注目のアーティストだ。

「アーティストとして一番強い武器で勝負しようと思ったときに、大学時代まで続け、自分を形成してきたバスケを題材にすることにしました。さらに、やるからには最高峰のNBAと繋がる仕事をしたいと思い、選手を描いた作品を投稿していたらフォロワーも増え、作家としての戦闘力も高められました(笑)」

アスリートをスーパーヒーローとして描くのが、田村大のスタイル。次回は、どんな“英雄”を描くのかもお楽しみに。
アーティスト
田村 大
DAI TAMURA
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会、ISCAカリカチュア世界大会で総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは10万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。海外での圧倒的な知名度を誇る。Instagram:@dai.tamura


 
Information

雑誌『Safari』11月号 P220~222掲載

イラスト=田村 大 文= 遠藤 匠
illustration:Dai Tamura  text:Takumi Endo  photo by AFLO
きっかけは〈MINI〉!“新しい自分”に出会える特別なオーナー体験、募集開始!
SPONSORED
2025.09.04 NEW

きっかけは〈MINI〉!
“新しい自分”に出会える特別なオーナー体験、募集開始!

「今とは“違う自分”に出会ってみたい」あるいは「本当の自分を発見したい」。そんなアナタに必要なのが“遊び心あふれる新しい自分”を探す旅。とはいえ今回は、リゾート地や最果ての土地を目指すのとは違って、“新しい自分”に出会うために新しいクルマ…

いつでもどこでも〈ロンハーマン〉が相棒!オンラインストア5周年記念のスペシャルアイテムは力作揃い!
SPONSORED
2025.09.03 NEW

いつでもどこでも〈ロンハーマン〉が相棒!
オンラインストア5周年記念のスペシャルアイテムは力作揃い!

こだわりの強い男は、ファッションもインテリアも、実際に触れてみてから手に入れたいと思う人は多い。自分の目で確かめることは大切だからね。でも、その目を先見の明を持つ〈ロンハーマン〉がすでにしてくれているとなれば話は違う。要は、その信頼があれ…

TAGS:   Fashion
普段使いにちょうどいい限定バッグ発見!ヴィンテージ感漂う作りで、秋スタイルに男らしさをプラス!
SPONSORED
2025.09.02

普段使いにちょうどいい限定バッグ発見!
ヴィンテージ感漂う作りで、秋スタイルに男らしさをプラス!

休日にウィンドウショッピングに行ったり、彼女と映画デートに出かけたり。こんなふうに気軽に街に出るときは、嵩張らずさっと肩掛けできるようなバッグが便利。といっても、せっかくのお出かけスタイルにそぐわないものでは本末転倒……。というわけで、使…

TAGS:   Fashion
即完売〈ロンハーマン〉の別注アイテム! 大人好みの人気ブランドが、特別仕様になって登場! 
SPONSORED
2025.09.01

即完売〈ロンハーマン〉の別注アイテム! 
大人好みの人気ブランドが、特別仕様になって登場! 

大人には、見た目の落ち着きと品だけでなく、上質な素材による肌触りのよさも大切。その風合いのよさは、醸し出す雰囲気までグッと格上げてくれるから、モノ選びをするときには外せない点。それはカジュアルなアイテムであればあるほど、大事になってくる。…

TAGS:   Fashion
〈フランク ミュラー〉×〈ダナー〉の最新ブーツがお目見え!ワザありデザインが目を引く意外なコラボの1足!
SPONSORED
2025.08.25

〈フランク ミュラー〉×〈ダナー〉の最新ブーツがお目見え!
ワザありデザインが目を引く意外なコラボの1足!

昨年、驚きとともにユニークな取り組みと評判を呼んだ、〈フランク ミュラー〉と〈ダナー〉のコラボブーツ。早くも登場した第2弾はキャラ立ち必至なデザインはそのままに、カラーやディテールでグレードアップ! 質実剛健なアウトドアブーツを、アートな…

TAGS:   Fashion
俳優・竜星 涼がまとう〈ベル&ロス〉の新作!強く輝きを放つ黒スケルトン!
SPONSORED
2025.08.25

俳優・竜星 涼がまとう〈ベル&ロス〉の新作!
強く輝きを放つ黒スケルトン!

航空計器からインスパイアされた四角と丸の組み合わせで唯一無二の地位を築き上げている〈ベル&ロス〉。特に現代的なデザインが人気の"BR-05"シリーズに新加入したのが、シャープな輝きと力強さを秘めたセラミック製の黒スケルトンだ。年々深みを増…

TAGS:   Fashion Watches
屈指の“メイド・イン・ジャパン”デニム〈デンハム〉白澤社長もお気に入り!ヴィンテージ感漂う大人のワイドデニム!
SPONSORED
2025.08.25

屈指の“メイド・イン・ジャパン”デニム〈デンハム〉白澤社長もお気に入り!
ヴィンテージ感漂う大人のワイドデニム!

太めのダメージデニムはストリートなイメージが強く、若者が穿くものと思っている人も意外と多いのでは!? そこでおすすめしたいのが、〈デンハム〉のワイドデニム“ジャンボ”。膝に入った適度なクラッシュや、腿に施された絶妙なバランスのヒゲなど、ま…

TAGS:   Fashion Denim
遊びも食も宿泊も充実の〈インスパイア〉リゾートへ!週末を遊び尽くす大人の韓国!
SPONSORED
2025.08.25

遊びも食も宿泊も充実の〈インスパイア〉リゾートへ!
週末を遊び尽くす大人の韓国!

羽田空港や成田空港から約2時間で行ける〈インスパイア・エンターテインメント・リゾート〉。迫力のウォーターアトラクションを楽しめるプールや贅沢な5ツ星ホテル、きらびやかな韓国最大級カジノ、食欲をそそる韓流の肉料理など、多彩な魅力が集まってい…

TAGS:   Gourmet Stay&Travel
【時計】ブランド刷新の仕掛け人CEOが語る〈オリス〉は、イタリアにおける“ピアッツァ=広場”でありたい
SPONSORED
2025.08.22

【時計】ブランド刷新の仕掛け人CEOが語る
〈オリス〉は、イタリアにおける“ピアッツァ=広場”でありたい

グループに属さない独立系時計ブランドならではの自由な時計作りで、存在感を放つ〈オリス〉。スイスの機械式時計の文化継承に多大な貢献を果たしてきた“正統派の後継者”である一方、1980年代に趣味的な高級品に留まっていた機械式時計を身近な存在に…

TAGS:   Watches
即完売〈ロンハーマン〉の別注アイテム! 大人カジュアル必携の人気のブラックアイテム!
SPONSORED
2025.08.18

即完売〈ロンハーマン〉の別注アイテム! 
大人カジュアル必携の人気のブラックアイテム!

大人になると色あざやかなアイテムを組み合わせてコーデするということを避け、ベーシックカラーを好むようになってくる。そのなかでも黒は、精悍でスマートに見せてくれるから、アラフォーにとって万能色といえるだろう。さらに季節が秋冬に向かえば、それ…

TAGS:   Fashion

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ